カプセルトイ市場、4年で3倍の1960億円!「第5次ブーム」の裏にある強みとは

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2026-06-30 19:07
カプセルトイ市場、4年で3倍の1960億円!「第5次ブーム」の裏にある強みとは

300円のおもちゃのはずなのに、市場規模はこの4年で3倍にふくらみ、専門店は全国900店舗を超えました。なぜ、いまカプセルトイがこれほど盛り上がっているのでしょうか。その背景には、60年前に見抜かれた人間の心の仕組みと、「電源がいらない」という、ビジネスとしての強さがあります。カプセルトイが立派な「産業」になっていく仕組みについて、リサーチャーのcomugiが解説します。

(TBS Podcast『コムギコ:資本主義をハックしろ!!』2026年6月29日配信『カプセルトイという沼:なぜ人はガチャガチャを回すのか?』より)

4年で3倍、1960億円。カプセルトイは「第5次ブーム」

まず、市場の数字から見ていきましょう。

日本カプセルトイ協会の調査によると、2025年度のカプセルトイ市場は、製造元の出荷ベースで約1960億円になりました。前の年度の1410億円から39パーセント増で、過去最高を更新しています。4年前は650億円ほどでしたから、たった4年で3倍に伸びたことになります。

しかも、これは国内向けのカプセルトイ専用商品にしぼった数字です。イベントの物販や企業オリジナルのグッズまで含めると、2000億円を超えるとみられています。

販売個数は、年間でおよそ5億5000万個。日本の人口で割ると、ひとりあたり年に4~5個です。専門店も急増していて、2026年1月末の時点で全国900店舗以上、1年で200店舗以上も増えました。もう特別な娯楽ではなく、すっかり日常の買い物になっているのです。

大手メーカーのバンダイによれば、いまは「第5次ブーム」にあたるそうです。なぜここまで大きくなったのか。まずは、このビジネスがどこから来たのかをたどってみます。

カプセルトイが売っているのは「何が出るか分からない」こと

意外かもしれませんが、カプセルトイの仕組みそのものは、日本生まれではありません。原点は、19世紀の終わり、1880年代のアメリカに置かれた、ガムの自動販売機です。その後、1960年代に中身が透けて見える透明なカプセルが登場し、買う前に「何が入っているのだろう」とわくわくできるようになりました。

これが日本で本格的に始まったのが、1965年です。東京・台東区で創業したペニイ商会、いまの株式会社ペニイが、アメリカから自販機を輸入し、おもちゃ屋や駄菓子屋の店先に置いていきました。このペニイは、現在ではタカラトミーのグループ会社になっています。日本のカプセルトイの草分けが、いまも業界の中心にいるわけです。2025年は、この日本上陸からちょうど60周年にあたります。

草創期を支えたのが、重田哲夫さんと弟の重田龍三さんという兄弟でした。なかでも弟の龍三さんは、カプセルトイがどういう商売なのか、その本質を社員向けの教本に書き残しています。

それが、とても本質的なのです。普通の自動販売機は、買った人が望んだとおりのものが確実に出てきます。コーラを買ったのに別のジュースが出てきたら、お客さんは怒ってしまいます。でも、カプセルトイはまったく違う。お金を入れても、何が出てくるか分からない。普通の自販機が売っているのが「確実性」だとすれば、カプセルトイが売っているのは「ランダム性」、つまり、何が出るか分からないという体験そのものだ、というわけです。

これは、人間の心理の深いところを突いています。毎回かならず同じご褒美がもらえると分かっていると、人はだんだん飽きてきます。でも、もらえるかどうか分からないご褒美には、脳が強く反応し、ドーパミンが出て「次こそは」とつい続けてしまう。重田さんは、その仕組みを60年前に見抜いていたのです。

キン消しからコップのフチ子へ。ブームを重ねて「定番」に

そこからカプセルトイは、時代ごとの人気者と結びついて、何度もブームを繰り返してきました。

最初の大きな波は1980年代です。「キン肉マン消しゴム」、通称「キン消し」に、当時の男の子が熱中しました。第2次は1990年代で、彩色された精巧なフィギュアが登場し、おもちゃとしての出来栄えが上がります。第3次は2000年代、総合スーパーの玩具売り場などに広がって、買える場所が一気に増えました。第4次は2010年代、コップのフチに引っかける「コップのフチ子」に代表される、アイデアで勝負する商品が増え、大人の、とくに女性のファンを呼び込みました。

そして市場が急成長した2020年代の、いまが「第5次ブーム」です。価格も、昔は100円や200円が長く続きましたが、いまは300円から400円が主流です。「大人が払っても満足できる、手ごろなコレクション」へと、立ち位置が変わってきたのです。

この第5次ブームを強く後押ししているのが「推し活」です。アニメやゲームのキャラクター、サンリオやディズニー、アイドルやVTuberまで、ありとあらゆるものがカプセルになって出てきます。なかでも勢いがあるのが、傘やバッグに付ける小さなチャーム「めじるしアクセサリー」です。人気キャラクターのものは、店に並んで1時間ほどで売り切れたり、抽選販売になったりするほどの過熱ぶりだそうです。

カプセルトイが推し活と相性のいい理由は、いくつかあります。まず、手ごろな値段で推しのグッズが手に入ること。1個300円ほどなら、気軽に集め始められます。

そして、中身が選べないために、どうしても同じものがダブってしまう。実は、このダブりが人とのつながりを生むのです。フリマアプリのメルカリで売る人もいますが、それだけではありません。同じキャラクターやアイドルが好きな仲間どうしで、「これ、ダブったから交換しない?」と声をかけ合う。ダブりが、推し活コミュニティのなかの、コミュニケーションのきっかけになっているわけです。

手ごろに集められて、ダブっても無駄にならず、むしろ同じ推しを応援する仲間との交流につながる。だからこそ、推し活をする人にとって、カプセルトイは入り口としてぴったりなのです。こうして、一過性のブームを越えて、生活に根づいた定番になってきています。

担当者ひとりが、月に2~4個の新商品を生み出す

ここで、作り手側ものぞいてみましょう。なぜ、あれほど多様な商品が次々と生まれてくるのでしょうか。実は、作り方に秘密があります。

大手メーカーの企画チームでは、担当者が一人ひとり、企画から開発、生産、販売まで、ぜんぶ一人で担当します。ひとつの商品を6か月から8か月かけて作り上げ、しかも担当者ひとりにつき、月に2つから4つの新商品を生み出していくそうです。上の人が「これを作れ」と指示することは基本的になく、一人ひとりがクリエーターに近い存在で、数か月先のトレンドを自分で読んで形にしていきます。

しかも、カプセルトイは開発のサイクルが数か月と短いため、挑戦しやすい。まず小さく出してみて、売れたら増産すればいい。外しても、すぐ次の企画にいけます。何度でも打席に立てる環境があるからこそ、攻めた企画が生まれ、売り場のあの幅広い品ぞろえにつながっているのです。

本当の強みは「空間効率」。電源いらずで、すき間スペースがお金になる

では、なぜこれだけ多くの企業がカプセルトイに参入しているのでしょうか。理由をひとことで言えば、「空間効率」の高さです。

同じ広さの場所でどれだけ稼げるか。その効率が、ずば抜けて高いのです。ある設置会社の実績では、2段式のカプセルトイの機械は0.3畳ほどの広さで、1台あたり月に1万円ほど売れるといいます。1畳あたりに換算すると、月におよそ3万3000円です。

ただし、これはある一社の例で、しっかり稼ぐクレーンゲームなら1台あたりの売上はもっと大きくなります。カプセルトイの本当の強みは、売上の絶対額よりも、その「身軽さ」にあります。

なんといっても、カプセルトイの機械は基本的に電源がいりません。配線工事も不要です。だから、階段の下や店舗の入り口の脇、通路のすき間といった、これまで1円も生まなかった「すき間の空間」を、置くだけでお金に変えられます。商業施設にとって、これ以上ないほど都合のいい商材なのです。

収益の中身も見てみましょう。ここで挙げる数字は、あくまで一例で、商品やお店の条件によって変わります。その前提で見ると、商品の仕入れ値は売値のおよそ3割。残りから、場所を貸す店に払う設置手数料を引きます。この手数料は駅ナカや大型施設で売上の3割から4割と大きいのですが、それでも回転すれば利益が出る構造になっています。

オリックスも宝島社も参入。もう立派な「産業」です

これだけ儲かるとなると、お金も集まってきます。

象徴的だったのが、金融大手オリックスの動きです。報道によれば、2025年に「ガチャガチャの森」を運営するルルアークを、およそ100億円で買収したとされています。金融の会社が、カプセルトイの会社を100億円規模で買う。それだけカプセルトイが成長市場であり、安定して稼げると見られている、ということです。

流通でも、玩具卸し最大手のハピネットが専門の卸し会社を傘下に収め、「ガシャココ」という専門店も自社で展開しています。2026年3月末で全国154店舗。業績も好調で、2026年3月期は経常利益が前の期から31.2パーセント増えて157億円あまり、6期連続で過去最高益を更新する見通しです。メーカーの数も、いまや約70社に増えました。

異業種からの参入も続いています。興味深いのが、雑誌の付録で一時代をつくった出版社の宝島社です。2026年6月から初のカプセルトイを発売しました。第1弾は、平成のファッション誌『CUTiE』を再現した豆本と、2000年代に流行したブランド『Cher』のミニバッグのキーホルダー。どちらも1回500円です。付録づくりのノウハウが、そのまま活きる分野なのです。

市場が大きくなり、企業の買収が活発になり、異業種までもが乗り込んでくる。カプセルトイは、もう立派な「産業」になっています。300円の小さなカプセルの中には、ランダム性を売る発明の歴史も、空間効率というビジネスの仕組みも、ぎゅっと詰まっているのです。

<コムギコ:資本主義をハックしろ!!>
毎日ニュースを100本読むビジネス系VTuberのリサーチャーであるコムギ(comugi)が、日々の経済にまつわるニュースを解説するビデオポッドキャスト。本記事は2026年6月29日配信『カプセルトイという沼:なぜ人はガチャガチャを回すのか?』から抜粋してまとめたものです。

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