リアルな「車いすラグビー」を生んだ徹底指導――監修・峰島靖選手が明かす日曜劇場『GIFT』の舞台裏と、“衝撃”的な競技の魅力【ドラマTopics】

劇中で描かれるリアルな車いすラグビーシーンや、堤真一さん演じる宇宙物理学者の主人公・伍鉄文人が選手たちに届ける“天文学的”ながらも熱いメッセージが話題を集める、TBS日曜劇場『GIFT』。
【写真で見る】山田裕貴らが繰り広げるタックルも・・・ドラマ 『GIFT』場面写真など
その裏側で、選手役キャストの細かい動きから技術指導に至るまで、車いすラグビーに関する監修を一手に担いドラマを支えているのが、現役選手として車いすラグビーチーム「AXE(アックス)」に所属し、一般社団法人日本車いすラグビー連盟(JWRF)広報委員会普及コンダクターも務める峰島靖さんだ。
限られた期間の中で、俳優たちが“選手”になるための徹底した指導、そして撮影現場で感じたチームづくりの本質とは――。さらに、自身が競技と出会った原点や日本代表が金メダルを手にした理由まで、飾らないありのままの言葉で語ってくれた。
限られた期間で演者を“選手”に――リアルを生んだ指導戦略
日曜劇場『GIFT』の“舞台”となっている「車いすラグビー」。バスケットボールと同じ広さの室内コートで行われるこの競技は、障がいの程度に応じて持ち点(クラス分けの点数)が設定された選手同士が4対4で戦うパラスポーツとしても知られる。
“ラグ車”と呼ばれる競技用車いす同士のコンタクト(タックル)が認められているため、その激しさから「マーダーボール」と呼ばれていた歴史もある。
本作で監修を務める峰島さんは、そんな迫力あるプレーを、細やかなところまでリアリティーを持たせながら、限られた準備期間の中で作り上げていった。
「数か月で、なおかつ常勝チームやそれに挑むチームを作っていかなければいけない。どんな練習をすればそこまでのレベルに到達できるのか、そのために練習メニューをどうしていくか。すごく考えましたし、悩みました」
峰島さんはまず、全ての「基礎」となる“チェアスキル”を習得することを徹底。車いすを「体の一部のように扱う」ことができなければ、どれだけ動けても選手には見えない。
走る、止まる、ターンする、狙ったコースを取る――基本動作を反復させた上で、次に取り組んだのが戦術理解だった。
「車いすラグビーはルール理解が非常に重要な競技です。ボールを奪うのが難しいからこそ、ルールをどう使うかが鍵になる」
ホワイトボードやマグネットを使った座学も取り入れ、2対1から2対2へ、そして4対4へと段階的に理解を深めていく。さらに「インバウンド」や「キーアタック」といった実戦的な“型”についても実践を交えて指導し、キャストのプレーに落とし込んでいった。
一方で、「オフェンス(攻撃)はある程度“型”がありますが、ディフェンス(守備)は相手の動きに応じて変化する。決まりが少ない分、より難しい」と語るディフェンスは、「経験値がものを言う」世界。
「僕自身はハイポインターで3.5(持ち点)のプレーヤーなので、そのポイントに近い選手は密に教えられるのですが、2.0以下の障がいの重いクラスは、役ごとに実際の点数に合った選手も練習に参加して、直接指導してもらいました」
日常生活のシーンがある出演者には、直接の指導だけでなく、実際の選手の動きや生活シーンをビデオに撮って提供したことで、「よりリアルな動きを再現していただけています」と話す。
音と衝撃、そして戦術――車いすラグビーが人を惹きつける理由
車いすラグビー日本代表チームの近年の活躍ぶりは目覚ましい。
2004年アテネパラリンピック競技大会に初出場以降、全てのパラリンピックに出場する日本代表は、2016年リオ大会と2021年東京大会で銅メダルを獲得。2024年パリ大会では、悲願の金メダルを獲得し、世界ランキング1位(2026年4月現在)の実力を誇る。
自身も元日本代表で、連盟の委員としても“チーム日本”を支える峰島さんは、その輝かしい功績の裏で、選手たちの並々ならぬ努力や悔しさも見てきた。
「銅メダルって、素晴らしい結果だと思います。でも違ったんです。自分たちが作り上げていった個人のプレーやチームプレー、連携力、その全てをフル動員して相手に勝ちたいという思いで全員が団結して、東京では皆が本気で金メダルを取れると臨んでいった中での銅メダルだった」
そこからパリ大会までの3年間。「銅から金に持っていく。自分たちに足りないものは何か、本当に突き詰めていった結果として、あれだけの試合内容でパリで金を取れたことは、すごく大きかったです。世界でナンバーワンになったことを、金メダルという形で残せました」。
支えていたメンバーにとっても、その思いは同じだ。「圧倒的な試合内容が、揺るぎない自信になりました」と力を込める。
そんな日本代表の強さにも目を見張る車いすラグビーの魅力について、峰島さんはこう語る。
「会場でまず驚かれるのは“音”。ラグ車同士がぶつかった瞬間の衝撃音は、想像以上だと思います」。その迫力に加え、戦術の奥深さも見る者を引き込む。ルールを理解すれば、タックル一つにも意味が生まれ、歓声が上がる理由が分かる。
「同じフロアに観客席がある場合は、ぶつかった瞬間に振動のようなものが伝わることもあります。チタン製の車いす同士がバーンとぶつかる瞬間って、本当に近くだと火花が散るところが見えたり、焦げ臭い匂いがすることもあります」
一本のタックルが変えた人生――車いすラグビーとの出会い
まさに“スポ根”漫画の世界のような迫力。峰島さんと車いすラグビーとの出会いにも、その“衝撃”の瞬間があったという。
峰島さんが最初に車いすラグビーを見たのは、国立障害者リハビリテーションセンターの病院に入院している時。体育館に見学に行き、併設された国立職業リハビリテーションセンターの部活動の中でも花形の一つだったのが、車いすラグビー。
「すごい迫力で、自分たちの今置かれている状況や障がいで動けるレベルと、選手が動いているレベルの差が激しすぎて、『本当に同じ障がい者なんだろうか』と思うぐらいすごい人たちに見えました。こういう世界があるんだと感じました」
峰島さんは支えがあると歩行もできるが、当時の医師からは「次に首に強い衝撃を与えるとそれもできなくなる」と言われ、国立職業リハビリテーションセンターに入寮してからも、車いすラグビーからは自ら距離を置くことに。そんな中、ルームメートからの度重なる積極的な誘いに、「一回ぐらいは…」と初の機会が訪れた。
「タックルをドカーンと受けた瞬間に、やっぱりこれは面白い、と衝撃みたいなものが自分の中でありました。こんなに面白いものをなんで今までやっていなかったんだろう? と思いましたね」
ラグ車で動く体験も初めてで、「動いて、ボールを追って、ぶつかって、奪い合う、ということがすごく刺激的でしたし、楽しかったんです。ぶつかった感触も、車いす自体が衝撃を吸収してくれているので、衝撃のわりに即座に体に重い負担がかかることはなかったです」と振り返る。
そこから、車いすラグビーにのめり込んでいった。
ドラマと競技が重なるとき――“チーム”が生む力
今回のドラマ制作に携わる中で、峰島さんは“ある共通点”を強く感じたという。
「ドラマもスポーツも、チームで一つのものを作るという意味では同じだなと思います」
現役選手でありながら、メットライフ生命保険株式会社で人事人材採用チームに所属する峰島さんは、社内の新人研修などの機会でも、スポーツと仕事を関連づけて話をすることがあるという。
「“適材適所”にメンバーがいる、ということはすごく大事だと伝えています。ドラマの現場でも、キャストや監督をはじめプロフェッショナルな方々が適材適所にいて、一つのものを作ろうとそれぞれの分野で100%の力を持ち寄っているところを見ました」
力を持ち寄りチーム一丸になることで、良い作品ができ、強いチームになっていく。
「特に、車いすラグビーは障がいの違いがあるので、選手それぞれの役割をしっかりとかけ合わせないといけません。それがスポーツでもドラマでも仕事でも、噛み合っているチームのほうが絶対に強いと思います」
また、同じ方向を見て積極的にコミュニケーションを取り合うところにも、共通点を感じたという。
ドラマのタイトルにもなっている「ギフト」については、「パラリンピックの時にもいろいろな形でメッセージをいただいていて、すごく力をもらいますし、日本の応援は本当にどこの国にも負けないパワーを持っているなと感じます」と、サポーターの存在を挙げる。
「皆さんの応援や歓声だったり、支えてくださっていることが、僕たちにとってギフトですし、サポーターの方たちが、僕たちから“何か”を感じ取って応援したいと思ってくださっているとしたら、それはまた僕たちからもギフトを贈ることができているのかなと思うので、とてもうれししいですね」
ドラマ『GIFT』をきっかけに競技を知り、興味を持つ人が増えること――。その広がりもまた、新たな“ギフト”になるだろう。