“伊藤さん”“田中さん”同士の婚活パーティーで見えた課題…政府は旧姓使用の法制化を検討も選択的夫婦別姓の議論はどこに?【news23】
4月上旬に行われた婚活パーティー。参加者には、ある“共通点”があります。取材をしてみると、結婚をめぐって制度が追いついていない現実が見えてきました。
【画像で見る】マイナンバーカードは?銀行口座は?「旧姓使用」の現状
“伊藤さん”同士の婚活? 名前に揺れる結婚観
4月初め、都内で開かれた婚活パーティー。
男性
「なんかあります?マスト3みたいな」
女性
「マスト3?こういう人がいいみたいな?健康的な人がいい」
早速、お互いの距離を縮めていく参加者たち。実は、ある共通点があります。
女性
「伊藤の“トウ”は『藤』の方ですよね」
男性
「『藤』ですね。『東』ですか?」
伊藤さん同士。さらに鈴木さん同士、田中さん同士も。同じ名字同士で出会う、ちょっと変わった婚活です。
初対面でも共通の「あるある」で会話が弾む一方、名字について考えるきっかけにもなったようです。
鈴木さん(女性)
「元々は名字に強いこだわりは持っていなかったですが、私は姉妹で、自分が結婚したら鈴木がなくなるという寂しさはあった」
日本では夫婦は同じ姓を名乗ることが法律で義務付けられていて、どちらかの姓に合わせる必要があります。そして、姓を変えるのは、2024年時点で約94%が女性。
内閣府の調査では、独身の20代・30代女性の約4人に1人が「積極的に結婚したいと思わない理由」として、「名字が変わるのが嫌・面倒だから」と答えています。
旧姓使用の法制化? 選択的夫婦別姓の議論はどこに
事実婚を選択する人もいるなか、国会では2025年、28年ぶりに「選択的夫婦別姓制度」の導入が審議されました。しかし、「家族の一体感を損なう」などとする保守派の反発が根強く、採決には至りませんでした。
3月、高市総理は…
立憲民主党 蓮舫 参院議員
「総理は選択的夫婦別姓、別氏制には反対ですか」
高市総理
「慎重な立場でございます。現在でも旧氏を通称で使っている方々の利便性をさらに高めていくべきと考えている」
政府が検討する「旧姓使用の法制化」。
通称として使う旧姓に法的効力をもたせ、一部の銀行では現在認められていない旧姓での口座開設やクレジットカードへの旧姓記載などを想定しています。
ただ、旧姓使用拡大の検討が進む一方で、改姓によるアイデンティティーの喪失などの問題については議論が尽くされていないという指摘もあります。
先ほどの、同姓限定の婚活パーティー。
伊藤さん(男性)
「男性というのもあり、自分の名字はそのままなんだろうなと。正直そこは考えてもいなかった。女性が名字に関して考えていると聞けて、そういう意見もあるのかと新鮮でした」
主催者は、「名字の問題で悩まなくていい社会になってほしい」と訴えます。
「同氏婚のススメ」を企画 丸山優河さん
「名字の問題が、日本で生きることのハンディキャップになってしまうことが大きな問題だと思っている。そういった問題を一挙に解決できるのが別姓も同姓も選べる社会だと思う」
残る不公平 “旧姓使用”では解決しないもの
小川彩佳キャスター:
選択的夫婦別姓の議論はずっと漂流し続けているような感覚がありますが、この名字の問題をどうご覧になりましたか。
文筆家 伊藤亜和さん:
去年結婚しましたが、私の本名は伊藤ではなく夫の名字に合わせました。最初は夫も「伊藤にしてもいいよ」と言ってくれましたが、お互いの家族の意見もあって結局夫の名字に合わせました。
私自身は名字を変えることに元々抵抗はなかったのですが、変えたらやっぱり寂しいというか、何かを失ったような気持ちになりました。
藤森祥平キャスター:
気持ちを実感するのはどんなときですか?
伊藤亜和さん:
書類に書けなくなったことですかね。病院で呼ばれる時とか。
私は仕事を伊藤のままでやっていますが、そうじゃない方はもっと感じるのかなと思います。
藤森キャスター:
今、旧姓使用を広げることの法制化が検討されています。
▼旧姓伴記可能
・マイナンバーカード
・パスポート
▼一部で認められず
・銀行口座作成
・クレジットカード記載
こういった不便さが残っているため、その解消が課題になるということです。
伊藤亜和さん:
私は選択的夫婦別姓を早く導入して欲しいなと思っています。
しかし、旧姓使用が可能になると事実上は面倒な手続きがなくなるかもしれないが、書類上の名前は変わっている。
変えてみてわかりましたが、変えた側には「変えたのに」「合わせたのに」という気持ちが湧いてきます。「キッチンの生ゴミ取ってよ。名字変えたんだから」みたいな本当に些細な向こうへの不満が出てきてしまう。
相手の家に入るということをしているから、最初の時点でフェアじゃない。
「それをしたからには、どうしてこれをしてくれないんだ」といった不満に少しずつ繋がってるような感覚があります。
藤森キャスター:
当初は徹底して話し合って2人で決断しても、いつしか合わせてもらった側は何となくその意識が薄れていると、はっとさせられました。
伊藤亜和さん:
最初は「ありがとう」と思うのですが、その後すぐに忘れてしまう。
500年後はみんな「佐藤さん」?
藤森キャスター:
ちなみに今から500年後、2500年代の世界では日本人の全ての名字が佐藤になる可能性があるというデータがあります。
今、最も多いのが「佐藤さん」で全体の約1.5%ほどです。
こうした研究をしている東北大学の吉田教授によると、「特定の姓にどんどん集約されていく可能性がある」ということです。
伊藤亜和さん:
散歩をするのですが、家の表札を見て珍しい名字を見つけるという趣味があります。全ての名字が佐藤さんになると人生の楽しみを一つ失うことになってしまいます。
藤森キャスター:
女性が姓を変える割合は約94%であるという現実です。
伊藤亜和さん:
なかなか旦那さんの方が名字を変える話にはならないですね。私の周りにも1組だけいますが、「次男だから」という理由だそうです。
藤森キャスター:
そういう理由がどこかで必要になっているのかもしれませんね。
小川キャスター:
現実とのずれがずっと続いているように感じます。
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<プロフィール>
伊藤亜和
著書に「存在の耐えられない愛おしさ」など
TVやラジオなどでも活躍