「東京バリアフリービーチ2026」取材報告

「じゃあ海行こうよ」から始まった活動
今回は「東京バリアフリービーチ2026」の様子を取材報告します。
「バリアフリービーチ」とは、車いすのまま砂浜や波打ち際まで移動できるようにビーチに専用のマットが敷かれ、障害がある人とその家族が安心して海水浴を楽しめるように水陸両用車いすを備えた海辺のことをいいます。
8月初旬に東京都の葛西海浜公園の海水浴場で行われたのが、きょう紹介する「東京バリアフリービーチ2026」です。運営している「NPO法人 湘南バリアフリーツアーセンター」の理事長・榊原正博さんにバリアフリービーチを始めたいきさつを聞きました。
車いすの友達がいたんです。鎌倉で活動していたので、鶴岡八幡宮とか観光をしながら海をちょうど通った時に「海は眺めるもんだよね」と言われたので、ずいぶん寂しいこと言うじゃないかと思って。「じゃあ海行こうよ。ベニヤ板とか何でも敷いてやるから」といってスタートしたのが2014年です。(榊原正博さん)
「モビマット」「モビチェア」が大活躍
現在は、専用の強い生地を使った「モビマット」という、長いゴザのようなマットを砂浜に敷くことで、波打ち際までスムーズな車いす移動が可能になりました。そして砂浜には、車いすや介助者が入れる広さの着替え用テントも用意されています。
いざ海に入る際には水陸両用車いすの「モビチェア」に乗り換えるので普段の車いすが海水に濡れたりすることはありません。このモビチェアは、肘掛けと車輪が水に浮く素材で作られていて、背もたれや体を固定するベルトの調整が可能です。
車いすを利用する当事者の一人で都内から来た9歳の女の子は、病気のため言葉でお話することはできませんが、3人のボランティアさんと一緒に全身で海水浴を楽しんでいました。表情や仕草から楽しそうな様子は伝わってきます。女の子を介助したボランティアの方々も「車いすだとなかなか海に入る機会がないですが、喜びの声とか笑顔が見られるので嬉しい」と話していました。
多彩なボランティア陣がサポート
そしてボランティア陣はFacebook上で募集したこともあり、バラエティに富んでいます。普段は一般事務をしている方、リハビリなどで障害の事をよく知っている理学療法士、海での遊び方に詳しいサーファーなど様々です。また、気管切開をしている方に付くのはベテランの看護師さんだったりします。
またビーチには医者もいるので、当事者に加えてボランティア自身の安全・安心まで確保して運営されています。さらに保護者も付きっきりにならなくてもよいので、同行した兄弟も一緒にイカダのようなビーチボートに乗って遊ぶこともできます。
当たり前に海に来られる権利を
榊原さんが車いすの友達のために砂浜にベニヤ板を敷いた日から12年が経ち、離島なども含め全国各地でこのバリアフリービーチは広がってきました。車いすで「眺める海」から「体験する海」へと変わったわけですが、運営する榊原さんはこれを当たり前のことにしたいといいます。
当たり前になってほしいんですね。特別な場所にしたくないんです。だからきょうは特に何もないじゃないですか。今までは「バリアフリービーチ」っていうノボリを立てていたんですけれど、もう今年からは無しで。海に来るのは当たり前なんですよ。海に来られる権利を彼らは持っているんです。その権利を実行できるかできないかの話なので、この環境が世界では当たり前なんですね。それをもっと知ってほしいなと思います。もう一つは、医療関係者に「あなたはこれしかできませんよ」と言うのか、「あなたはここまでできますよ」と言うのかで当事者と家族の気持ちは全く違うので、ぜひこういった活動を知っていただきたいと思っています。(榊原正博さん)
今回の取材で私も、決して特別に区切られた場所じゃないなと感じたのが、車いすのためのマットの上がとても歩きやすいので、一般のベビーカーなども普通に通っていたという点です。車いすに優しいということは、ベビーカーにも優しいですし、例えば台車をひく宅配業者にも、誰にとっても優しいということです。
この日も休日で、多くの海水浴客でにぎわっていた葛西の海水浴場ですが、バリアフリービーチのための特別な看板やエリアの設定はされていないので誰もが等しく、同じ海を体験できるビーチとなっていました。
(TBSラジオ「人権TODAY」担当 TBSラジオキャスター・加藤奈央)