「学校に来られるのも当たり前じゃない」14歳で被災した少女が中学校の先生に 熊本地震10年 震災を知らない子どもたちが感じた“当たり前の大切さ”

最大震度7を二度観測した熊本地震の発生からきょうで10年になります。45人が亡くなった熊本県益城町では、けさ、献花台が設置され、地元の人たちが花を手向けに訪れています。10年前、当時中学3年生だった14歳の少女。10年経ったいま、目標としていた先生になり、子どもたちに地震の経験を伝えています。
熊本県菊池市の七城中学校で教壇に立つ、井手麻那美さん(24)。おととし、念願だった先生になりました。
井手麻那美さん
「慣れてきました、少しずつ。めちゃくちゃ大変です」
苦労しながらも、生徒たちの心もつかんでいるようです。
「数学の教え方が上手な先生」
「楽しく過ごさせてくれる先生」
井手さんは10年前、中学3年生のときに御船町で熊本地震を経験しました。震度6強を観測した御船町では災害関連死を含む10人が亡くなり、2800棟以上の住宅が全半壊しました。
井手さんも自宅が損壊し、家の外で寝泊りする日が続きました。
休校が続くなか、吹奏楽部だった井手さんたちは、学校に避難している人たちを元気づけたいと演奏会を企画しました。
井手麻那美さん(当時14)
「地震があって、みんな怖い思いをしたと思うけれど、こうやって勇気づける演奏会ができるというのはすごいことだと思います。これからもがんばっていきましょう」
この先どうなるのか不安だった中学校生活。そんな中、井手さんは将来の夢を語りました。
井手麻那美さん(当時15)
「今は教師になりたいです。中学校の教師に」
あれから10年。井手さんはいま、数学を教えながら吹奏楽部も指導しています。目標だった中学校の先生になったのです。
この日は道徳の授業。題材は「熊本地震」です。
井手麻那美さん
「4月14日と16日、みなさん当時何歳ですか?4歳?10年前だけんね」
生徒たちにとっては記憶が薄いあの日のこと。井手さんは避難生活の経験について話します。
井手麻那美さん
「(地震後)外でずっと過ごして、私、お風呂1週間入っていません。くさいよね、だって入れないんだもん。まず、お湯がでない」
道徳で使うこの教材は、熊本地震を経験した子どもたちの日記などから作られました。その中には、井手さんがボランティアで感じたこともつづられています。
井手麻那美さん
「私がみんなと同じ年、地震から学んだことはいったいなんだと思いますか?」
自分たちと同じ歳に被災した先生の話。生徒たちは何を感じとったのでしょうか。
井手麻那美さん
「笑顔っていっぱい書いてくれましたね。当たり前のありがたさ。お風呂に入れないとか、みんなに会えることが当たり前とか、こうして学校に来られるのも当たり前じゃないんだなと、その時思いました」
生徒たちは…
「もっと人の役に立ちたいです」
「当たり前の大切さを改めて実感しました」
そして、こんな意見も。
「実感できないかも。いつも先生が明るいから、そんな悲しいことがあったとはイメージが湧かない」
井手麻那美さん
「みんなが言ってくれた当たり前が、急な災害で当たり前じゃなくなるということもそうだし、困っている人と助け合い、支えあって“前向きに活動していけるんだよ”ということに気づいてもらえたら」
もし、同じことが起きたら何ができるのか。あの日、14歳だった少女はいま、先生として子どもたちに伝えています。