メルカリがあるのに、なぜ店舗が流行る? 米国進出が大成功の中古品店「セカンドストリート」快進撃の正体

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2026-06-17 07:00
メルカリがあるのに、なぜ店舗が流行る? 米国進出が大成功の中古品店「セカンドストリート」快進撃の正体

メルカリやフリマアプリを使えば、スマホひとつで何でも売り買いできるようになりました。それなのに、中古品の「店舗」がいま絶好調です。リユース業界トップのゲオホールディングスは、2026年10月に社名を「セカンドリテイリング」へと変えます。主役は、中古専門店「セカンドストリート」、通称「セカスト」。国内外で1000店舗を超え、海外だけでさらに1000店舗を狙うところまで来ています。スマホで完結する時代に、なぜわざわざ店に品物を持ち込む人が増えているのか。その核心について、リサーチャーのcomugiが解説します。

(TBS Podcast『コムギコ:資本主義をハックしろ!!』2026年6月16日配信『進撃のセカスト!激動のリユース市場とAI時代「見立て力」の重要性』より)

メルカリは「踊り場」、伸びているのは店舗

まず、数字で現状を確かめておきましょう。国内のリユース市場は2024年に3兆2628億円。15年連続で拡大していて、2030年には4兆円に達するという試算もあります。リユース店の数は全国で約2万店。もはやニッチな業界ではありません。

興味深いのは、この成長を引っ張っているのが「店舗」だということです。リユース経済新聞の調べによると、2024年は、フリマアプリのような個人間のネット売買が約1.4%増にとどまった一方で、店舗での販売は8.2%増。メルカリ自体も、国内の流通総額は1兆円を超える規模に達していますが、足元の成長率は一桁台に鈍っています。これは国内リユース市場全体のおよそ3分の1に当たる大きさですが、伸び方は、市場全体の店舗販売ほど力強くはありません。

なぜ、便利なメルカリがあるのに店舗なのか。理由は「手間の少なさ」です。紙袋にまとめて持っていけば、その場で査定され、その場で現金になる。出品も発送も評価のやり取りもいりません。引っ越し、衣替え、遺品整理など「とにかくまとめて手放したい」場面では、店舗のほうが圧倒的にラクなのです。そして、一点ものの中古品が並ぶ店内を歩く「宝探し」の楽しさもあります。

「チェーン化できないはずの商売」という謎

ところが、経営する側に視点を移すと、リユース店はとても不思議な商売です。チェーン経営の常識が、まるで通用しないのです。

普通のチェーン店は、同じレイアウト、同じ品揃えの店を全国にコピーして増やしていきます。本部が商品を計画し、どの店にも同じものを並べるからこそ、効率よく出店できます。

ところがリユース店は、いつ、誰が、何を持ち込むか予測できないので、仕入れの計画が立てられません。同じ商品でも状態が一つひとつ違うため、品揃えを標準化することもできない。さらに、持ち込まれた商品はその地域に欲しい人がいる可能性が高いので、別の店に動かすとかえって売れなくなる。だから「店舗間で商品を移動させない」のが原則です。仕入れも品揃えも計画できず、商品の移動すらできない。これは本来、全国チェーンには向かない商売なのです。

では、セカストはどうやって、この「チェーン化できないはずの商売」を世界1000店舗のチェーンに変えたのでしょうか。

趣味の古着店から始まった

意外なことに、セカストの始まりは、趣味のお店でした。1996年に香川県高松市にできた1号店は、もともと、当時のオーナーがアメリカの古着を輸入して売る、個人商店のような店だったそうです。当時のリユース店は倉庫のように暗くて入りづらいのが普通でしたが、セカストは創業期から明るく入りやすい店づくりをしていました。この点が、後で大きな意味を持つことになります。

そのセカストに、ゲオが2008年に資本参加し、2010年に完全子会社にして、2013年にはセカンドストリート事業をゲオ本体が引き継ぎます。面白いのは、最初は戦略的な買収というより「店舗の有効活用」だったことです。ゲオの主力がビデオテープからDVDに変わると、DVDはかさばらないので広い売り場が余ってしまう。その空きスペースを埋めるために、ゲオの店の中にセカストの売り場をつくっていた、というのが始まりでした。

転機は2011年です。現在の社長が就任して「セカンドストリートは会社の柱になり得る」と号令をかけ、ゲオで稼いだ利益をセカストに投入する体制へと変わっていきました。

「水と油」が強さを生んだ

長くセカストを率いてきたゲオの専務は、あるインタビューで「ゲオとセカストは、180度思想の違う会社だ」と語っています。ゲオは、レジのシステム化を進め、効率を極めてきた「仕組みの会社」。一方のセカストは、マニュアルよりも現場の経験でノウハウを積み上げてきた「目利きの会社」。まさに水と油です。

しかし、この組み合わせこそが、先ほどの謎への答えでした。目利きという人力頼みの商売は、そのままでは多店舗展開に限界があります。そこにゲオの仕組みの力が加わったのです。ゲオは創業期から基幹システムを内製してきた会社で、いまは100人を超えるITエンジニアを抱えています。セカストの買い取り支援システムは、商品情報を入力すると、過去の膨大な売買データと相場から参考価格が表示される仕組みになっている。買取実績は年間7000万点に及びます。職人技だった目利きを、新人でも一定の水準で再現できる「仕組み」に変えたわけです。

ちなみに新社名「セカンドリテイリング」は、英語で中古を意味する「セカンドハンド」と小売りの「リテイリング」を組み合わせたものです。1986年にレンタルビデオ店から始まった会社が、創業40年の節目に、看板を「リユースの会社」へと掛け替えます。なかなか感慨深い節目です。

日本式買い取りが、海外で武器になった

そして、この強さが最もはっきり表れているのが海外進出です。セカストの海外店舗は2026年3月末で148店。アメリカは2018年のロサンゼルス出店から55店まで増え、2030年には100店を目指します。米国の売上はこの3年で約6倍の119億円。台湾も50店から100店へ、タイの法人は売上が前の期の3.8倍と、すさまじい勢いです。

なぜ、日本のリユース店が海外で勝てるのか。理由は大きく3つあります。1つ目は、主力の「古着」という商材です。本やCDと違って言語に縛られず、家電と違って電圧や規格の壁もない。しかも世界の中古アパレル市場は、2030年に約60兆円、新品の2倍のペースで伸びるという予測もあり、追い風が吹いています。

2つ目は、欧米では「服を気持ちよくお金に換えられる店」がそもそも存在しなかったことです。欧米では、着なくなった服は売るものではなく、慈善団体に「寄付する」のが長年の習慣でした。そこにセカストは、持ち込まれた品物を基本的に全部見て、一点ずつ値段をつける日本式を持ち込みます。象徴的なのが、店頭に並べにくい服でも1着1円、アメリカでは1点1セントで引き取る仕組み。金額はゼロに近くても、お客さんが受け取るのは「拒絶されなかった」という感覚です。そしてこの「全部買います」は、優しさであると同時に、いい品物を集めるための仕入れ戦略でもあります。

3つ目が、それを支える業務システムです。データが参考価格を示し、現地のスタッフが「なぜこの値段なのか」を説明する。機械的な一律ルールの買い取りに慣れていた海外のお客さんに、この「説明できる買い取り」が新鮮に映っているそうです。

不可能を、世界チェーンに変えたもの

追い風もあります。日本人は物を丁寧に扱うので、日本の中古品は状態がいい。海外では「ユーズド・イン・ジャパン」と呼ばれ、それ目当てに日本のリユース店で買い物をする訪日客が増えています。インバウンド需要の高いブランド品の売上は、市場全体で前年比16%増の4230億円に達しています。

こうしてセカスト事業の2026年3月期の売上は1552億円、前年比17.6%増。親会社のゲオHDも売上4812億円と、絶好調です。

セカストの強さの正体は、「日本の古着が人気だから」だけではありません。一点ずつ価値を見つける日本式の買い取りを、データとシステムの力で、大量の店舗と大量の商品で再現できるようにしたこと。つまり、職人の目利きを「仕組み」に変えたことです。セカストが趣味の古着店から育ててきた目利きの文化と、ゲオのシステムの文化。正反対の2つの会社が30年かけて力を合わせ、本来チェーンには向かないはずの商売を、世界1000店舗を狙えるチェーンへと変えていった。一点ずつ価値を見抜く目利きの技も、いったん仕組みに変えてしまえば、人や国が変わっても同じように再現できる。セカストの快進撃は、そのことを静かに証明しているのだと思います。

<コムギコ:資本主義をハックしろ!!>
毎日ニュースを100本を読むビジネス系VTuberのリサーチャーであるコムギ(comugi)が、日々の経済にまつわるニュースを解説するビデオポッドキャスト。本記事は2026年6月16日配信『進撃のセカスト!激動のリユース市場とAI時代「見立て力」の重要性』から抜粋してまとめたものです。

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