データにみる「結婚していない人」「結婚したくない人」の半世紀~TBSの専門家が分析「データからみえる今日の世相」~【調査情報デジタル】

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2026-07-04 08:30
データにみる「結婚していない人」「結婚したくない人」の半世紀~TBSの専門家が分析「データからみえる今日の世相」~【調査情報デジタル】

関東ではまだ梅雨ですが、この時期の言葉として「六月の花嫁」ジューンブライド(June bride)があります。辞書で調べると、その意味は以下のとおり(三省堂『新明解国語辞典』第八版)。

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六月に結婚式を行うこと。また、その(新郎と)新婦。〔六月に結婚すると幸福になれる、という西洋の言い伝えから〕

なぜ6月なのかには諸説あるようで、6月(June)の語源とされるローマ神話の女神ユノ(Juno、ユーノーとも)もその1つ。

ユノは「女性の生活全般、特に女性の結婚生活を司り、主婦と新生児の守護者」で、「古代イタリアでは農閑期の6月が慣例的に結婚の月であったため、この月に結婚の守護神ユノの名を冠し」たのが、ジューンブライドの由来とのこと(『世界女神大事典』p.329)。

しかし日本の6月は梅雨があって祝日がなく、結婚式をするのに良い時期とは言いにくい感じ。

ちなみに厚生労働省の人口動態統計によると、2024年の1年間の婚姻件数は全国で485,092件。そのうち、6月(31,847件)は9月(27,646件)、4月(29,979件)に続いて下から3番目(注1)。

ジューンブライドという割に6月の婚姻件数は多くなく、話の運びとしては出鼻をくじかれた感じ。では、データの分析からは何が見えてくるでしょうか……?

何十年も調べ続けた「結婚はしたくない」思い

本コラムでおなじみのTBS総合嗜好調査(注2)では、結婚に関するデータが毎年積み上がっています。

例えば、回答者が結婚しているかどうか(未既婚の別)のデータは、半世紀前の1975年から蓄積されていて非常に貴重。

この質問、初期は「既婚(離死別含む)」と「未婚」の二択でしたが、93年以降は前者を「現在配偶者がいる」と「結婚経験はあるが、現在配偶者はいない」に変更。逆に変更がない「未婚」は、切れ目なくデータの推移を追いかけることが出来ます。

他にも、様々な意見を選択肢として並べ、自分にあてはまるものや、自分の考えに近いものをいくつでも選んでもらう質問が複数あって、そこに結婚についての意見も含まれています。中でも以下の2つは、結婚や結婚式を比較的重く考える意見であり、これも長期間のデータあり。

●    結婚する以上は必ず結婚式はあげるべきだと思う
●    結婚したら、できるだけ離婚はさけるべきだと思う

変わったものでは、「何歳くらいまでに結婚したいか(既婚者は結婚したときの年齢)」という、回答者の未既婚の別で回答の意味が変わってくる質問もあり、これも長期間の時系列データです。

選択肢には「結婚はしたくない」というのもあり、これは未婚者・既婚者とも結婚忌避の意向を示すものとして解釈可能。ごくわずかながらこれを選ぶ既婚者も実際にいて、結婚というものの複雑さをうかがわせます。

増える未婚率と結婚忌避感

ここまで説明してきた時系列データを、東京地区在住の男女20~59歳で集計した結果は、次の折れ線グラフに示す通りです。 

まず、半世紀以上もの蓄積がある「回答者に占める未婚者の割合」は、70年代~90年代始めまで3割に届かなかったものが、90年代半ばから00年代にかけて3割前後で推移。その後は増加が加速して近年は4割超え。

これに並行した動きを見せるのが「結婚はしたくない」という結婚忌避感。最初に調査した81年の3%という数字が、00年代から10年代前半にかけて5~6%程度、10年代後半は9%程度とジリジリ上昇。20年に10%の大台を超えたら後はうなぎ登りで、25年は17%に達しました。

長期的に見て、未婚や結婚忌避感が増えるのとは対照に、数字を落とし続けているのが結婚や結婚式を重く考える意見。

「結婚する以上は必ず結婚式はあげるべきだと思う」という意見への賛同者は80年代前半に3割。そこから数字を下げ続け90年代半ばには2割割れ。その後00年代まで2割弱を維持したものの、10年代から再び減少傾向。25年では、「結婚に結婚式は必須」と考える人はわずか5%。

同様に「結婚したら、できるだけ離婚は避けるべきだと思う」も、初めて調べた87年の51%が最高値で、90年代半ばまでに3割強まで急減し以後横ばい。00年代後半~10年代前半に4割弱まで盛り返すものの、再び減少に転じて25年では22%。

思うに、昔は結婚するのが当たり前で、するからには式を挙げて末永く添い遂げるのも当たり前だったかも知れません。しかし、今どきそんな考えは廃れ気味で、結婚していない人の存在感が大きくなっています。

未婚には若さが影響、結婚忌避感には?

長期的に見て未婚や結婚忌避感が増えていますが、せっかくの時系列データなので、「コーホート分析」でもっと深掘ってみます。

コーホート(cohort、コウホート、コホートとも)は「共通の特徴を持った集団」のことで、ここでは同じ時期に生まれた「世代」を指します。

コーホート分析は、長期間に及ぶ時系列データの変動を「年齢」「時代」「コーホート」の3つの効果に分解して、どの効果がどれくらい、どのようにデータの変動に影響したかを示します(注3)。

今回は未婚と結婚忌避感のデータを男女別に分析し、それぞれの結果を3つの効果ごとに次の折れ線グラフでまとめました。いずれも、グラフの上に行くほど未婚率や結婚忌避率を高める(下に行くほど低める)ように作用していることを表しています。

年齢効果では、未婚(実線)は男女とも20代前半が最も多く、20代後半から30代にかけて減り続け、それ以降は横ばいになります。逆に結婚忌避感(点線)はどの年代でもほとんど差がなく、グラフは真っ平ら。
ここから「結婚していない」状態には若さが強く影響する反面、「結婚はしたくない」気持ちの強さに年の差はないと考えられそうです。

一方、時代効果は、男女とも未婚も結婚忌避感も、おおよそ同じ傾向に見えます。すなわち、90~95年に少し下方向だったものが、00年にやや上向いて15年まで横ばい、そして20年、25年と上昇傾向といった感じ。

結婚より自分のやりたいことを優先した80年代後半のバブル景気も崩壊し、90年代は「結婚を毛嫌いしなくてもいいかも」と少し思い直した様子。しかし、失われた10年が20年、30年、40年と延びるうちに「まず自分がどう生活するか」が重くなり、結婚の比重が下がったのかも、という解釈は想像(妄想?)が過ぎるでしょうか。

さらにコーホート効果では、全体として横ばいな印象の中で、未婚にところどころで鋭いピークが見られます(注4)。

まず、1936〜40年(昭和11〜15年)生まれの男性が大きく下向き。次いで、41〜45年(昭和16〜20年)生まれの女性が大きめの下向き。

この人たちが青年から壮年だったのが、55~73年(昭和30~48年)の高度経済成長期。社会が豊かになることを実感しながら、当たり前のこととして結婚したであろうことが、グラフから想像されます。

一方、91~95年(平成3~7年)生まれの男性が上向きで、96~00年(平成8~12年)生まれの女性がもっと大きく上向きでした。

この人たちは現在、男性が30代前半、女性が20代後半で、結婚するのが当たり前だった昔なら「結婚適齢期」と呼ばれる年頃。しかし、今、その世代であることが未婚率を高める方向に影響していて、「昔とは違う」ことを強く実感させられます。

グラフの上下の振れ幅などから3つの効果を互いに比較すると、男女とも未婚では年齢効果が他よりも大きいのに対し、結婚忌避感では年齢効果よりも時代効果が、次いでコーホート効果が大きいことが分かりました(注5)。

まとめてみると「未婚かどうか」には若さが強く影響する一方で、「結婚はしたくない」という思いの強弱は、いわゆる「結婚適齢期」の男女が居合わせる時代の状況・風潮によるところが大きいようです。

結婚というものは

ジューンブライドに引っかけて結婚の話題を取り上げましたが、どちらかというと「結婚しない」風潮が強まる様を確かめた感じです。

そもそも、赤の他人が生活を共にするのが結婚。一緒に暮らして初めて気づく相手の知られざる一面に驚いたり、怒ったり。衝突と和解を繰り返しながら、だんだん慣れて気にもならなくなったら、ようやく家族の間柄。こんなに手間と時間がかかるのに、必ず幸せになるとは限らないなら、よほどの何かがないと結婚なんかしないだろう、という気がします。

しかし、そこは深く考えず結婚するのが当たり前だった昔は、「男は仕事、女は家庭」という性別役割が強烈で、OLが寿退社で専業主婦になるのも当たり前。

その後、1985年の男女雇用機会均等法成立などを背景に、仕事をし続ける女性も増加。そうした女性が結婚や出産に臨んで「仕事か、家庭か」の選択を迫られる状況も増加。

昨今は、女性だけ選択を迫られるのはおかしいと、男性の育休取得も活発化。とはいえ、女性が(そして男性も)希望通りのワーク・ライフ・バランスを手にするには、まだまだ道のりが遠そう。

そんなこんなを目の当たりにして、いわゆる「結婚適齢期」の若者は「別に急いで結婚しなくていいんじゃない?」と思っているのでは。

未婚率を高める方向のコーホート効果が、91~95年生まれ男性で高いのもそうですが、96~00年生まれ女性でさらに高いのは、未だに女性が「仕事か、家庭か」の選択を迫られがちな状況の反映なのかも。

ジューンブライドも西洋の言い伝えでしたが、別の西洋のことわざを引いて締めくくりにします(大修館書店『世界ことわざ大事典』)。

●    あわてて結婚して、ゆっくり後悔すべし(イギリスのことわざ)
●    結婚するはよし、独身でありつづけるは、なおよし(ドイツのことわざ)

注1:届出月別の婚姻件数など人口動態統計の詳細な結果は、「政府統計の総合窓口(e-Stat)」で入手できます。ちなみに、2024年に最も婚姻件数が多かった月は3月(55,689件)で、次が11月(52,596件)でした。

注2:TBS総合嗜好調査は、衣食住から趣味レジャー、人物・企業から、ものの考え方や行動まで、ありとあらゆる領域の「好きなもの」を調べる質問紙調査です。TBSテレビが、東京地区(1975年以降)と阪神地区(1979年以降)で毎年10月に実施し、対象者年齢は、1975年が18~59歳、76~2004年が13~59歳、05~13年が13~69歳、14年以降は13~74歳となっています。

注3:分析の基となるコーホート表は「東京地区」「20~59歳の5歳刻み」「1985年から5年ごと」のデータで男女別に作成しました。また、本稿では朝野(2012)で紹介されている「パラメータの簡易推定法」で計算を行いました。

注4:コーホート効果で、男性の左端(1926~30年生まれ)の結婚忌避感もマイナス方向に突出しています。これがデータの少なさによる推定精度の劣化、いわゆる「端の効果」(朝野、2012)なのか、戦時中に思春期だった男性の結婚への憧れなのかは、もっと検討しないと何ともいえません。

注5:データの変動全体を100%としたとき、3つの効果が占める割合(パラメータの分散の構成比)は「年齢効果・時代効果・コーホート効果」の順に、「未婚」は男性が60%・13%・27%、女性が58%・16%・25%でした。一方、「結婚忌避感」は男性が23%・44%・34%、女性が18%・48%・34%でした。数値は小数第一位を四捨五入しており、合計が100%にならない場合があります。

引用・参考文献
●    松村一男・森雅子・沖田瑞穂(編)(2015)「ユノ(ユーノー)」『世界女神大事典』原書房 pp.329-330.
●    厚生労働省 人口動態調査.
●    柴田武・谷川俊太郎・矢川澄子(編)(1995)『世界ことわざ大事典』大修館書店.
●    朝野煕彦(2012)『マーケティング・リサーチ ―プロになるための7つのヒント』講談社.

〈執筆者略歴〉
江利川 滋(えりかわ・しげる)
1968年生。1996年TBS入社。
視聴率データ分析や生活者調査に長く従事。テレビ営業も経験しつつ、現在は法務・コンプライアンス方面を主務に、マーケティング&データ戦略局も兼務。

【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。

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