「誰もプーチンを止める方法を知らない。必要なのは武器、そして侵略犯罪を裁く特別法廷」ノーベル平和賞受賞団体・代表が語る ウクライナ侵攻2年

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-03-06 06:15
「誰もプーチンを止める方法を知らない。必要なのは武器、そして侵略犯罪を裁く特別法廷」ノーベル平和賞受賞団体・代表が語る ウクライナ侵攻2年

ウクライナで、ロシア軍による民間人の殺害などの戦争犯罪を特定し、立証するために記録する取り組みを続けているのが、人権団体「市民自由センター(CCL)」です。
2022年、その功績が認められ、ノーベル平和賞を受賞しました。
その代表を務める、オレクサンドラ・マトビチュクさんが2月下旬、ウクライナの首都・キーウにある事務所でインタビューに応じました。
戦争の長期化で、彼女たちの活動はどう変化したのか。国際社会に訴えたいこととは。
Q&A形式でお伝えします。

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Q.ロシアによる軍事侵攻が始まってから2年が経ちます。ウクライナでは民間人の死傷者は増え続け、ロシアによる戦争犯罪も増え続けています。皆さんの活動にはどのような変化がありましたか?

ロシアによる大規模な侵略が始まり、私たちは前例のない数の戦争犯罪に直面しました。ロシアが戦争犯罪をおかすのは、恐怖を植え付けるというメッセージです。ロシアがウクライナの人々の抵抗を断ち切ろうとしているのです。

私たちは、さまざまな地域の数十の組織と力を合わせ、ネットワークを構築し、この2年で6万4000件以上の戦争犯罪を記録しました。

Q.年月が経過することで、犯罪の数も増え続け、記憶をたどること、証拠を記録することは、より困難になっているのではないですか?

専門的な側面から言えば、私たちが直面しているのは、人間の苦痛です。私たちが記録するのは、例えば、生まれたばかりの子供を失った母親の悲しみです。この母親の痛みを記録することは、肉体的にも精神的にも消耗します。私たちは、人間として普通の生活と呼ばれるすべてのものを失った、ということです。

また、犯罪の「数」も困難な点です。ウクライナ検察は12万件以上の戦争犯罪について捜査を開始しました。戦時下にあって12万件もの犯罪を捜査する責任の重さを想像できますか?世界で最も優れた組織であっても、非常に困難です。国際的な支援が必要です。

そして、一番難しいのは、これらの犯罪を記録する目的は何なのか、という問題です。ロシアのプーチン(大統領)、ベラルーシのルカシェンコ(大統領)、そしてロシアの政治指導者と軍の最高司令部を「侵略の罪」で訴追できる国際的な裁判所はありません。しかし、残虐行為はすべて、この戦争を始めた指導者の決断に起因しています。将来的に戦争が起こることを防ぎたいのであれば、このような戦争を始めた国家とその指導者を罰する必要があります。だからこそ私たちは侵略犯罪を裁く特別法廷の設置に取り組んでいるのです。

Q.国際司法裁判所(ICJ)は暫定的な措置として、2022年3月にロシアに対し軍事行動の即時停止を命じました。しかし、その後もロシアは軍事侵攻を続けています。法の支配への信頼が揺らいでいるとの指摘もありますが、「法の支配の重要性」をどう考えていますか?

国際司法裁判所の判断というよりも、広い意味で、法律が機能していないということが問題です。平和と安全保障のための国際秩序がロシアの残虐行為を止められないのであれば、他の権威主義的な指導者が、侵略戦争を始めたらどうすればいいのでしょうか。これは、法の支配が機能していないということが問題なのです。しかし、私は弁護士として、これを成し遂げられると信じています。ロシアによるウクライナへの侵略を止めることに成功すれば、国際秩序が回復し、正義が示され、将来の戦争を防ぐことができるでしょう。

Q.国際秩序が機能するために、国際社会にできることは何でしょうか?

たくさんあります。ロシアによる大規模な侵攻が始まったとき、国際社会は「ウクライナが負けないよう支援しよう」と言いました。そしてウクライナは、自衛のための武器を手に入れ、ロシアに対する制裁措置が発動されました。そのおかげでウクライナは生き延びることができました。

しかし、近代的な戦車が供与されるのを1年以上も待ち、近代的な戦闘機を持たずに反転攻勢を開始しなければなりませんでした。侵略犯罪を裁く特別法廷の設置についても議論しているだけで、手続きは進みませんでした。特別法廷を立ち上げるには2年もあれば十分でした。

「ウクライナが負けないように支援しよう」というのと「ウクライナが勝つために支援しよう」というのは、大きな差があります。我々は脅威を認識し、この現実を受け入れなければなりません。

この戦争はすでにウクライナの国境を越えています。
北朝鮮はロシアに100万発以上の砲弾を供与しました。中国はロシアの制裁逃れを支援し、イランはロシアに無人機を供与しました。「権威主義国」が互いに協力するなら、私たち「民主主義国」は、さらに強く助け合わなければならない。これは単なる2つの国家間の戦争ではなく、「権威主義」と「民主主義」という2つのシステムの戦争なのです。

※編集注:
中国側はロシアの制裁逃れの支援を否定
イラン側はロシアの軍事侵攻後の無人機の供与を否定

Q.ウクライナが勝利するためには何が必要ですか?現在の目標は何でしょうか?

まず、ウクライナへの日本の皆様からの支援に心から感謝しています。私たちに必要なのは、ロシアの凍結資産を没収してウクライナの支援に充てることです。これに対して、日本政府の賛成の声が必要です。

そして、プーチン(大統領)を止めるには、武器、そして政治指導者の勇気が必要です。
私たちは素手では戦えません。武器なしで強力な軍事力を持つロシアとどうやって戦うことができるでしょうか。不可能です。(机に飾ってある)この花では戦えない。ロシアの戦車に花を挿すことはできません。

プーチン(大統領)は、平和や停戦を必要としていません。平和的な交渉を行うという議論はすべて希望的観測にすぎません。誰もプーチン(大統領)を止める方法を知りません。
プーチン(大統領)は最近、アメリカのキャスター、タッカー・カールソン氏のインタビューに答えて、「ウクライナは存在しない」と言いました。これは大虐殺を意味し、我々を抹殺したいというシグナルです。

プーチン(大統領)はもう70歳を過ぎていますから、いずれ死ぬでしょう。しかし、戦争はプーチン(大統領)だけのものではありません。この戦争には他の多くのロシア人が関わっています。ですから、もし侵略犯罪を裁く特別法廷が設けられれば、処罰されないままではいられないというシグナルになります。そして戦争では、何千、何万もの命を救うことができます。これは達成すべき目標です。

■オレクサンドラ・マトビチュクさん
1983年生まれ、人権派弁護士。
「市民自由センター(CCL)」の代表。2007年から活動に加わり、ウクライナでの人権保護と民主主義の確立に取り組む。CCLは2022年にノーベル平和賞を受賞。
同年、イギリス・フィナンシャルタイムズ紙の「最も影響力のある女性25人」の1人に選ばれる。

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