5月の第3週の金・土・日に東京・浅草で執り行われる「浅草神社例大祭」。
このお祭りは「三社祭」とも呼ばれますが、この「三社」とはなにをあらわしているのでしょうか?
そこでここでは、「三社祭」について解説していきます。
三社祭の「三社」とは
浅草神社例大祭の別称である三社祭。
この「三社」がなにをあらわしているのかを見ていきましょう。
「三社」は浅草神社の別称
三社祭の「三社」自体が浅草神社を指す別の名称、つまり別称となります。
この「三社」とは、浅草神社のお隣『浅草寺』の創立に関わったとされる3人の人物のことです。
檜前浜成(ひのくまのはまなり)・竹成(たけなり)兄弟と、その主人であった土師真中知(はじのなかとも)のこととされています。
浅草寺の始まりと浅草神社の関係
それは飛鳥時代のこと、漁師だった檜前兄弟が神田川で漁をしていたところ、魚こそとれませんでしたが仏像が網にかかっていました。
この仏像は、何度川に戻しても必ず網に入ってきました。
そこで兄弟はこの仏像を持ち帰ることにしました。
拾い上げたこの仏像を主人である土師真中知に見せたところ、これはありがたい観音像だとして土師真中知は出家し自宅を寺にしました。
そうして、この観音像を本尊としたのが浅草寺の始まりだとされています。
そして後年、土師真中知の子孫の夢に浅草寺の本尊とした観世音菩薩が現れ、檜前浜成・竹成兄弟と土師真中知の3人を祀るように伝えました。
この宣託に従って、檜前浜成命・檜前武成命・土師真中知命の三柱を祀るため建立されたのが「浅草神社」です。
後々になり明治時代に発せられた神仏分離令により、明治元年に名前が「三社明神社」と一時変更されたこともあります。
これらの事情から、「三社様」などと呼ばれることもあります。
「三社祭」にまつわる豆知識
一般的に「三社祭」の名前で知られますが、実はこれは通称で正式名称ではありません。
正式名称は「浅草神社例大祭」
「三社祭」の正式名称は「浅草神社例大祭」といいます。
「例大祭」とは、神社や寺院などで行われる年中行事の中でも特に規模が大きく重要な祭りのこと。
例祭と呼ばれる祭りのうち、特に格式の高いものや長い伝統を持つものを「例大祭」と呼ぶ傾向が強いです。
5月第3週にある「浅草神社例大祭」も浅草神社の代名詞となる祭事であり、浅草地区で最も規模の大きい祭りのひとつとなります。
祭りが大きく発展したのは明治に入ってから
今では浅草地区どころか東京を代表する観光イベントのひとつとなっている「三社祭」。
しかし、当初から大規模な祭だったわけでは無く、大きな発展を見せたのは明治時代に入ってからです。
明治時代に突入してから浅草周辺は急速に発展し、人々の関心も高まりました。
その影響もあって三社祭も大規模化し、より華やかな形式を取るようになりました。
「江戸三大祭り」ではない
「江戸三大祭り」は、江戸の街で執り行われてきた代表的な3つの祭りのことです。
隔年で5月に行われる「神田祭」、神田祭と交互に開催される「山王祭」は6月に、8月のお盆時期にある「深川祭」です。
「三社祭」が非常に大きな祭りであることは確かですが、江戸時代から大規模だったわけではないこともあり「江戸三大祭り」にはあげられていません。
混合されることもある「神田祭」との違い
東京・神田にある神田神社で執り行われる「神田祭」。
2年に一度のこの祭りは、「三社祭」と混合されることもありますが、全く別の祭りです。
場所も開催時期も近いけれど・・・
「神田祭」、特に本祭りは「三社祭」と開催時期も非常に近い上に、執り行われる場所も比較的近いです。
神田祭が行われるのは5月中旬、第2日曜日を中心とした前後日程です。
三社祭とは1週間違いということになります。
また、三社祭の浅草神社と神田祭の神田神社は、比較的近距離にあります。
それぞれの駅にほど近い浅草駅と末広町駅の間なら銀座線で一本、10分ほどの距離です。
このように開催時期や開催地の近さも混合される理由なのかもしれません。
神田祭は「江戸三大祭り」のひとつ
神田祭は、「江戸三大祭り」の様子をあらわす「神輿深川、山車神田、だだっ広いが山王様」に詠まれた祭りのひとつです。
特に山車が素晴らしいと評価を得た祭りとなります。
江戸時代には、江戸幕府から強い庇護を受けており、神田祭の神輿や山車が江戸城・内曲輪内を練り歩き、将軍や御台所の上覧が行われていました。
この経緯から、江戸の民からは「天下祭」とも呼ばれていました。
まとめ
浅草で5月の第3週に執り行われる「三社祭」。
正式には「浅草神社例大祭」という、文字通り浅草神社の例大祭となります。
三社祭と呼ばれるのは、浅草神社が「三社権現」や「三社様」とも呼ばれるからです。
この三社というのは、浅草神社に檜前浜成命・檜前武成命・土師真中知命という浅草寺の建立に関連する3人が郷土神として祀られているからです。
ちなみに、同時期に神田祭という大規模な祭りが催されますが、全く別の祭りとなります。