度重なる事故から奇跡的に生還し、「バイオニック猫」として猫生を謳歌 英王室領ジャージー島

2026-06-15 06:00

数々の事故に遭い、大ケガをした子猫。後ろ足を2本とも切断されてしまったとき、この猫はインプラントを埋め込み義足をつけた「バイオニック猫」として生まれ変わったのです。

たび重なる重大事故

手術を受ける黒猫

画像はイメージです

2007年、まだ子猫のときに「英国王室直轄領」であるジャージー島に引っ越してきた猫のOscar。当時から人懐こく温和な性格のこの猫は、同時に冒険好きでもありました。家の外をよく出歩いていたのです。

ところがある日、車に轢かれて尿路と尻尾に損傷を受けてしまいました。飼い主のMike NolanさんとKate Allanさんは、高額を支払ってOscarに皮膚移植を含む非常に複雑な手術を受けさせたのです。回復までには長い月日がかかりました。

ところが2歳にならないうちに、ふたたび車に轢かれてしまったのです。今回は股関節を脱臼しており、やはり高額な手術が必要でした。

2009年10月、Oscarが自宅近くの畑で日光浴をしていたとき、コンバイン農機具の刈り刃に巻き込まれて両後ろ足を切断されてしまいました。約1時間後に通りかかった女性が発見したとき、Oscarは大量に出血し、瀕死の状態でした。すぐに飼い主に連絡がいき、そのまま獣医へと運ばれたのです。

すぐに地元のPeter Haworth獣医が応急処置を施しました。しかし残った2本足だけでは、猫はうまく活動することができません。Oscarは「安楽死させられる可能性が高い」とだれもが思ったのです。

しかしPeterさんは、英国ロンドンからそう遠くないサリー州のNoel Fitzpatrick教授を紹介してくれました。教授は獣医で、義肢手術のパイオニアでもあります。彼の診療所にはMRIやリハビリ用プール、その他あらゆる近代的な獣医設備が備わっているというのです。

バイオニック猫の誕生

インプラントのイメージ

画像はイメージです

Fitzpatrick教授は「これまで両足とも義足にしたペットはいないものの、この猫には希望がある」と感じ、手術が行われることになりました。ジャージー島から英国へと飛行機で旅立ったOscarは、特注のインプラントが切断された部分の骨に埋め込まれたのです。手術は3時間にも及びました。

挿入したインプラント部分が治癒すると、新しい義足が取り付けられて、Oscarは「バイオニック猫」に生まれ変わりました。

当初はゴム製のもので運動しやすいように設計されたものでした。しかし間もなくゴムと金属でできた、より長持ちする「ブレードランナー」型の義足に替えてもらったのです。この人工足は完全な屋外生活には適さなかったため、Oscarは毎日のほとんどを「室内猫」として過ごすことになりました。

Fitzpatrick教授の診療所で8ヵ月間を過ごしたOscarは、「初のバイオニック猫」としてマスコミに取り上げられ、人々の話題になりました。

手術後は定期的な検診が必要だったため、長い話し合いの末、英国とジャージー島を往復するストレスを与えるよりも、英国に留まるのが最善だと判断されました。そして教授の診療所でマネージャーを務めるMatt ConnorさんがOscarを飼うことになったのです。

ところが彼が借りている住宅の大家さんがペットを禁止したことで、事態は思いもよらぬ展開を迎えます。事故から2年近くが経過して、Oscarはジャージー島の元の自宅に戻りました。ここでOscarは猫らしい行動をすべてこなすことができ、健康状態も良好で、ごく普通の生活を送っていました。

高額な手術を「研究費」で支払い

義足を付けた黒猫

画像はイメージです

Oscarの手術には約3万ポンド(約640万円)かかりましたが、その多くはFitzpatrick教授が支払ってくれました。彼はこの手術を「動物だけでなく、重度の障害を持つ人間の治療にも役立つ先駆的な研究」だと考えていたからです。

「どこで線引きすべきかは分かっています。動物は感覚を持った生きものであり、ニーズや欲求を持っています。できるからという理由だけで手術を行うのは倫理的ではありません。動物の生活の質が向上すると見込まれる場合だけ、手術の対象となります」と教授は話しています。

ところが2012年8月、5歳のときにOscarのインプラントの1つが破損してしまいました。チタン製のロッドが折れてしまい、まともに歩くこともできなくなりました。教授に緊急連絡を取ったところ「追加手術は可能だが、より長いインプラントを脚のさらに上の方に挿入する必要があり、長期の療養が必要になる。費用も高額になる」とのことでした。しかも以前のインプラントを製造した会社は、そのときすでに廃業していたのです。

しばらくの間、Oscarは3本足のまま生活をしていました。しかし2013年10月にインプラントの手術を受け、11月初旬には再び4本足で歩くことができるようになったといいます。その年のクリスマスにはジャージー島の自宅に戻ることができました。

Oscarはその後定期的な治療や手術を受けながらも活動的に過ごし、足の切断事故から10年目の「記念日」も、愛する飼い主家族とともに元気に迎えたということです。

出典:Cats' Adventures & Travels 14

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