令和4年の1円玉は最大4千円?「ギザ10」は最大10万円…!財布にあるかもしれない「レア貨幣」の世界

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-02-12 07:02
令和4年の1円玉は最大4千円?「ギザ10」は最大10万円…!財布にあるかもしれない「レア貨幣」の世界

貨幣の中には額面以上の価格になるものがあります。「ギザ10」と通称で呼ばれる10円玉は、ただの10円玉ですが、中には1万倍の価格で取引されるものもあるそうです。額面よりも価値を持つお金って、一体どういうことなのでしょうか。

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額面をはるかに超える価格 手がかりは「日本貨幣カタログ」に

筆者が高校生の頃から愛読している「日本貨幣カタログ」という本があります。祖父からもらった貨幣の価値を調べるために買ったのをきっかけに読み続けています。

このカタログには、708年から発行されたとされている「和同開珎」などの古銭から、いま流通しているお金、2024年7月3日から発行される渋沢栄一・津田梅子・北里柴三郎の新紙幣までが載っており、どれくらいの価値があるかが記されています。お金の価値は自明じゃないかと思われるかもしれませんが、コレクターの間では額面とは別のお金の価値が存在するのです。

人気の貨幣にギザ10があります。カタログでギザ10のページを探してみると、ありました。「10円青銅貨(ギザあり)」との記載です。お店で使えば、他の貨幣と変わらない10円の価値しかありませんが、ギザ10の中には、10万円で取引されているものもあります。一方、同じギザ10でも、発行年によって最高額は1万8千円〜5万円とまちまちです。

わずか7年間だけ発行のギザ10 最高額は額面の1万倍

貨幣の価値は何で決まるのか、日本貨幣カタログを作っている「日本貨幣商協同組合」の専務理事・林和美さんに聞くと、「貨幣の状態と流通量ですね」と教えてくれました。

貨幣の状態というのは、出た時と同じような状態の方が価値があるのだといいます。そのため、貨幣は保存の状態によって「完全未使用品」「未使用品」「極美品」「美品」「並品」と評価が分かれています。完全未使用品は「表面の輝きが製造時の状態を保ち、製造後の摩耗・スリキズ・当たりキズが全くないもの」。一応「ごく僅かな製造時のスレ・当たりキズは認められる」との注釈もありますが、ハードルはかなり高いです。普段の生活で手に入る貨幣は基本「並品」だと思って良いでしょう。

流通量も重要だといいます。例えば、さきほどのギザ10。わずか7年間の発行で、発行枚数は合わせて17億枚ほど。昭和49年(1974年)の1年間で約17億枚が発行されているのと比べると、その流通量の少なさが分かるかと思います。そして、価格は発行年によっても変わります。10万円の価格がついたギザ10は、昭和26年の「完全未使用品」のもの。残念ながら、簡単に手に入る「並品」のギザ10はほぼ10円の価値しかありません。

ちなみに、なぜギザ10と呼ばれているのか。貨幣を製造している造幣局などによると、昭和26年(1951年)〜昭和33年(1958年)の10円玉には、当時の貨幣(硬貨)の最高額面であることを示すため縁にギザギザがつけられていたことが由来となっています。

造幣局によると、使えなくなった貨幣は素材別に「鋳(い)潰し」て、再び貨幣の材料となるため、ギザ10の流通量は年々減っています。また、一番新しくても昭和33年のため、完全未使用品が出てくる可能性は極めて低いです。このような条件から、状態の良いギザ10はますますレア度が高まりそうです。

キャッシュレス化が進み…令和の1円玉に価値が出てきた

実は最近、希少になってきている貨幣があることをご存じでしょうか?

それは1円玉。キャッシュレス化が進み、平成の終わりから令和にかけて1円玉の発行はほぼありません。平成2年(1990年)には27億枚を超える発行枚数でしたが、令和4年(2022年)はその5千分の1ほどの57万枚にとどまりました。文字通り桁が違います。「やっぱり絶対量が少ないものは、価値が高い」と林さん。実際、完全未使用品の1円玉を見てみると、平成2年は100円の価格ですが、令和4年のものは4千円の価格がついているそうです。

他にも希少な貨幣に、「エラー硬貨」があります。こちらも例を出すと、製造過程で誤って穴が塞がったりずれたりしてしまった5円玉や50円玉、模様を刻印する時に表と裏の模様がずれてしまった貨幣などがあります。エラー硬貨も価値がありますが、基本は「一品物」のため、オークションなどで個別に価格が決まっていきます。

想像をはるかに超えるコインショーの熱気 新規参入者も

ここで不思議に思うのは、どんなに希少であるにしろ、今の時代、誰が額面以上の価格で貨幣を買っているのかということです。

2023年11月に東京・大手町で開かれた展示即売会「東京コインショー」を筆者ものぞきましたが、想像以上の熱気と人出でした。ビルの一室が多くの人であふれかえり、お目当ての品を見るのもなかなか難しい状況。林さんによると、最近は小学生や中学生といった若い層の参加者も増えています。実物を手にすることで楽しさに目覚める人もいるそうです。

日本貨幣カタログは、毎年価格の変動があるので、72人(2023年12月現在)の組合員で手分けして算出したり、新しい貨幣が出たらページを追加したりしています。組合員は古銭や切手を扱う店を経営している人で組織されています。最盛期は150人以上いましたが、年齢を重ねて廃業し、やめる人も多いといいます。しかし、新しく参入する人も結構いるそうで、供給も需要もなくならないため、貨幣の額面以上の取引は今後も続きます。

希少な貨幣を求める人たちが希少になることは、今のところなさそうです。

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取材:1級ファイナンシャル・プランニング技能士 影山遼