なぜ“合流断念”が“分裂”に…中道改革連合の決断のウラに同じフロアの“異例”別会合 落選議員の本音と有権者1000万票の行方【edge23】

中道改革連合が、事実上の分裂へと急転直下の動きを見せた。数日前まで議論されていた立憲民主党、公明党との「3党合流の見送り」から、なぜ党そのものの分裂へと発展したのか。
その裏側では、同じ政党に属する議員たちが、わずか数10mの距離で別々に会合を開くという異様な光景が繰り広げられていた。分裂に至るまでの内幕に加え、今後の野党、ひいては日本の政局全体に与える影響を、TBS政治部・野党担当の奥村康平記者が解説する。
なぜ?3党の「合流見送り」が“中道分裂”に 中道関係者「支持母体の意向強い」
3党合流の見送りが報じられてからわずか数日、中道は事実上“分裂”の見通しとなった。奥村記者によると、8月28日(金)の夜から“分裂”という言葉が聞こえ始めたといい、31日(月)には「党を新たな形態にする」と発表された。事態は週末を挟んで急激に動いたことになる。
3党が合流しなかったことが、なぜ中道の分裂にまで繋がったのか。そこには、議員同士の仲違いといった単純な理由ではない構造的な問題があった。
取材したある公明出身の中道議員は「現状維持では中道勢力拡大の展望は望めない」と閉塞感を語り、別の中道関係者は「公明の支持母体の意向が強い」と指摘した。
議員間の関係性が良好でも、党を取り巻く状況や支持母体の意向が「現状維持」を許さなかった結果として、急転直下の分裂劇となったのだと奥村記者は指摘する。
午前11時“異様な別会合” 近距離なのに対照的だった両者の空気
“分裂”が発表された8月31日(月)には、立て続けに会合が行われた。
奥村記者が特に大きな山場だとみているのは、午前11時からの“母体別”会合。衆議院第一議員会館の地下1階、同じフロアのわずか2部屋挟んだ距離にある2つの会議室で、立憲出身者と公明出身者が別々に集まるという異例の事態となった。
もともと中道は結党以来、「同じ党になったのだから」と出身母体を強調されることを嫌う空気が強かっただけに、この光景は異様だったと奥村記者は振り返る。
さらに、両者の雰囲気は対照的だったという。
立憲出身者の会合が1時間弱で終わり、出てきた議員たちは心なしか“ホッとした”様子で、記者にも笑顔を見せたのに対し、公明出身者の会合は1時間40分程度と長かった。
公明側の会議室に人が出入りする際、扉の隙間から奥村記者が目にしたのは一様に下を向く出席者の姿。そして、出てきた議員たちには重苦しい空気が漂っていたという。
奥村記者は、合流に前向きな議員が多かった公明側にとって「合流が完全に不可能になったという事実を突きつけられた場だったのかもしれない」と振り返る。
会合後、立憲出身の中道議員を取材すると、「自分の所属政党がなくなるのは複雑だ」という声が聞かれた。一方で、ある関係者は「正確な現状認識もなく戦略もなくここまで来てしまった。こうなるのは当然では」と厳しい見方を示した。
「塊は整理されている方がいい」としつつ… 歯切れの悪い小川代表
事実上の分裂という方向に舵を切った中道だが、具体的な形はまだ定まっていない。
31日の会談後、小川淳也代表は「4つよりは3つ、3つよりは2つ、5つよりは4つ。塊はできる限り整理されている方がいいという前提で」「新たな形態の構築に全力を挙げたい」と述べたが、歯切れは悪く、今後の道筋は不透明なままだ。
この状況に対し、共産党の小池晃書記局長の評価は“辛辣”だった。
「重要な政策上の違いがあったにもかかわらず、そういうことを置き去りにして合流政党を作ったことに根本的な原因がある。その破綻だと思う」と切り捨てている。
“新たな形態”は分党か?分派か? 2つの選択肢には課題も
小川代表の言う新たな形態として考えられるのは、主に「分党」と「分派」の二つの選択肢だ。
「分党」は、中道という政党を完全に解体し、複数の新しい政党に分かれる形である。
しかし、これには法律上の壁が存在する。党が保有する資金や人員、さらには選挙などで生じた借金をどう分けるのか。検討課題が多い上に、実現までに時間を要するという。
一方の「分派」は、中道という政党は存続させたまま、一部の議員が離党して新たなグループを作る形を指す。この場合、離党した側が「中道を抜けた」という見え方になる可能性がある。
「離党までして集まったのに…」揺れる“落選議員”たちのホンネ
こうした中、最も“はしごをはずされた”形となっているのが、2月の衆院選で落選し、次期選挙に向けて各地で「総支部長」として活動する人々だ。
真野哲・前衆院議員(立憲出身)は奥村記者の取材に対し、「合流に期待していた人はかなりいると思うが、その声は届いていないと思う。私たちは離党までして集まったのに」と無力感を語る。
さらに「中道から初めて選挙に出た人は、戻る政党がないということも考えてほしい」と慮った。
今後について聞くと、「非自民の思想を持ち野党を結束して“政権を変えたい”という人の受け皿がない。有権者が不利益を被るだけ」と、野党の現状に危機感を示した。
同じく総支部長を務める水沼秀幸・前衆院議員(立憲出身)も、「中道勢力を結集して、緊張感のある政治を進めていければ」と語った。
また、落選者は経済的にも厳しい現実に直面している。執行部からは「形態が変わっても資金は継続できるようにしたい」との回答があったものの、具体的な見通しは立っていないという。
野党“多弱化”に自民は? 1000万票「中道への期待」どう応える
中道の事実上の分裂は、今後の国会、特に野党の勢力図に大きな影響を及ぼす。
現在、衆議院で49議席を持つ中道は野党第一会派だが、分裂すればその座を失う。仮に立憲系(21人)と公明系(28人)に分かれた場合、国民民主党(28議席)が野党第一会派に並ぶことになる。
そうなれば、同規模の野党が乱立し、意見集約はますます困難になる恐れがあると、奥村記者は指摘する。
とはいえ、政府・与党側の受け止めは複雑だ。
野党勢力を分断しやすくなる一方で、ある自民党のベテラン議員からは「3党がこんな状況で意見もまとまらないだろう。どうするんだよ本当に」と、むしろ国会運営の先行きを懸念する声があがった。誰が野党内の意見をまとめる旗振り役となるのか。誰と話をすれば物事がまとまるのか。与党から見えづらくなり、かえって国会運営が難しくなるという側面があるからだ。
また、ある自民党幹部は「高市政権後に与党に戻りたいから、公明は今いかに与党に貸しを作れるか考えている」と分析していて、公明の動きに注視していることがうかがえる。
この先、野党がより小さくバラバラになる未来が現実味を帯びている。しかし、忘れてはならないのは有権者の存在だ。
前回の衆院選・比例代表で、中道は1043万票あまりを獲得した。これは、自民が獲得した票数の約半分にあたる数字であり、自民に対抗する勢力としての大きな期待が寄せられていたことの表れではないだろうか。
この1000万票を超える有権者の信に対し、中道がどう答えていくのか。与党への監視機能を果たすべき野党のあり方が、今問われている。