棒や素手でボコボコに…スタンガンも 独自入手の証言から見えるカンボジア特殊詐欺拠点の恐怖支配の実態 背後に「トクリュウと中国マフィア」

2025年の1年間で、史上最悪の1414億円以上の被害を記録した特殊詐欺。
JNNはカンボジアの詐欺拠点にいた複数の日本人の証言を警視庁の捜査関係者への取材から独自に入手しました。証言からは、詐欺に加担すると知らずに巻き込まれている人たちが多くいる実態や、アジト内部で暴力による支配を受けていった実態などが浮かび上がりました。
【写真で見る】脱走図るも…30人の中国人に確保され素手や棒でボコボコに
ホテルのレビューを書く仕事と騙され「かけ子」に…30代男性Aさん
Aさんがカンボジアの詐欺拠点に渡ったのは2025年11月のことでした。きっかけはSNSを通じて知り合った男から「カンボジアでホテルのレビューを書く仕事があるからやらないか」と誘われたことでした。
中国の上海経由でカンボジアに入国すると、なぜか他の入国者とは異なり、入国審査の列に並ばずにスムーズに入国できました。現地の担当者はすでにAさんの顔写真を持っていたのです。
その後、空港の外で出会ったのは片言の日本語を話すカンボジア人でした。アルファードに乗せられ、夜中のカンボジアを移動。3時間後、シアヌークビルのカジノが入っている豪華なビル15階あたりの事務所に到着しました。 そして、案内された事務所では、チンピラ風の50代くらいの日本人から「お前達は騙されたんだよ。ここで1年間働いてもらう」と言われたといいます。
まず始まったのは「かけ子の見習い」でした。かけ子が電話する隣で通話内容をイヤホンを使って聞かされ、詐欺のやり方を教え込まれたといいます。
「かけ場」では日本人30人ほどがデスクに向かって1日約14時間電話をかけ続けていました。各デスクにはiPadとイヤホンが設置され、自動的に次から次へと電話をかけるようなシステムだったといいます。
見張り役が試験官のようにかけ子の背後を歩いて監視しており、居眠りした場合は罰金、2度目からはスタンガンを当てられていました。
30人のうち騙されて連れてこられた人は20人、自ら志願した人は10人で、26歳の女性や夫婦で騙されて連れて来られた人もいたといいます。
脱走図るも…素手や棒でボコボコに 背後に「中国マフィアとトクリュウ」
宿泊していた部屋には警備員がつき、屋内外に設置された多数の監視カメラに囲まれていました。しかし、Aさんは滞在3日目、(休みの日)に脱走を試みました。部屋の鉄格子が一部針金でつながっているだけだったため、外すことができ、3階から別の建物の屋根伝いに飛び降りたといいます。しかし、音で気付かれて中国人30人ほどに確保され、素手や棒でボコボコにされて意識を失いかけました。その後、組織として拘束することがリスクだと判断されたようで、現地の警察へ突き出され、日本に帰ってきたのです。
拠点には入れ墨が入った日本人のヤクザっぽい中年男性が4、5人いて、「ここは逃げようと思わなければ他の組織より安全だ」などと凄まれたといいます。そして、さらに上位者と思われる中国人も4、5人いて、スマホで音声翻訳して威圧的に接してきたといいます。
警視庁の捜査関係者は「海外拠点の案件では、中国マフィアとトクリュウが結託して、日本人の闇バイトを集めているとみられる」としています。
中には、拠点から日本にいる母親とビデオ通話した際、複数名の中国人らしき男達から脅しをかけられている様子が映ったことで、拠点にいることが判明した20代男性もいたといいます。この男性は暴行を受けた結果、腰椎を骨折したといいます。
その他の証言も紹介します。
「同居する日本人が脱走しないか見張ってほしい」
40代男性Bさん 2024年12月~2025年11月
Q“きっかけ”は?
・シアヌークビルでカジノに出入りしていたところ、「ボス」と称する中国人か台湾人の男に声を掛けられた(会話には翻訳機を使用)
・「簡単な仕事を紹介するので一緒に住まないか」と誘われパスポートを預けた
・指示された仕事の内容は、「会社(拠点)において、日本人がどのような会話をしているか教えてほしい」「同居する日本人が脱走しないか見張ってほしい」
Q現地の生活は?
・住まいは拠点から車で10分ほど移動した場所であり、詐欺で働いていた見張りの対象である日本人3名と同居。毎日、住まいから同居の日本人3名と一緒にアルファードのような車で拠点まで移動。自分以外の3名は移動時、毎回目隠し (顔にカバー) をされていた。
・住まいの出入りは比較的自由で制限されていなかった (24時間いつでも出られるわけではない)。
Q拠点からどう逃げ出したのか?
拠点にいるのが怖くなり、夜、「女を買いに行く」と伝えて滞在先の住まいを抜け出し、知り合いのベトナム人女性に乗り合いバスを手配してもらいプノンペンへ移動した。
中には60代も…「中国人が社長。ヤクザも加担して逃げられない」
60代男性Cさん 2025年2月頃~
Q“きっかけ”は?
ベトナムの生産管理の仕事に応募したが、マレーシアに連れて行かれて詐欺の仕事をするよう強要されて殴られた。その後、カンボジア (ポイペト)の拠点に閉じ込められる。
Q現地の生活は?
・朝6時30分から午後3時まで作業
・ 土曜日は午前中のみ、日曜日は休み。日本の祝日については基本的に休みだが、売り上げによっては出勤する場合あり。
・中国人や日系フィリピン人も働かされている
・一定以上の売上をあげた者には、賞金が出る仕組み。月の売上が一定以上を超えた場合には、全員に対し賞金が出る。
・中国人が社長。台湾人や日本のヤクザも加担して逃げられない状況。
韓国人リクルーターに誘われて「月150万円~300万円稼げる」
20代女性Dさん 2025年1月~10月
Q“きっかけ”は?
・「X」ツイッターで「電話相談」「最大3か月から6か月」「月150万円から300万円稼げる」とのアルバイト募集を見て応募し、相手方とテレグラムIDを交換してやりとり。
・ 相手方から新宿のカフェを指定され、「別の職員が行くから集合」と指示を受けた。
・新宿のカフェには、日本語が上手な韓国人リクルーターが現れ、アルバイト場所をカンボジアと聞かされる。「月150万円~300万円稼げる」と勧誘される。
・カンボジア行きの航空券はリクルーターが用意し、旅券は自分で用意。リクルーターと一緒に福岡空港からタイ経由でカンボジアのシェムリアップ空港へ。
・シェムリアップ空港に到着後、ヴェルファイアのような車でカンボジア人が迎えに来ており、リクルーターと一緒に拠点へ向かった。まるでVIP待遇だった。
Q現地での生活は?
・拠点は一番上に有刺鉄線が巻かれている高い塀に囲まれた建物で、セキュリティーが数人おり、ドーベルマンのような番犬もいた。
・ 拠点内の6階建てホテルの一室に案内され、ここで生活するよう言われた。
・ 午前7時に居住ホテルの隣の建物内2階事務所にあるかけ場へ出勤し、午後3時まで仕事(以降は自由時間)。かけ場にいたのは全て日本人で、男性8人、女性2人。デスクには、それぞれiPad、iPhone、有線イヤホンあり。
・拠点内には、コンビニや食堂、火鍋屋、ゲームセンターなどがあった。
・初日は見学だったが、次からは実際にかけ子をやらされた。日本語がペラペラの監視役の中国人がいた。
・ 勤務日は平日(後半の頃には日曜日しか休みがなく、休憩時間も削られていた)。
・休みの日は、シェムリアップに外出したり、ホテルでの食事や近くのカジノ、KTVで遊んでいたが、外出にはルールがあり、拠点を出る際には、顔より下の容姿を撮影されて、拠点出入口にいるセキュリティ宛てに写真を送信していた。
・拠点にはボスと思われる中国人夫婦。詐欺のストーリーを考える「先生」と呼ばれる中国人がいた。
知人の指示で“なぜか”カンボジアへ…かけ子見習いに
20代男性Eさん 2025年12月~2026年1月
Q“きっかけ”は?
・知人からの紹介で仙台で不動産の仕事をすることが決まり、那覇空港
到着後、知人からの指示で、なぜか香港経由でカンボジアへ行くことになった。
・カンボジアの空港に到着後、外国人の運転で高い塀に囲われた施設に到着した。
Q現地での生活は?
・施設の出入口には十数人の警備員がおり、自由に出入りできない環境。
・拠点敷地内には、3階建ての建物が300棟ほどあり、国籍別で約20名
ずつ、それぞれの建物に振り分けられる(日本人は300棟のうち2棟)。
・勤務時間は平日の朝9時から夕方5時まで。土日祝日は休み。
・最初の1か月に台本を覚えたり、目の前でかけ子と被害者のやりとりを聞いて覚えたりした。
・一つのかけ場につき、iPhoneが100台くらいあり、被害者とLINEを交換した機器は使用後に燃やすなどして処分。
・仕事中や、かけ場の建物の外に出る時は携帯電話を没収され、指定された部屋、指定された時間に限ってのみ使用できた。
・拠点敷地内のレストランで食事をしたり、カジノで遊ぶなどしていた。