うずらの卵詰まらせ、小1男児が死亡 過去の事故が学校で共有されず?再発防止どうすれば【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-03-01 15:11

2月26日、福岡県内の小学校で、小学1年の男子児童が、給食のうずらの卵を喉に詰まらせ死亡するという痛ましい事故が起きました。どうにか防ぐことはできなかったんでしょうか。子育て世帯の声を聞いてきました。

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街で声を聞くと…「1年生で詰まるとは思わないですよね」

小学1年生の父
『まさかうずらの卵で』ってことは感じました。うちも同じぐらいの子供がいるので気をつけようと感じました」

1歳の母
1年生で詰まるとは思わないですよね。小学校で楽しんでふざけたりすると、ヒィッとかいったら詰まっちゃう。安全性を考えて出さない方がいいのかなと私は思いました」

小1・年長・年少・0歳の4児の母
『またか』って。ちょっと前に見たニュースで、イチゴとかソーセージを飲み込んで亡くなった。口に入れたら前歯でかじりなさいと声をかけるようにしている」

1歳の父
「ちょうどうちの子も先週、初めてうずらの卵を食べさせる機会があった。けっこう細かくして食べさせた。次は2つに割って食べてもらえるのかなと思ってた矢先にニュースを見たので、注意しなきゃいけないのかなと」

小学1年生の父
「それなりに大きい子供ですので、(うずらの卵も)詰まる可能性があると認識していても、なかなか予想できなかったのかなと」

2015年にも小学1年生がうずらの卵で死亡事故 県教委は「通知ない」

小川彩佳キャスター:
小学校低学年は歯の生え変わり時期です。NPO法人「Safe Kids Japan」の山中龍宏理事長によると、「前歯がなく噛み切れず、吸いこんでのどの奥に入ってしまうことも(ある)」ということです。乳幼児だと慎重になりますが、こうした危険性は今回改めて認識させられました。

NEWS DIG 久保田智子編集長:
のどが詰まってしまった場合には一刻を争います。そんなときには背中を叩く「背部叩打法」、胸を突き上げる「胸部突き上げ法」、「腹部突き上げ法(1歳以上)」などの対応が必要ですので、対処方法を確認するようにしてください。

のどに詰まらせないということがそもそも大事です。なぜ今回の学校では対策がされなかったのでしょうか。実は2015年にも大阪市の小学1年の女子児童がうずらの卵などを詰まらせ、死亡する事故が起きています。このときも小学1年生だったんです。

しかし、今回の事故が起きた福岡県みやま市の教育委員会は、うずらの卵が「危険な食材という認識はなかった」と話しています。

福岡県の教育委員会は「2015年の事故に関する通知はなかった」としていて、過去の事故の教訓が共有されないまま来ている可能性があるということです。

ジャーナリスト 浜田敬子氏:
私はこの「認識がなかった」「知らなかった」ということにちょっとびっくりします。こういった特に幼稚園や保育園での誤飲事故というのは度々起きてニュースになっていますよね。

調べてみると、内閣府では2016年に「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」というものを作ってることが分かりました。ガイドラインでは危険な食べ物としてぶどうやミニトマトというのを出しています。そうすると現場の人たちは、大体同じ大きさのものはきっと危険性があるだろうと献立を考える際に普通考えると思います。

専門家からは子育てをしている家庭や専門家の間では当たり前のことすぎて、むしろ周知を怠っていたのではないかという指摘もありました。常識的なことが浸透していなかったということにショックを受けました。

指示と責任だけが学校現場へ? 再発防止に取り組むマンパワーも不足か

NEWS DIG 久保田編集長:
通知が浸透していないという問題は広く考えた方がいいと思います。給食に限らず学校では様々な事故が起きますが、再発防止に向けての取り組みを不安に感じる数字もあります。

学校で死亡事故が起きた場合、児童・生徒のほとんどに独立行政法人から見舞金が支払われています。独立行政法人「日本スポーツ振興センター」の調査によると、7年間で456件の死亡事故があったということです。しかし、文科省に学校側から報告があった死亡事故は141件ということで同じ時期なのにかなり差があります。

この中には通学路での交通事故などで警察が捜査をしているため、文科省に報告が上がらないケースもあるそうですが、学校安全が専門の大阪教育大学の藤田大輔教授は「文科省から教育現場に対して、事故原因の調査や国へ報告するという指針がうまく伝わっていない」と指摘しています。

私が以前、幼稚園の死亡事故を取材したときには、再発防止よりも責任追及の方が前に出てしまっていました。「誰が悪いんだ」ってなるとみんなが口を閉ざしてしまって、何が違ったらよかったのかという改善点の議論になかなか発展しないという状況があるように感じました。

小川キャスター:
ただ、同じ背景の事故が繰り返されて、尊い命が失われるということは最もあってはならないことですよね。

NEWS DIG 久保田編集長:
文部科学省は2月27日の有識者会議で「学校事故対応に関する新しい指針案」を示し、「事故の再発防止を図るため、教育委員会などに調査・報告の徹底を求める」ということです。

事故の再発防止につなげていきたいとしていますが、学校リスクに詳しい名古屋大学大学院の内田良教授によりますと、「文科行政は人や予算をつけず、指示と責任だけが現場に降りてくる状況」「教員はリスク対応の専門家ではない。安全配慮の専門家を育成して配置をしてほしい」と指摘しています。

小川キャスター:
新しい指針案も機能させなければいけないですよね。

ジャーナリスト 浜田氏:
もちろん過去の事故のデータベースを作ったり、指針を作ったり、ガイドラインを作って通知を徹底させたりするということも大事だと思いますが、内田教授が指摘している点、つまり現場のマンパワーに余裕がないわけです。

例えば、先生たちが今回のようなニュースを見たら、「うちの学校は大丈夫なのかな」と普通は自分たちで考える。通知に頼るというのはある意味危険で、通知がないものはやらないとなってしまい、思考停止してしまうわけです。しかし、今の学校現場に自分たちの職場で話し合う時間や余裕があるのかということが問題なのかなと思います。

小川キャスター:
そのためにも環境の改善というのを尽くしていかなければなりません。

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