「クロマグロ」豊漁なのに安くならないワケ 「漁獲枠」増えないと… 他の魚が“不漁・高騰”の懸念も【Nスタ解説】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-07-16 21:59

黒いダイヤモンドとも呼ばれる高級魚「クロマグロ」は、日本国内で豊漁が続いています。
そうした中、漁獲枠の拡大をかけて臨んだ国際会議では、合意を得ることができませんでした。折り合いがつかなかったワケとは?

【写真で見る】合意に至らず… 水産庁の担当者「強い憤りを感じる」

クロマグロ「漁獲枠増えず」 水産現場や生態系への影響懸念

高柳光希キャスター:
豊漁が続き、安くなると期待されていたクロマグロが、手に届きやすくなる日は来るのでしょうか。

水産庁のデータによると、太平洋のクロマグロは、最も少なかった2010年の約1万2000トンから増え続け、2022年には約12倍の約14万4000トンまで増加しました。その後も増加傾向にあるということです。

TBS報道局経済部 農水省・水産庁担当 和泉砂絵 記者:
北海道で、魚の定置網漁を行っている現場を取材しました。

狙っているのは鮭などマグロに比べて小さな魚ですが、現場で3つの網を引き上げたところ、5匹のクロマグロが網にかかっていました。

1匹10万円ほどになるという大きなクロマグロでしたが、すでに漁獲枠がいっぱいになっているため、全て放流せざるを得ない状況です。

さらにクロマグロが定置網に入ると、▼マグロが暴れて網を突き破り、狙っている魚が逃げてしまったり、▼網の中の魚を追い回して他の魚に傷がつき、市場価値がなくなってしまうという被害も出ているといいます。

近畿大学の有路昌彦教授によると、マグロは“海の生態系のトップ”なので「マグロが増えることでエサとなる魚(サバ・イカなど)が不漁・高騰の可能性も考えられる」ということです。

クロマグロが増えた背景にあるのが、国際的な取り決めによる漁獲枠です。

漁獲量を制限し、資源量が増えたことに加え、海水温が上がったことでマグロにとって日本近海の居心地が良くなり、エサとなる小魚が沿岸に寄ってきているともいわれています。

クロマグロ「漁獲枠」 最終日にメキシコが“手のひら返し”で合意ならず

高柳キャスター:
現状を打開できると期待されたのが、7月8日から長崎で開催された「新しい漁獲ルールを決める」国際会議です。年1回開催し、周辺12の国・地域が参加します。

日本が目指したのは、▼太平洋西側の漁獲枠を25%上げるということです。

クロマグロの漁獲バランスは、資源状況などから太平洋の西側と東側で西8:東2となっています。

しかし、メキシコは最終会議で漁獲バランスに反対し、合意に至らず会議が閉幕してしまいました。

なぜメキシコの反対だけで合意に至らなかったのでしょうか?

TBS報道局経済部 和泉記者:
この会議は基本的に全会一致が原則になっているので、メキシコが反対すれば、合意することができないルールになっています。

元々はアメリカが、漁獲バランスを西7:東3にするべきだと議論を展開していたため、アメリカが反発するのではないかという目算が強くありました。

しかし、実際には前日までは議論が収束しかけていたところに、最終日にメキシコが手のひらを返すような形で反対し、折り合いをつけることが難しかったということです。

水産庁「正直よくわからない」 メキシコ国内で議論まとまっていなかった可能性も

フリーアナウンサー・文筆家 住吉美紀さん:
メキシコは、なぜ反対したのでしょうか?

TBS報道局経済部 和泉記者:
メキシコ側は「本国から強い指示があった」と説明しました。

実際にどのような説明があったのかは水産庁の担当者も「正直よくわからない」と話しています。前日と最終日の間に“何かが”あったのだろうと考えられます。

近畿大学の有路教授は「メキシコ国内で十分に議論がまとまっていなかった可能性もある」としています。

今回の会議では、6年間有効な長期的なルールを議論したので、漁獲量・輸出量の多い自国にとって不利な条件には合意しがたい部分もあり、国内で揉みきれていなかった可能性を指摘しています。

水産庁「できるだけ早く再協議する機会を」 今後のスケジュールは?

高柳キャスター:
日本では水産現場だけではなく、飲食現場や消費者も良い変化を期待していただけに、合意に至らなかったのは痛手だといえそうです。

水産庁は、あらゆる可能性を探るとし、「できるだけ早く関係国で再協議する機会をつくりたい」ということです。

今後のスケジュールは以下のようになっています。

▼8月24日~9月4日 東側の全体会議(年1回)
▼11月30日~12月4日 日本含む西側の全体会議(年1回)

ここでの合意は考えられるのでしょうか。

TBS報道局経済部 和泉記者:
ないとは言い切れないというのが正直なところです。

というのも今回の国際会議で大きな枠組みを合意した上で、細かいことを決めていくのが東側・西側の2つの会議です。

1か月後の次の会議までに、何かしら合意しなければならないため、難しい状況になっていると考えられます。

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<プロフィール>
和泉砂絵  
TBS報道局経済部 農水省・水産庁担当
北海道出身 マグロはトロより赤身派

住吉美紀さん
フリーアナウンサー・文筆家
NHKアナウンサーとして人気番組を担当 2011年フリー転身
不妊治療など人生を赤裸々に綴ったエッセイ「50歳の棚卸し」が話題

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