新人議員大量当選の陰で見える自民党・派閥回帰の動き 麻生派の新人議員が語る“派閥の機能”と“新人議員が目指すモノ”とは【edge23】

裏金問題に端を発して解散した自民党内の派閥。ところがいま、旧派閥のメンバーを中心とした会合が相次いで開かれ、復活の兆しが見えつつある。そのきっかけが、先の衆院選で新人議員が大量に当選したことにあるという。
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唯一残る「麻生派」に加入した新人・山田基靖議員(43)に、現在の自民党の状況や派閥の機能、新人議員が目指すべきことについてホンネを聞いた。
「SNSでわざと炎上して・・・」新人大量当選の陰で囁かれる不安
2月の衆院選で自民党は歴史的な大勝を収め、戦後最多となる316議席を獲得した。そのうち新人議員は66人にのぼる。これほどの大量当選は、党にとってうれしい半面、別の懸念も生んだ。
TBS政治部で自民党を取材する原田真衣記者によれば、衆院選直後から党内幹部の間では「大量の新人議員たちをどのように面倒を見ていくかが大きな問題だ」「ここまで大所帯になると、いずれ問題行動を起こす新人もいるだろう」「SNSなどでわざと炎上して目立とうとする新人がいないか心配だ」といった不安の声が複数上がっていたという。
こうした懸念が語られる際、必ず引き合いに出されるのが“小泉チルドレン”と呼ばれた新人議員が大量当選した際の光景だ。杉村太蔵氏が「JR乗り放題らしい。しかも全部グリーン車。乗ったことないですよ」「早く行ってみたいですよ、料亭に」と発言し、批判を浴びた。今回も同様の事態が起きないかを、党幹部たちは警戒している。
また、番組でも以前、ある現職閣僚が「ガバナンスが絶対に悪くなる。有象無象が集まっている」と厳しい見方を示した。この言葉を山田議員にぶつけると、「新入社員みたいなもんですよね」と落ち着いた口調で受け止めた。
「そういう意味では、しっかりと政治家一年目として責任を持って発言できるのかと厳しく見られるのは、ある意味緊張感があっていいと思います」
「派閥=悪ではない」麻生派に加入した新人議員が語る実像
こうした状況の中で浮上しているのが、派閥復活の動きだ。「政治とカネ」の問題をめぐり、かつて6つあった派閥のうち5つが解散し、現在、派閥として残っているのは麻生派のみ。しかし原田記者は「旧派閥の面々で夜の懇談会やランチ会、勉強会を少しずつまた始めている」と明かす。
そもそも派閥の機能とはどういうものか。原田記者はこう説明する。
「これまで新人議員の教育は派閥が担ってきた部分が非常に大きかった。会社で言えば、党がやるのは人事部や総務部の基礎的な研修。派閥での教育は各部署でやる実践研修」
今回の衆院選後、党内に唯一残る「麻生派」には11人の新人を含む14人が新たに加入し、山田議員もその一人となった。
山田議員が麻生派への入会を決めた理由は、外交官時代の記憶にある。
「2006年に麻生会長が外務大臣だったとき、『自由と繁栄の弧』という価値観外交の大戦略を提唱された。当時、私は新人外務省員として、その政策のコアとなった国のひとつ、ポーランドに赴任することになっていた。地球儀を俯瞰して世界を巻き込むというビジョンに、当時から強烈な印象を受けていた」
そのつながりと、学びの場としての環境の両方が、加入を後押ししたという。
そして意外だったのは、地元・姫路の支援者からの反応だったと話す。「派閥に入ったと言ったら、地元の支援者の方々がすごく喜んでくれて。『麻生太郎さんに会いたいです』という声も大きくて」と語った。批判的な声は今のところないと明かした。
実際に麻生派ではどのような活動が行われているのか。原田記者によると、毎週木曜日の昼に「例会」と呼ばれるランチ会が開かれており、各委員会の状況についてのレクチャーが行われる。国会では一人の議員がすべての委員会に参加することはできないため、自分が所属する委員会以外で何が議論されているかを派閥の場で把握できるというのだ。
一方、派閥に所属していない新人議員たちの置かれた状況はどうか。山田議員は具体的な場面を挙げて語った。
「仲の良い議員が、委員会で質疑に立つかもしれないという話になったとき、『問取り=質問聴取』という専門用語の意味や、行政官が霞が関から答弁に来るといった慣習を誰に聞けばいいか分からなくて困っていた。やはり1年生からすると、簡単に2年生、3年生に話しかけていいものなのかと、ちょっとためらいますよね」
「派閥=悪」ではない。定例で顔を合わせることで自然と先輩と親しくなり、情報を得やすくなるというのが派閥の機能の本質だと説明した。
研修の内幕「座ったまま質問」で空気がピリッと
一方、党全体としての教育も行われている。2月に開かれた新人研修会では、鈴木俊一幹事長、齋藤健・中央政治大学院学院長代行、萩生田光一幹事長代行らが講師として参加。内容は「自民党議員としての心構え」「SNSに関する注意」「メディア対応」など多岐にわたった。
研修は非公開で行われた。原田記者によると、場の空気がピリッとしたという場面があったという。ある新人議員が質疑応答の際に座ったまま質問し、「失礼じゃないか」と注意される一幕などがあったという。これについて山田議員は「ピリッとというよりは普通の指摘で、説明されてる方々も立たれてるのに、という意味では自然なことだと思います。所作をしっかり学ばせてもらっているということだと思いますね」と冷静に受け止める。
原田記者によると、研修後、多くの新人議員がメディア取材を断る姿が目立ったという。幹部から「大手メディアの取材を受けるのは新人にとってメリットはない」といった耳打ちをされた議員もいたというのだ。
そんな中で今回、なぜ山田議員は出演を決断したのか。その経緯について「新人議員の今の状況を有権者の方々が聞きたがっているという趣旨を踏まえたうえで、党の広報本部に報告したら、許可は普通に下りました。信頼のもとで出させていただいています」と明かした。
「最大の仕事は〇〇になること」新人議員に求められる役割とは
新人議員たちは今、委員会での質疑にも立てない状況に置かれている。原田記者によると「暫定予算編成というきわめて重要な局面で、新人議員の不規則発言は警戒すべきポイントだ」とする声が党内から上がっており、委員会での質疑は「暗黙の了解」として新人には当面回ってこないという。
山田議員はこの状況について「作法がある程度整ってから立たせたいというのは先輩方の自然な感想だと思う」と語った。
では、新人議員に求められることとは何か。原田記者によると、ある党幹部は「1期生の最大の仕事は2期生になること」だと語る。そのためにも地元活動を徹底し、様々な部会等に参加して得意分野を見つけ、次の選挙でも当選を果たす。それが今の新人議員に求められる最優先事項だというわけだ。ただ、こうした方針に対して「せっかく国会議員になったのに、地方議員と変わらないじゃないか」とぼやく新人議員もいるという。
山田議員はどう受け止めているか。「単にまた当選するということだけではなく、国会議員としての戦闘力を上げることだと解釈しています」と話す。地元・姫路で「山田を選んで良かった」と思ってもらうためには、永田町での学びを持ち帰って届けられるバランスが必要だと考えているという。「毎週末帰れていますし、今のところそのバランスを手探りで見つけながら戦闘力を上げて2期目につなげていきたい」と意気込みを語った。
最後に、政治家としての大きな目標を問われた山田議員はこう答えた。
「2001年9月11日のテロをニューヨークで経験して外務省に入り、ずっと国を強くしたいという気持ちを持ってきました。日本人が日本に生まれて良かった、成長できるんだ、この国はもっと輝けるんだと思えるよう、そのマインドを変えていくことに全力で貢献していきたい」
自民党は今、66人の新人議員をどう育てるかという難題に直面している。原田記者は「様々なバックグラウンドを持った人材がいることは、ある意味、これまでの自民党の強みでもあった。山田氏を含めこの66人がどのように戦闘力を上げ、将来的に国、政府の中枢などでどんな活躍をされるのかをしっかり見ていきたい」と話す。
その中で見えてきた派閥回帰への動き。再び「政治とカネ」の舞台となることなく、正常な機能を果たすことが出来るのか。自民党の真価が問われている。