古くから歌や詩、物語など多くの形で表現されてきた「恋愛」。
そして、もちろん四字熟語にも恋愛にまつわる言葉があります。
そこでここでは、シチュエーション別の恋愛に関連する四字熟語について解説します。
「恋患い」をあらわす四字熟語
恋をしているからこそ悩み苦しんでいる状況を「恋患い」といいます。
この恋患いにまつわる四字熟語を見ていきましょう。
愛屋及烏
「愛屋及烏(あいおくきゅうう)」は、好きな人に関わるものすべてを好きになることを意味します。
恋に陥り、その好きな人の家の屋根で休む鳥すらも愛おしくなってくる、そんな状況をあらわして生まれた言葉です。
そこから、偏愛や溺愛に盲愛という意味で用いられる事もあります。
昼想夜夢
「昼想夜夢(ちゅうそうやむ)」の意味は、好きな人のことをいつも思い続けていること。
恋した人のことを昼間の間ずっと考えていて、夜になったらその人のことを夢で見る、つまり想い人のことを一日中考えている様子をあらわしています。
寤寐思服
「寤寐思服(ごびしふく)」は、好きな人のことが寝ても覚めても忘れられない、その人のことを特別深く思っている様子をあらわしています。
寤も寐もどちらも日常的に用いる漢字ではありませんから、まず見慣れない字でしょう。
「寤」は起床することを、「寐」は就寝することを意味します。
「思服」がいつも思っていることを意味しますので、寝ても起きても(好きになった人のことを)考えているということになります。
「深い両思い」をあらわす四字熟語
両想いの状態、つまりお互いに相手のことを深く思っている状態にまつわる四字熟語について見ていきましょう。
落花流水
「落花流水(らっかりゅうすい)」とは、男女の気持ちが通じ合うことの例えとして使用される四字熟語です。
ぽとりと落ちた花というのは、流水に浮かびたいものだと考えている。
それに対して、流水はせっかく流れるなら花でも浮かべていきたいものだと考えている、という考えが男女の情に結びついて生まれた言葉とされます。
また、この落花流水というのは物事が衰退していく様子や過ぎゆく時という意味として用いられることもあります。
比翼連理
「比翼連理(ひよくれんり)」とは、夫婦などの男女の愛情が共に深く、仲が良いことを意味する熟語です。
「比翼」は、「比翼の鳥」という古代中国に伝わる伝説上の生き物のことで、その姿は隻眼隻翼とされます。
その姿ゆえに、雄と雌が力を合わせないと飛翔することもできないとされます。
「連理」は、古代中国に伝わる「連理の枝」という伝説上の植物のことです。
その木は並んだ2つの木が枝が互いに絡み合うように伸び、根も絡むように生長することで1つに連なる木となっているのだとか。
どちらも片方では生きていけない存在ということで、深く思い合う男女という意味合いで使用されます。
なお、この言葉は「楊貴妃」と唐の皇帝「玄宗」のことを白居易という人物が詠んだ「長恨歌」という詩の中に出てくる一節から生まれました。
鴛鴦之契
「鴛鴦之契(えんおうのちぎり)」は、夫婦の絆がとても堅牢であることを意味します。
「鴛鴦」というのは、オシドリのつがいのことです。
おしどり夫婦という言葉があるくらい、夫婦仲の良さの例えにあげられる鳥です。
鴛鴦之契は、いつまでも夫婦で仲良く暮らす、という約束の意味で用いられる事もあります。
投瓜得瓊
「投瓜得瓊(とうかとくけい)」とは、男女が愛情の誓いの品をお互いに贈ることをあらわしています。
かつて、古代中国では女性が木瓜を投げて求愛し、男性は宝玉を贈って応じるという風習があったとされます。
この風習から生まれたのが、「投瓜得瓊」という熟語なのです。
「失恋した状況」をあらわす四字熟語
最後に、恋愛の中でも嬉しくない状況、「失恋」にまつわる四字熟語について見てみましょう。
人面桃花
「人面桃花(じんめんとうか)」とは、一度美しい女性に会った場所だからと、もう一度その場所を訪れてもその女性に会えるわけではないという意味です。
ある時、可憐な桃の花の下で美しい女性に出会った詩人の「崔護(さいご)」。
たった一度の顔を見ただけでしたが、崔護はその女性のことが忘れられなくなってしまいました。
そこで翌年、再びその女性に会おうと桃の木に向かいました。
しかし、当然ながら約束したわけでもないので崔護が恋焦がれた女性と会うことはできませんでした。
この物語、孟棨という人物がまとめたとされる「本事詩」という著作の中にある逸話のひとつで、この物語から「人面桃花」という熟語は生まれたとされます。
団雪之扇
「団雪之扇(だんせつのおうぎ)」とは、これまで受けていた男性からの愛を失った女性や顧みられることの無くなった女性のことを意味します。
前漢の皇帝・成帝からの寵愛を失った女性が、自分のことを秋になり涼しくなったことで不要になった扇に例えた事から生まれた言葉とされます。
瓶墜簪折
「瓶墜簪折(へいついしんせつ)」は、別れてしまった男女が二度と会うことがないことを意味します。
「瓶墜」は井戸の釣瓶(つるべ)が落ちてしまい二度と引き上げることができない様子。
「簪折」は、髪飾りのかんざしが折れて二度と髪飾りとして使えない様子から来ています。
まとめ
今回は、恋愛にまつわる、片思いである「恋患い」、結ばれた「両思い」、そして「失恋」と3つの要素に分けてそれぞれの四字熟語について見ていきました。
古代中国の時代から、多くの恋愛にまつわる話や言葉があったようです。