「賛否を巻き起こしていい」小泉進次郎が変える防衛省の「攻めの発信」 “シン・小泉劇場”は理解かリスクか 裏で支える特命チームも

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-06-20 06:30
「賛否を巻き起こしていい」小泉進次郎が変える防衛省の「攻めの発信」 “シン・小泉劇場”は理解かリスクか 裏で支える特命チームも

今週、防衛省の発信から顕著な変化が見て取れた事象がある。

【写真でみる】小泉進次郎が変える防衛省の「攻めの発信」

「極めて遺憾であり、重く受け止めています」
「現場で準備を担ってきた隊員や関係者の努力、そして多くの方々に活動の実情を伝える機会が失われたことについては、看過できるものではありません」
(防衛省公式Xの6月16日の投稿文より)

防衛省の公式Xへのこうした投稿は過去に例を見ない“異例”のことで、強いトーンでの主張が関心を集めている。

こうした投稿の狙いについて小泉氏は周囲に対し「『モノ言わぬ防衛省・自衛隊でいいのか』という思いがある」と漏らしている。
SNS時代における防衛省の情報発信の変化の裏側で何が起きているのかを取材した。

防衛省が“異例”の投稿「遺憾」「看過できない」

防衛省が今月16日に公式Xに投稿した内容に注目したい。名古屋大学の学園祭で6月13日に出展が予定されていた自衛隊の活動を伝えるパネルなどの展示が、前日に急遽、展示を取りやめになったことに対する見解だ。

翌17日には、公布された予備自衛官等兼業特例法について「公務員が予備自衛官などに志願しなければならなくなる」「実質的な徴兵制」などといった指摘があがっていることに触れ、「事実に反するもの」「不安を広げるような発信については、看過できるものではありません」と投稿している。

当該アカウントの検索機能から「遺憾」という文字の過去の投稿歴を検索してみたところ、2011年3月のアカウント開設以降、対外的な事象に対して「遺憾」の言葉が使用されたのは、検索できる限り初めてのことだった。「看過できない」についても、同様に初めてのことだとみられる。

※「遺憾」は過去に大臣会見の発言を引用した際にも使用。また「遺憾なく発揮したい」という別の投稿でも使用しているが、対外的な事象を指摘する意味で使用された投稿はない。
※「看過できない」は2022年3月にロシアによるウクライナ侵略に関連し使用。先述した指摘についての投稿がそれぞれ2例目と3例目

攻めの発信へ 小泉大臣「変えていこうと思っている」

こうした情報発信の旗振り役が、自身にとって初の防衛大臣ポストを担う小泉進次郎防衛大臣だ。かつての硬質で慎重だった発信から、SNSを駆使したダイレクトかつ攻めの発信へと舵が切られている。

小泉進次郎防衛大臣
「(防衛省・自衛隊は)あまり積極的な発信をしなかった部分もあるかもしれませんが、私はそれを変えていこうと思っています。」
(2025年10月・視察先での記者の取材に対し)

そもそも、防衛省・自衛隊の発信は、これまでホームページを中心に一見しただけでは詳細が一切伝わらず、災害派遣の報告や訓練の様子などを淡々と伝える「報告型」が中心だった。
こうした状況に小泉氏は「自分が先頭に立ち、理解を広めていくための情報発信を引き続き強化をしていきたい」と意欲を滲ませていた。

小泉氏が取り組むことの1つの例が、自衛隊・統合幕僚監部が発信する他国の軍事動向についての「解説投稿」だ。統合幕僚監部は他国の軍用機などが日本周辺で活動していることを確認した際、公式Xでの公表も行っている。しかし、この「お知らせ」の内容を見ただけで、どういう意味があり、どういう問題があるのかということを一般の国民に伝えることには課題がある。
小泉氏はこうした投稿を引用する形で「当該の機体はどのような装備が可能で、どのような脅威(もしくはリスク)が考えられるのか」などの解説する内容を投稿し続けている。

防衛省幹部は「(小泉大臣は就任後)『自分はみなさんに比べれば(安全保障の)素人だ。だからこそ、わからないものを国民側に立ってしっかりと伝わるように発信していきたい』と話していた。閉じていた殻をこじ開けていると感じます」と話している。

「どんどんやっていい。賛否を巻き起こしていい」

防衛省・自衛隊が部外の事象や指摘に対し、歴代の大臣が記者会見などでコメントを発言することはあっても、省としての見解がSNSに投稿・公表されることは極めて異例と言える。

先述の名大祭に関連する投稿では「(活動の実情を伝える機会が失われたことは)看過できるものではない」「極めて遺憾」と強いトーンで投稿し、強い不満を表明している。

小泉氏は就任後に沖縄を訪問した際には一部の住民から自衛隊員に対し「人殺しの練習をしている」とする意見が出ていることに対し「心無い声がある」と主張したり、野党議員が国会質疑で「豊かな子どもたちは自衛隊にならない」などと発言したことに対しては「冒涜にあたる」と厳しく批判するなど、歯に衣着せぬ物言いを重ねてきた。こうした発言が「覚醒した」と評される所以でもあるのだろう。

しかし今回の見解は、1人の国会議員や大臣としてだけではなく、防衛省としてのスタンスを示したものだ。

投稿に際し小泉氏は「どんどんやっていい。賛否を巻き起こしていい。」と指示したという。

この指示について、ある防衛省関係者は「SNSが主流の中で、小泉大臣は誤った一方的な意見だけが流布されることに納得していない。『自分たちはこう考えている』と発信しないことには、『一方的に言われたままになってしまう』という問題意識を持っている」と解説している。

小泉大臣を支える特命チーム「フロントオフィス」

これまで国防族と呼ばれる重鎮が担うことが主流だった防衛大臣ポストだが、“異色”の小泉氏を支える存在も明らかになってきた。

「フロントオフィス」と呼ばれる、ごく少数の職員からなる大臣直轄の特命チームだ。大臣に常時同行する秘書官とは異なり、省内の各担当課と小泉氏をつなぐ、いわば“パイプ役”とされている。

「小泉大臣が就任してから立ち上げたチームです。大臣が動くものは、必ずチームを通します。担当課に指示が出ることもあれば、担当課からの意見を吸い上げてくれています。“外”から来た小泉大臣にとって、防衛省の常識は、非常識と見えることもあるそうで、発信力のある新しい風(=小泉氏)の指示に対応するための特命チームです」(防衛省幹部)

主な業務は小泉氏の発信を中心とした補佐ということだが、このチームを評価する声は省内各所から聞こえてくる。通常、防衛大臣の発信内容や政策の方向性を決める際には、担当の部署が詳細を定め、一定の方向性や内容を固めてから大臣に承認を得る形で進めるのが通例だ。一方、フロントオフィスを通じることで、アイデアベースの段階で小泉氏へ意見が集約されるため、いわゆる“根回し”のような段取りを必要とせずに迅速な意思決定に繋がっているという。

関係者が例にあげるのが、今年5月に小泉氏が発表した「国会議員会館への紙資料配布のとりやめ」だ。防衛省が長年慣例として、国会議員会館に対し、ホームページやSNSなどに公表する資料と同じものを複数の若手の職員が印刷し配布していたもので、「若手職員の業務を圧迫している」との声があがっていた。そもそも、この意見は、担当課を中心に長年にわたり省内で疑問視されていた業務の1つだが、フロントオフィスを通じ小泉氏の耳に入ったことから、防衛省としても原則として配布を取りやめを決定し、公表したという。

“シン・小泉劇場”がもたらす「危うさ」の側面

小泉氏が防衛省・自衛隊にもたらした変化について、こんな声があがっている。

「もはや“シン・小泉劇場”だ。この勢いのおかげで難しい政策も国民に理解をしてもらえるだろう」(防衛省幹部)

「小泉劇場」とは、小泉氏の父である小泉純一郎氏が総理在任中に1日2回、記者からのぶら下がり会見に応じ、キャッチーなフレーズとともに持論を展開したことで幅広い注目を集めた事象のことである。

SNSを通じた国民へのダイレクトな発信は、確かに“シン・小泉劇場”と揶揄されるかもしれないが、リスクもはらんでいるともいえる。

今年4月に現役の陸上自衛隊員が自民党の党大会で歌唱した問題では、当該の隊員との写真を添えて一時は称賛する文章を個人のSNSへ投稿したが、のちに「出席をするといったことについての報告がなかった」として投稿を削除している。また、中東情勢の悪化を受けて準備されていた自衛隊派遣について、正式な準備依頼がなされる前に“フライング投稿”してしまったことも記憶に新しい。

今回の名大祭に関連する防衛省公式SNSでの投稿については、大学の自治への介入という批判も一部あがっていて、国家権力である防衛省が「看過できない」と圧力をかける構図に見えるリスクもはらんでいる。

小泉氏の持つ「わかりやすさ」や「発信力」、前のめりな姿勢は、一歩間違えれば「強権的な印象」を与えかねない両刃の剣であるとも言えるだろう。防衛省の情報発信力の向上はこれからの安全保障環境において国民の理解を得るために必要不可欠であることは事実でもある。

主義・主張・見解・認識・事実関係の公表は国民の理解を必要とする安全保障政策において欠かせない。その一方で、わかりやすさが表面的なものだけであってはならないし、「エモーショナルな世論誘導」や「批判勢力へのカウンター」へ変質することがないよう、注視しなければいけない。

殻を破って積極的な情報発信に努めることは重要だが、自らに都合が悪い時に殻に閉じこもることがないよう、厳しい見方も必要だ。

現場で勤務にあたるある自衛隊員の冷静な言葉が印象に残っている。
「いくら組織の発信が変わっても、世間の常識にちょっと近づいただけですよ。」

“シン・小泉劇場”はどのような展開を迎えるのだろうかー。

TBS報道局政治部・防衛省担当 渡部将伍

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