日本の石油供給「史上最大の危機」 走るほど膨らむ赤字の物流、医療現場を襲う在庫不足、世界が奔走するエネルギー争奪戦【報道特集】

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2026-03-28 21:03
日本の石油供給「史上最大の危機」 走るほど膨らむ赤字の物流、医療現場を襲う在庫不足、世界が奔走するエネルギー争奪戦【報道特集】

イラン攻撃から1か月。世界が直面するエネルギー危機に、影響を懸念する声が高まっている。世界の国々は、どう対処しようとしているのか。インドや韓国の動きを追った。

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「経験した中で最大のエネルギー危機」緊張増す中東情勢

アメリカとイスラエルによるイランへの攻撃から1か月。停戦交渉がまとまらない中、トランプ大統領はイランの発電所などへの攻撃を、4月6日まで再び延期すると表明した。

トランプ大統領(26日放送 FOX NEWS CHANNEL'S THE FIVE)
「イランはとても感謝していた」

その一方で、アメリカ国防総省は大規模な最終攻撃を準備しているとも報じられ、緊迫の度合いは増している。

船舶の動きを分析している専門家は…

船舶調査会社「VORTEXA」の担当者
「日本向けの船舶が(ペルシャ湾内に)数隻いますが、明らかに閉じ込められています」

ホルムズ海峡を通過する1日あたりの船の数は、通常平均100~120隻だったのに対し、イランへの攻撃後は平均5隻まで減少している。(MarineTrafficより)

船舶調査会社「VORTEXA」の担当者
「私達が経験した中で最大のエネルギー危機です」

「倒産、廃業の危機に直面している」運送業界の訴え

山本恵里伽キャスター
「全日本トラック協会などが、燃料の価格高騰への対策を求める決起大会を行っています。会場には550人もの関係者が集まっています」

27日、自民党本部に集まったのは、全日本トラック協会、全国ハイヤー・タクシー連合会、日本バス協会の「運送業界3団体」だ。

燃料価格の急激な上昇で、経営の危機に直面していると訴えた。

全日本トラック協会 寺岡洋一 会長
「私どもの生命線であります、油。これは我々3団体の力ではどうしようもないなと…」

壇上には、自民党の幹部らも並んだ。

自民党 小林鷹之 政調会長
「先手先手で、この軽油を含めたエネルギーの供給確保のために全力を尽くしてまいります」

参加者は各地の窮状を訴えるため、全国から集まった。

全国ハイヤー・タクシー連合会 川鍋一朗 会長
「(価格が)これ以上、上がってしまうと、今度は動かす(台数)を制限する可能性も検討せざるをえない」

全日本トラック協会 寺岡洋一 会長
「倒産、廃業の危機に直面しているというのが現状だと思います」

走るほど膨らむ赤字、途絶え始めた燃料供給…物流の危機感

福岡県にある「柳川運輸」は、大型トラック60台、従業員120人を抱えている。

柳川運輸 下川暢洋 社長
「緊急事態だと。企業だけが節約するのではなく、国民みんなが節約しないと耐えられない」

柳川運輸では、経費の約4割を燃料費が占めている。燃料価格の高騰で、走れば走るほど赤字が膨らむ状況に陥っている。

柳川運輸 下川暢洋 社長
「だいたい月間で平均120キロリットル使っている」

ーー20円リッターで上がると?
柳川運輸 下川暢洋 社長

「240万か。企業で負担できる範疇じゃない」

状況はさらに深刻に…

燃料販売店から先日届いた一通の書類。「受注の一時停止」という通告だった。

柳川運輸は敷地内に「インタンク」と呼ばれる自社の給油設備を持つ。社長は、こうしたインタンク向けの販売を控える動きが、一般のガソリンスタンドよりも先に始まったと話した。

柳川運輸 下川暢洋 社長
「3月11日から受注停止しますとかね。燃料が足らないという状況は“高い”とは違う。高いのは高いので困ってます。でも、なくなる方はもっと怖い」

この日、燃料販売店と粘り強い交渉の末、ようやく届いた軽油。しかし、満タンを求めていたが、希望した量は来なかった。

物流は地域の生産者の暮らしを支えてきた。積み込まれるのは、福岡ブランドのいちご「あまおう」。多くが東京へと運ばれていく。

柳川運輸 下川暢洋 社長
「運べなくなると売れないんで、生産者は。売れないと作ったって生活はできない。この物流って空気中の酸素みたいな役割だと思っている。だから、みんな存在なんか気にしてないんですよ。でも、災害とかあったときに切れるじゃないですか。欲しいものが店頭に並んでないと、最悪はそういう感じになるんで、何が必要で何が辛抱できるのかを少しやらないと、大変なことになるなと…」

「心折れそう」価格転嫁できない…医療現場で高まる懸念の声

石油価格の高騰は、命を守る医療現場をも直撃している。都内のクリニックで女性が受けているのは、内視鏡の検査。

いとう王子神谷内科外科クリニック 伊藤博道  院長
「これ石油由来、プラスチックでできている。注射のシリンジがプラスチックでできていて、薬が詰めてある。点滴の液が通る管のこと『ルート』と言っているんだけど、ここの全てがプラスチックでできている」

医療器具のほとんどが石油化学製品だ。感染防止のため、毎回新品を使っている。

取材中、医療用手袋のメーカーから値上げの通知が届いた。

いとう王子神谷内科外科クリニック 伊藤博道  院長
「元々ここが一番安かったので、一箱188円で買っていた。それがちょっと前に値段が220円に上がった。さらに値段がぐんと300円まで上がっている。ぼくらこれを患者さんに価格転嫁できないので、『手袋上がったので診察料上がります』とできない」

国が価格を決める「診療報酬制度」のもとでは、コストの上昇を診察料に上乗せできない。在庫不足も起きている。

いとう王子神谷内科外科クリニック 伊藤博道  院長
「石油がなくなると話が出た時に、一番心配だったのは輸液セット。命に関わるから。輸液1本で命を救えるケースがたくさんある。この点滴で息を吹き返したという患者さんを、我々は何万人も今まで見てきた。最後の砦と思って、点滴は利益にならないけどやってきたが、心折れそう」

患者は全国に33万人超…透析治療にも欠かせないプラスチック

透析治療の現場も深刻だ。

日本透析医会 鈴木一裕 理事
「この透析装置で血を抜いて、毎分300ccくらい抜いて、それをきれいにして、また戻してという治療。プラスチック以外ないと思う。そのくらい依存している」

100人以上の患者を抱えるこの病院では、1人当たり週3回の透析が行われている。

日本透析医会 鈴木一裕 理事
「やはり血液を扱うので、感染だったり、そういうことを起こさないことに非常に気をつかう。全て破棄して、新しいものを毎回使っている」

全国で33万人を超える透析患者。現状不足はしていないが、替えのきかない医療器具がなくなると死活問題だ。

日本透析医会 鈴木一裕 理事
「治療が行われないと患者さんの命が失われてしまう。エネルギー危機で医療材料が切迫しているような状況でも、政府と協議して潤滑な透析医療が行えるように働きかけを行っている」

影響は世界各地に…韓国ではエネルギー節約呼びかけ

影響は世界中に広がっている。

フィリピンのガソリンスタンドでは、大幅な値上げを前に長蛇の列ができた。マルコス大統領は「国家エネルギー非常事態宣言」を出した。

タイではゾウを運ぶトラックが動かせないため…

記者
「ゾウが公道を歩くことは禁止されているのですが、今は緊急事態ということで特別に認められているようです」

そして韓国も、25日から公共機関を訪れる乗用車を対象に、利用制限を義務付けた。

看板
「きょうは3と8 出入り制限」
「あすは4と9 出入り制限」

ナンバープレートの末尾の数字によって、車が入れなくなる。今後、公共機関以外も対象になる可能性がある。

李在明 大統領
「国民の皆様には、公共交通機関の利用やエネルギー節約など、日々の小さな実践にご参加頂きたい」

韓国の環境省は、エネルギー節約のための12の行動をイラスト付きで紹介している。

家庭ではシャワーの時間を短くすることや、洗濯機、掃除機の利用は週末に限定することなどを呼びかけた。

なぜ? ホルムズ海峡を通過したインドのタンカー

世界がエネルギー確保に奔走する中、ホルムズ海峡を巡って独自の戦略をとった国がある。それがインドだ。

ホルムズ海峡を通過したインドのタンカーから撮影したとされる映像には、護衛するインド海軍とみられる艦艇の姿も見える。

船舶の位置をリアルタイムで表示する「マリントラフィック」で番組が調べたところ、26日までの1週間で、ペルシャ湾からホルムズ海峡を通過した船は、少なくとも17隻。そのうち5隻はインド行きとされていた。

実際にインドに到着したタンカーが積んでいたのは、石油から精製されるLPガスだ。

インドでは、飲食店や家庭での調理用火力としてLPガスが欠かせない。その多くがホルムズ海峡を通って輸入されているため、イラン攻撃後は供給が滞っていた。

飲食店
「数日前からガスが手に入らなくなった。ガスがないと何も調理できないので、店を閉めた」

14億人という世界一の人口を抱えるインド。

LPガス不足への不満が高まる中、重要な州議会選挙も控えていて、エネルギー問題は政権へのダメージにも繋がる。

イラン軍艦の保護に弔問・・・“外交”でエネルギー確保を図るインド

インドのタンカーは、なぜ封鎖状態のホルムズ海峡を通過できたのか。

インド政治に詳しい伊藤融教授はこう指摘する。

防衛大学校 伊藤融 教授
「外交交渉の結果として、タンカーの航行が認められたのだろう」

3月4日、アメリカ軍の攻撃を受けたイランの軍艦がインド洋で撃沈。80人以上が死亡した。

このときインドは、イランの別の軍艦を港に受け入れ、乗組員約180人を海軍基地で保護するという異例の対応を取った。

インド ジャイシャンカル外相
「我々はこれが正しい判断だったと考えている。人道的な配慮にイランの外相も感謝の意を表明している」

さらに3月5日、インドの外務次官がイラン大使館を弔問したことを初め、外相が電話会談を重ね、モディ首相とペゼシュキアン大統領との電話会談も実現した。

インド モディ首相
「インドは戦時下でも船舶の安全な航行を確保するため、外交を通じて努力を続けている」

取り巻く環境が厳しい中、インドは外交によってエネルギー確保を図ろうとしている。

防衛大学校 伊藤融 教授
「地政学的に見れば、パキスタンという最大の敵国の一つ、すぐ隣に位置するイランは味方につけなきゃいけない。もちろん、アメリカ・イスラエルとの関係も重要。どの陣営にも明確な非難はできないし、明確にどちらかを支持することもできない」
「ただインドの場合は日本と違って同盟国は持っていない。国益に基づいてプラグマティック(現実的)に行動するというのが、インドの伝統的な外交のやり方」

「買い手がついていない船はゼロ」ロシア産原油の輸入増に舵切ったインド

インドは、中東以外の産油国からの調達にも舵を切った。その相手がロシアだ。

アメリカはウクライナ侵攻を理由に、ロシア産の原油などの購入を禁止する制裁を課していた。しかし、原油価格の抑制を図るために緩和した。

イギリスの船舶調査会社のチーフエコノミストは「これに即座に反応したのがインドだった」と指摘する。

船舶調査会社「VORTEXA」 ウェック チーフエコノミスト
「インドが突然、ロシア産の原油を積んで停泊していたタンカーに強い関心を示しました。(インドはロシアから)2月は1日あたり100万バレルしか輸入していなかったが、3月に入って1日あたり200万バレル近くまで回復している」

ここ数年、制裁の影響からロシア産の原油を積んだタンカーの多くは、買い手がつかない状態で、シンガポールなどの沖合に停泊していたという。

しかし今、このタンカーは…

船舶調査会社「VORTEXA」 ウェック チーフエコノミスト
「現在、ロシア産の原油を積んだ船が買い手を探して停泊するような状況は、世界中のどこにもありません。全てに買い手がついています」 

ロシアからの原油輸入に向け動き出したのは、インドだけではない。

ロシア産原油の輸入に動く韓国、一方で日本は…

ロシアからの原油輸入に動くのは韓国だ。与党議員が取材に応じた。

エネルギー問題を担当 ミン・ビョンドク議員
「ロシアと非常に密接な関係にある重鎮議員(駐韓)がロシア大使に会い、具体的に要請しているような状況。出来るだけ早く実現させることが政府の至上命題です」

交渉のため、ロシアに特使を派遣することも検討しているという。

だが、ロシア産の輸入を再開した場合、国際的な摩擦は生じないのだろうか。

エネルギー問題を担当 ミン・ビョンドク議員
「外交上リスクが当然ある。ウクライナとの関係も重要だが、韓国の国民と産業がもっと重要」

ロシアからの原油購入に動く国が相次ぐ中、日本は…

エネルギー問題に詳しい専門家はこう指摘する。

ポスト石油戦略研究所 大場紀章 代表
「政治的な配慮、G7の中でもロシア産の原油を買わないと宣言をしている。国際世論上、日本がロシア産の原油を買うと問題になるか、ならないかという政治判断になります」

2022年5月、日本を含むG7は、ロシア産原油の輸入禁止の方針を表明した。

ポスト石油戦略研究所 大場紀章 代表
「韓国はG7ではないので、より独立して交渉がしやすい立場。G7の日本は(ロシアから買わないと)言った手前、買いづらい国という違いがある」

日本は、ホルムズ海峡を経由しない代替ルートからの調達を拡大する動きも進めているが、これまでの4分の1程度にしかならない。

これに加えて、中東以外から調達できたとしても、数か月以内に確保できる量は半分程度だという。

ポスト石油戦略研究所 大場紀章 代表
「日本にもし調達できそうなところ、候補を全部足しても、見通せる未来だと半分くらいはなんとかなるのですけれども、残りの半分は備蓄と節約で乗り切るしかない。石油供給が止まった量という観点では、史上最大と言っていいと思う」

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