夏になると食べられることも増える「ところてん」。
ツルっとした食感がたまらないこのところてんは、漢字で「心太」と表記します。
「心」という字が、『とこ』や『ところ』などと読むことは他にありませんし、「太」が『てん』であったり『ろてん』などと読まれることもありません。
通常の読みと違うのは、元々「ところてん」という名前ではなかったからなのだとか!
では、元々の名前は何だったのか、ところてんという名前についてここでは解説していきます。
「ところてん」とは
まず初めに、「ところてん」がどのような食べ物なのかについて見ていきましょう!
天草からつくられる「ところてん」
ところてんの原料となるのは、「天草」という海藻の一種です。
この天草を煮出します。
そして、天草を取り出して煮汁を漉します。
この漉す作業を何度か繰り返すことで、不純物の無いところてんの液が出来上がります。
そして、出来上がった液体を型に入れて冷やすと、ゼリー状に固まります。
これがところてんです。
出来上がったところてんを、「天突き」と呼ばれる道具で押し出した紐状・糸状にして食されることが一般的です。
しかし、食す際に味付けは地域によって違います。
関東地方などでは、二杯酢あるいは三杯酢をかけた物に和辛子を添えて食べることが多いです。
対して関西地方では、黒蜜などをかけ甘味にすることが多くなっています。
他にも、醤油で作ったタレをかけて食べたり、青海苔などをかけて食べたりすることもあります。
このところてん、涼し気な透明の色合いと、のどごしのいいツルっとした食感から、夏の味覚とされます。
その歴史は非常に古い!
ところてんの歴史は古く、古代中国で生まれた食べ物とされます。
日本への伝来は約1500年前のことで、西暦540年頃の仏教伝来の時期とされています。
中国から入ってきた精進料理の伝承に伴い、こんにゃくなどと共にその製法が伝えられたのだとか。
701年に制定された大宝律令の中の賦役令では、貢納品として記載されています。
そのため、この時代にはすでにところてんがあったとわかります。
ところてんの名前の由来
では、ところてんという名前はどこから来たのでしょうか?
ここからはところてんの名前の語源や由来について解説します。
もともとは「こころふと」だった?
ところてんは、「心太」と漢字表記します。
現在ではところてんと読まれていますが、もともとは「こころふと」と読まれていたそうです。
この漢字表記の由来は、ところてんを作る際に、煮だした天草が冷めて煮凝る様子から来ているとされています。
煮凝る天草は、その性質から「こるもは(凝海藻)」と呼ばれていました。
この「こるもは」が変化し「こころ」になり、「心」という漢字があてがわれ「心太」になったと考えられています。
ちなみに「太」は、海藻を呼びあらわす言葉ともいわれています。
そして、「こころふと」が「こころてい」に変化、さらに「こころてん」や「ところてい」へと変わり、最終的に「ところてん」に落ち着いたのだとか。
「石花菜」という表記もある
ところてんは、「石化菜」と表記されることもあります。
「石花菜」とはところてんの原料にもなる天草の漢名です。
「石化菜」は漢名にあやかった別名という事ですね。
「ところてん」と「寒天」「葛切り」との違い
ところてんと似た食品に、「寒天」と「葛切り」があります。
そこで、この3つの食品の違いを解説していきます。
「寒天」との違い
ところてんと寒天は、伝来した時代や生まれた時代が違います。
ところてんは、奈良時代に中国から伝来したとされる食品です。
対して寒天は、日本で江戸時代に生まれたものだとされています。
また、材料は同じではありますが、製造方法に違いがあります。
寒天の場合、天草を溶けるまで沸騰させて煮汁を作ります。
この煮汁をまず凍結させます。
その後、日に当て溶解させ、さらに水分を飛ばし乾燥させることで完成します。
「葛切り」との違い
まとめ
夏の風物詩の1つとなる「ところてん」。
透明な姿は清涼感がありますし、つるっとした食感はのどごしもいいです。
関東では酢でさっぱりと食し、関西では黒蜜と共に甘味として口にするのが一般的です。
そんなところてんは、漢字で「心太」と表記します。
昔はこの漢字の読みの通り「こころふと」という呼び方をされていたようです。
それが次第に変化して、現在の「ところてん」という呼び方になったのだとか。