資材高と職人不足で揺れる住宅市場、地場工務店は生き残れるか

2026-07-16 21:00

国内の住宅市場では、資材価格の上昇や住宅取得費の高騰などを背景に、新設住宅着工戸数の減少が続いている。地域の工務店では、職人の高齢化や人材不足によって、受注があっても十分な施工体制を確保できないという課題も表面化している。

こうしたなか、住宅商品の企画や部材供給、顧客と地域工務店のマッチングを行うプラットフォーム「HiL(ハイル)」を展開するワールドハウジングクラブ株式会社に、工務店が抱える構造的な課題へのアプローチと、住宅価格が上昇する時代の住まい選びについて聞いた。

なぜ着工数が減る一方で、職人不足が深刻化しているのか

住宅市場では、市場全体の変化と、個々の工務店が抱える経営・人材面の課題が同時に進行している。

市場全体では、建築資材や人件費の上昇によって住宅価格が高騰する一方、生活者の所得の伸びが追いつかず、住宅を購入しにくい状況が生じている。新設住宅着工戸数も減少傾向にあり、特に初めて住宅を取得する層にとって、購入時の負担は重くなっている。

地域工務店が直面する課題の一つが、職人の不足と高齢化である。同社によると、工務店の間では、数年後に現在の発注先へ工事を依頼できなくなるのではないかという懸念が広がっているという。不足しているのは現場の職人だけではない。住宅の設計や施工管理を担う人材の確保も難しくなっており、受注前の提案から実際の施工まで、幅広い工程に影響が及び始めている。

住宅着工戸数が減っているからといって、職人不足が解消されるとは限らない。着工数の減少を上回るペースで担い手が減れば、地域によっては住宅の新築や維持管理を担う事業者そのものが不足する可能性もある。

ただし、こうした人材難や資材価格の上昇は、一企業や個々の工務店の努力だけで解決できる問題ではない。人口動態や地域経済、職人の育成環境などとも関係する中長期的な課題である。

加盟金やロイヤリティに依存しない工務店支援の仕組み

こうした工務店の負担を軽減する仕組みとして、同社が展開しているのが高性能住宅のプラットフォーム「HiL」である。

同社の説明によると、HiLは一般的な住宅フランチャイズとは異なり、工務店から多額の加盟金や継続的なロイヤリティを受け取る仕組みではない。HiLが企画した住宅に関心を持った顧客を、対象地域の登録工務店に紹介し、実際の施工を地域の工務店が担う。

住宅商品には、建築家などが設計した複数のプランが用意されている。工務店は一棟ごとにゼロから商品を企画する負担を抑えながら、耐震等級3や断熱性能「HEAT20 G2」を基準とする住宅を提案できるという。施工面では、YKK AP株式会社と共同開発した「未来パネル」を活用している。構造面材、断熱材、高性能樹脂窓などを工場で一体化したパネルユニットで、現場作業の一部を工場生産へ移す仕組みだ。

同社は、これによって現場作業の省力化や工期の短縮が見込めるほか、施工者の経験によって生じやすい品質のばらつきを抑えられるとしている。住宅商品の企画を本部側が担い、現場の工程を一部標準化することで、設計人材や職人が不足する工務店の負担軽減を目指している。一方、工場生産やパネル輸送を前提とする以上、物流費や燃料費の上昇による影響は避けられない。現場作業を減らす効果と、製造・輸送にかかるコストとのバランスを継続的に検証する必要がある。

注文住宅から「企画型」へ、営業や設計はどう変わるのか

HiLを導入した工務店からは、営業や設計業務の効率化につながったとの声が寄せられているという。

顧客の要望を聞き、一から図面や見積もりを作成する注文住宅とは異なり、企画型住宅では、あらかじめデザインや性能、価格帯の目安が示されている。顧客が完成後の住まいをイメージしやすく、工務店側も提案や見積もりに必要な時間を抑えられる。

同社によると、こうした仕組みによって商談から成約までの効率が改善した事例もあるという。経験の浅い営業担当者でも、本部が用意した販促資料や研修を利用することで、住宅の性能や特徴を説明しやすくなるとしている。

実際に住宅を建てた施主からは、断熱性や光熱費に関する評価も寄せられている。同社が紹介する事例では、以前の住まいで冬場の結露に悩んでいた施主から、転居後は一般的な家庭用エアコンでも室内の温度差が小さくなり、光熱費も以前の賃貸住宅より抑えられたとの声があったという。

ただし、住宅の光熱費は、建物の広さや家族構成、設備、地域の気候、生活習慣などによって大きく変わる。個別の事例を、すべての住宅で同様の効果が得られることを示すものとして捉えることはできない。

企画型住宅には、価格や性能を把握しやすい利点がある一方、完全な注文住宅と比べて、間取りや仕様の変更に制約が生じやすい。同社は今後、間取りや仕上げの選択肢を増やし、企画型の効率性を維持しながら自由度を高める新たな仕組みも用意するという。

工務店の役割は、地域の住宅を守る「家守り」へ

住宅部材の工場生産や設計の標準化が進めば、地域工務店の役割も変化する可能性がある。

従来は、設計から部材の手配、施工までを自社で一貫して担うことが工務店の強みとされてきた。今後は、標準化された住宅商品を地域の条件に合わせて適切に施工し、完成後の点検や修繕を長期にわたって担う「家守り」としての役割が、より重要になると同社はみている。

もっとも、部材や設計が標準化されても、住宅の品質が自動的に保証されるわけではない。実際に施工し、完成後のメンテナンスを行うのは地域の工務店である。

工場で生産されたパネルを使用しても、現場での接合や防水、気密処理、施工管理が不十分であれば、設計上の性能を十分に発揮できない可能性がある。同社も、工務店がプラットフォームに依存するのではなく、施工管理能力を維持・向上させる必要があると説明する。

住宅を検討する生活者に対して、同社は、初期費用だけを優先して断熱性や耐震性といった基本性能を下げないことが重要だと指摘する。住宅価格が上昇するなかでは、目に見えやすい設備や内装と、長期的な安全性や光熱費に関わる性能のどちらに予算を配分するかという判断が求められる。

同社は「HEAT20 G2」や「耐震等級3」を一つの目安として挙げているが、住宅に必要な性能は、建設地域や敷地条件、予算、家族構成などによっても異なる。性能表示だけでなく、設計意図や施工体制、完成後の保証・点検内容まで確認する必要がある。

住宅会社や工務店を選ぶ際には、企業の知名度や「完全注文住宅」といった形式だけで判断するのではなく、コストの内訳、住宅性能、施工管理、引き渡し後の対応を含めて比較することが重要になる。

HiLが提示する仕組みは、設計や営業、施工の一部を標準化し、地域工務店の負担を軽減しようとするものだ。一方、その持続性を判断するには、登録工務店の増加数だけでなく、施工品質の維持、工務店の収益性、住宅購入者の満足度、長期的なメンテナンス実績などを継続的に確認する必要がある。

【取材協力】

ワールドハウジングクラブ株式会社  
https://www.worldhousingclub.com/

HiL(ハイル)
https://hil.co.jp/

Youtubeチャンネル
https://www.youtube.com/@hil2809

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