猫が『物に当たらずに歩ける』4つの理由 狭い隙間でもスイスイ歩けるのはなぜ?

2026-10-25 17:00

陶芸家の飼い猫は、台の上に所狭しと並べられている陶芸作品の隙間を、足元も見ずにスイスイと軽やかに歩きます。陶器を落とすこともなければ、足を陶器にコツンとぶつけることもありません。猫は、ろくに足元も見ていないのに、なぜ物に当たらずにスイスイと歩けるのでしょうか。その秘密に迫ってみたいと思います。

猫が物に当たらずに歩ける理由

陶芸作家と猫

猫が物に当たらずに歩ける理由として、まずはその身体能力を見ていきましょう。

1.精度の高いセンサー

猫のウィスカーパッド(鼻と口の間のωのような形をしている部分)や両眼の上、両頬、あごにはとても敏感なヒゲ(触毛)が生えていて、このヒゲで、猫は自分が通り抜けられる空間を見分けていることなどが広く知られています。

実は、猫の前足の足首にあたる部分にも、顔周りのヒゲと同じように敏感な触毛が生えています。この触毛も、前足の周辺にある物などを感知するセンサーとして働き、足元の状況把握に役立っていると考えられています。

2.安全な場所に足を着地させる猫特有の歩き方

雪の上を犬が歩くと、2本の足跡が残りますが、猫だと1本の足跡しか残らないことがあります。しかも、足が着地した跡のずれもあまりなく、前足と後ろ足の跡がほぼ重なっていることが多いです。

これは、猫には、前足を着地したのとほぼ同じ場所に後ろ足を着地させるという、特殊な歩き方があるためです。前足の触毛を使って安全な場所に前足を着地させれば、後ろ足も自然と同じ安全な場所に着地するため、たとえドミノのように細かいものがたくさん並べられていても、狭い隙間を縫うようにスイスイと歩けるというわけなのです。

3.前足の動きを記憶して障害物を回避する後ろ足

人は、目で見た情報を記憶します。同じように、猫も視覚情報を記憶します。しかし、猫の記憶はこれだけにとどまりません。2006年に、カナダのアルバータ大学の研究チームが行った実験により、猫には、前足でまたいだ障害物の位置や高さを記憶して、後ろ足の動きに利用する能力があることがわかりました。

実験の詳細な解説は省きますが、猫に障害物を前足でまたがせた後に障害物を取り除き、数分間その場に留めさせた後、再び歩かせると、後ろ足が取り除かれた障害物をまたぐように高く持ち上げられたというものです。

猫は、視覚記憶とこの障害物に関する記憶の両方を組み合わせることで、障害物がたくさん並んでいる場所も、物に当たらずにスイスイと通り抜けられるのではないかと考えられています。

4.よろけず歩ける平衡感覚

どんなに精巧なセンサーを持ち、安全な場所のみに確実に足を着地させ、障害物を避けられるように足を持ち上げられたとしても、場合によっては体がよろけてしまい、結局周囲の障害物にぶつかったり、倒したり、自分自身が転んでしまったりすることもあるでしょう。

しかし、猫の前庭器官は高度に発達しているため、高い精度で体の傾きや回転、スピードの変化を感知できます。この能力により、猫の平衡感覚はとても優れており、障害物で狭い隙間しか残っていないような場所でもバランスを崩さずに歩けるのです。

猫はなぜ足元を見ずに物に当たらず歩く必要があるのか

猫が一直線の足跡になるように歩く様子

びっしりと並べられたドミノの隙間でも、猫はドミノを倒さず軽やかに歩ける理由を、身体能力の面から見てきました。では、なぜ猫にこの能力が必要となったのかという観点でも考えてみましょう。

野生の環境で暮らしていた猫の祖先は、自らの力で狩りをしなければ、生きていくことができませんでした。そのため、狩りの能力は、猫の祖先にとってとても大切なものでした。猫の祖先の狩りの手法は、現在の猫の狩りの手法とほぼ同じだったと考えて良いでしょう。

獲物を見つけたら獲物にそっと近づき、ある程度の距離まで来たら物陰に身を隠してじっと待ち、近づいてきた獲物にパッと飛びかかって捕まえるという方式です。猫が獲物にそっと近づこうとする際、視線は獲物に釘付けとなり、足元を見なくても物音がするようなものを踏まずに近づいていく必要があったのだろうことは、容易に想像できます。

これまでご紹介してきた猫の高い身体能力は、獲物から視線を外さず、物音を立てずに接近する際にも役立ったのでしょう。触毛センサーや安全な場所への足の着地、前足が乗り越えた障害物の記憶、優れた平衡感覚などを組み合わせることは、猫の祖先にとって、狩りを成功させるための大きな利点になったと考えられます。

まとめ

狭い棚の上で鉢植えを避けて歩く猫

猫が、たくさんの障害物が並んでいるような場所でも、足元をろくに見もせず、障害物に当たらずスイスイと歩ける理由を見てきました。我が家の猫たちも、ローキャビネットの上に並べてある写真立てや小型スピーカーなどに当たったり倒したりせずに、器用に歩いています。

しかし、忘れてならないのは、猫は「倒したいものは倒す」ということです。もしあなたの猫が、棚の上のものを倒したり下に落としたりしても、それは身体能力が劣っているからではありません。きっとあまりの退屈さで、物を落として遊んでいるだけなのでしょう。

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