「止められるのは私自身の道徳だけ」トランプ政権へ揺らぐ支持と身内からの離反…背景に『国旗の下に集まる』戦争での支持率向上への狙い【サンデーモーニング・風をよむ】

イラン攻撃から1か月、依然終わりの見えない状況が続いています。かつて、「戦争を終わらせる」と豪語して大統領になったトランプ氏。その言葉とは裏腹に、なぜ、武力行使を続けるのでしょうか。
トランプ氏の“お膝元”での番狂わせ 揺らぐ国民からの支持
3月21日、自ら所有するフロリダのゴルフ場に到着したトランプ大統領。このお膝元で、「異変」が…
24日行われた、フロリダ州議会下院の補欠選挙。トランプ氏の自宅があり、共和党が圧倒的に強い選挙区で、民主党候補が勝利する「番狂わせ」が起きたのです。
補選に勝利した民主党 グレゴリー氏
「有権者はこの地区にどんな有名人がいようと全く気にしていません。みんな自分の望む生活をただ送りたいだけなのです」
いまトランプ氏への国民の支持が、揺らぎ始めています。最新の世論調査で支持率は36%と、第二次トランプ政権としては過去最低。イラン攻撃への「反対」も、6割を超えています。
こうした支持率低下の背景には、これまで繰り返し「戦争はしない」としてきたトランプ氏の姿勢の「変化」がありました。
「私を選べば戦争など起きない」はずが…身内から離反の動きも
2001年の同時多発テロ以降、「世界の警察官」として、アフガニスタンやイラクで戦争に関わり続けたアメリカ。「アメリカ・ファースト」を掲げ、トランプ氏が大統領選に出馬。
トランプ大統領(2016年)
「make america great again (アメリカを再び偉大にする)」
「アメリカを再び偉大に」いわゆる「MAGA」をスローガンに掲げ、「終わりなき戦争を終わらせる」ことを訴えて、有権者の心をつかみます。
そして、前回の大統領選でも...
トランプ大統領(2024年)
「皆、私が戦争を始めるというが、私は戦争をやめさせる」
「私を選べば戦争など起きない」
同様に「戦争を終わらせる」と訴え、再び大統領に。就任式でも、改めて平和を訴えました。
トランプ大統領(2025年1月)
「私が理想とするレガシーは、平和を構築し団結させる者になること」
ところが2025年6月、イランとイスラエルの間で戦闘が激化するとアメリカは軍事介入し、イランの核施設を攻撃。
さらに26年1月には、アメリカ軍がベネズエラの首都カラカスを急襲し、マドゥロ大統領を拘束。そして、今回のイラン攻撃。トランプ氏は「戦争をやめる」どころか、「武力行使」を繰り返しているのです。
こうした「変節」に身内からの離反も起きています。トランプ氏の熱心な支持者、いわゆる「MAGA派」の中でも過激な主張で有名だった、M・テイラー・グリーン元下院議員が、反旗を翻します。
元下院議員 M・テイラー・グリーン氏
「私はMAGAのために、まさに最前線でやってきた。(イラン攻撃に)心底怒っている。私たちはこれまで、外国のために米兵が死に、殺されるのをもう十分見てきたはずだ」
また、同じく「MAGA」派として知られた、国家テロ対策センターのジョー・ケント所長も、「利益をもたらさない戦争に賛同はできない」として、辞任したのです。
“国内での逆風” トランプ氏が「戦争」に走る理由とは
「戦争をやめる」と繰り返し訴えてきたトランプ氏が、今なぜ「戦争」に走るのでしょうか。
トランプ大統領(27日)
「『(米軍を)使う必要はない』と言ったが、時には使わねばならないこともある。次はキューバだ」
27日、キューバへの攻撃を示唆したトランプ氏。武力に訴える姿勢はエスカレートする一方です。イラン攻撃が始まって1か月。アメリカ兵にも犠牲者が出ており、すでに32兆円に及ぶ追加戦費も見込まれています。
なぜ、こうもトランプ氏は「戦争」にのめり込むのか、国際政治学者の藤原帰一さんは...
順天堂大学(国際政治) 藤原帰一 特任教授
「アメリカで戦争で訴えた場合には『国旗の下に集まる』という言葉がある。政権の支持率が上がる。これがいけない。今年中間選挙になるが、トランプ氏は、国内での基盤は揺らいでいる状態。ベネズエラ(攻撃)の場合は、マドゥロ大統領を拉致して、次の大統領に親米路線をとる人を置くことに成功した。戦争で怖いのは、一旦勝つと、その勝利が繰り返されることを期待し始める」
最高裁で違憲とされたトランプ関税、ICEなど移民政策への反発、そしてエプスタイン疑惑。国内の逆風が、トランプ氏を「戦争」に向かわせているというのです。
“権力者の戦争” 専門家が警鐘「国際法秩序の崩壊に近い」
実はイラン攻撃を批判した、「MAGA」派のテイラー・グリーン元議員は、25年12月、攻撃を前にこう語っていました。
元下院議員 M・テイラー・グリーン氏(25年12月29日・New York Times より)
「権力者が権力にしがみつこうとする時、何をするか。それは戦争だ。これからより多くの戦争が起きる」
予言されていた“権力者の戦争”。藤原さんは...
順天堂大学(国際政治) 藤原帰一 特任教授
「政治家が、国内支持のために戦争を手段として使うことがあるかと言えば、残念ながらある。政治家からすれば犠牲が無ければ、戦争は大変有利な手段。トランプ氏は、法に支配されるという観念自体がない。自分の行動が縛られるという考え方がない。アメリカは軍事的に圧倒的な力を持っている国ですから、戦争することが他国より容易。国際法秩序の崩壊に近い状態」
権力者の暴走を止める手立てはあるのか。トランプ氏はこう語っています。
「私を止められるのは、私自身の道徳だけ。私の心だ」