あの日、被災地に送られた「黄色い自転車」(アーカイブ秘録・2011年〜2026年)

東日本大震災の際、台湾から被災地に送られたいくつもの支援がありました。250億円もの義援金もそうですが、その中に「黄色い自転車」というものがあったのです。(アーカイブマネジメント部 疋田 智)
台湾一周で感謝を
東日本大震災から15年、台湾からの数々の支援に感謝の意を示すため、台湾を自転車で一周するというイベントがありました。これは作家で女優の一青妙さん、大東文化大学の野嶋剛教授らが中心になって企画されたもので、日本から33人の参加者が集まりました。
台北をスタートし、花蓮、台東、高雄、台南と、時計回りの9日間、合計900kmです。
震災支援のマウンテンバイク1000台
台湾は、2011年の震災の際、義援金250億円(断トツで世界最高額)をはじめとする、数々の支援をしてくれました。そのうちのひとつが自転車メーカー・GIANT(ジャイアント)社による支援で、このメーカーは被災地で役に立つようにと、新品のマウンテンバイク1000台を送ってくれたのです。震災特別仕様の「荷台付き」です。
そもそも自転車は震災後の被災地で非常に役に立ちます。自転車には前後に荷物載せがあり、ガレキで道ふさぎとなった狭いところにも入り込めます。怪我人を後ろに乗せることもできますし、ガソリンも不要です。
これらのことから、東日本大震災の際にはじつは全国のあらゆるところから自転車が寄付されました。
「新たなゴミ問題」を生む皮肉
ところが、そうして寄付された自転車のほとんどは、駅前放置自転車などを再生した中古のママチャリで、おまけにトラックに横積みにされて送られるものだから、現地に着いたときには既に壊れているものが多かったのです。
また、もともとクオリティが高くないので、使っているうちにすぐに壊れてしまいます。そうして、それらの自転車は被災地での新たなゴミ問題になったりもしたのです。
支援物資が「新品」であることの意味
ところが、東日本の惨状をテレビで見たGIANTの劉金標(KingLiu/キング・リュウ)社長は、即座にこう言ったといいます。「今すぐ工場のラインを止めろ、被災地専用のMTB(マウンテンバイク)を新たに作って日本に送るんだ!」そして現地に届いたのが震災特別仕様車だったのです。その数1,000台。
被災者のひとりは、新品のサドルから透明ビニールを剥がすときに涙が出たと言いました。
「ビニールを破ったときに、新品の匂いがぷうんと漂ったんだよ、そのときふと涙がこぼれたんだ。なんだろうな『我々は見捨てられてない』と思えたんだな」
「黄色い自転車」に今も会える
そのMTBは灯りの足りない被災地でも目立つようにすべて黄色に塗られました。価格は通常ママチャリの5倍程度するものだったといいます。しかし、その分クオリティも高いのです。だから長く役立ちました。
台湾は日本と同じく地震大国であり、劉氏は自転車を知り尽くしたGIANTの創業社長です。だからこそできた粋な計らいだったのだのでしょう。
劉氏は今年の2月に93歳で亡くなりました。謹んでご冥福をお祈りします。ありがとうございました。