アメリカ大統領選挙に向けた民主党・共和党の候補者選びが多くの州で一斉に行われる「スーパーチューズデー」。共和党はトランプ前大統領が圧勝し、指名獲得に大きく近づきました。
【写真を見る】アメリカ大統領選挙「スーパーチューズデー」でトランプ前大統領が圧勝も…大きな壁は世界の歌姫テイラー・スウィフト?【Nスタ解説】
追い込まれたヘイリー氏 トランプ氏はバイデン批判
記者
「候補指名に大きく近づいたトランプ前大統領が姿を見せました。勝利宣言を行います」
トランプ前大統領
「スーパーチューズデーと呼ばれるには理由がある。これは大きいぞ」
5日、大きな山場「スーパーチューズデー」を迎え、15の州で投票が行われた共和党の大統領選候補者選び。
開票が進む中、トランプ氏は支持者を前に演説し、「これほど決定的なことはない」と勝利を宣言しました。
これまでのところトランプ氏は15州のうち、西部カリフォルニア州など
12州で勝利。
事前の予想ではトランプ氏が全勝するのではとの見方もありましたが、
ヘイリー氏が一矢報い、東部バーモント州で勝利しました。
ヘイリー氏の陣営は、「バーモント州を含む全米で何百万人もの支持を得られたことを光栄に思う」とする声明を発表。その上で…
ヘイリー氏陣営
「きょうもトランプ氏に懸念を示す共和党の有権者が各州にいる。こうした懸念に対処することで共和党とアメリカはより良くなるだろう」
トランプ氏の圧勝を受け、へイリー氏は撤退を避けられない情勢ですが、地元サウスカロライナ州では…
記者
「劣勢が伝えられるヘイリー氏ですが、地元からは撤退しないでほしいという声も上がっています」
ヘイリー氏支持者
「これまでかなり一方的なので(今回の結果に)驚きはない」
「トランプ氏よりヘイリー氏がいい。選挙戦を続けて欲しい」
一方、トランプ氏はすでに11月の本選を見据え、バイデン大統領を繰り返し批判。
トランプ前大統領
「我々はこの3年間この国がひどい目にあうのを目の当たりにしてきた。バイデン氏はアメリカ史上最悪の大統領だ。我々はアメリカを再び偉大にする。かつてないほどに」
バイデン氏との対決姿勢を鮮明にしています。
トランプ氏圧勝でヘイリー氏支持者の行方は…
ホラン千秋キャスター:
前回に続き、トランプ氏とバイデン氏との対決が濃厚となったアメリカ大統領選挙。今後の選挙戦の注目点についてワシントンから伝えてもらいます。
樫元照幸記者:
まずはヘイリー氏がいつ撤退表明を行うのか。撤退表明でトランプ氏の支持を表明するのか。
そして仮にトランプ氏支持を表明したとして、ヘイリー氏に投票した10数%から30数%の人がトランプ氏支持に変わるのかが注目となります。
トランプ氏の強固な支持層は共和党内のおよそ3割と言われてきましたが、この1年で支持を6~7割に広げてきました。
ただ、穏健派の共和党員の中にはトランプ氏を嫌いだという人も少なくありません。
本選で勝利するには、①無党派層の取り込み、②民主党支持者の切り崩しと同時に、③共和党内での支持を固めることも重要で、トランプ氏にとっては今後の大事な課題になります。
一方、本選で迎え撃つことになるバイデン大統領ですが予備選挙で見えてきたものがあります。
ミネソタ州の予備選挙で「支持者なし」に投票した人がおよそ2割にのぼりました。これはアラブ系アメリカ人を中心としたバイデン政権の中東政策への批判票とみられています。
今後、ガザ情勢が悪化していけばイスラエル寄りの姿勢に批判的な民主党支持者が離れていき、11月の本選で大きな弱点になる可能性があります。
トランプ氏 大きな壁は世界の歌姫?
齋藤慎太郎キャスター:
トランプ前大統領の大きな壁になるかもしれない存在にスポットを当てます。それはバイデン大統領ではなく、世界の歌姫テイラー・スウィフトさんです。
テイラー・スウィフトさんは、現地5日、スーパーチューズデーに合わせて公式SNSで「もっとも代表する人物に投票するよう呼びかけたかったのです。まだ投票を終えてない人は、投票の計画を立ててください」と投票を促す投稿をしました。その際に自身が支持する候補者は表明しませんでした。
テイラー・スウィフトさんは、SNSのフォロワー数はインスタグラムが約2億8000万人、Xは約9536万人と大きな影響力を持つ方です。
実は2018年大統領選の中間選挙のときに、民主党支持を表明しました。2月に行われた現地メディアの調査によると「スウィフトさんが支持する候補者に投票する」と回答した人が有権者の18%、これは人数にすると3000万人くらいにあたるそうです。
その影響力ですが、こんな例もあります。
過去にはテイラーの呼びかけで有権者登録者数25万人増も
2018年の大統領選の中間選挙の際、10月7日に公式インスタグラムで有権者登録を呼びかけました。有権者登録者数は、8月が1か月で約5.7万人、9月が19万人でしたが、この投稿を行った3日間(10月7日~9日)で約25万人増えたということです。
それだけ大きな影響力のあるテイラースウィフトさん、トランプ前大統領は無視できませんでした。2月に公式SNSで「バイデンはテイラーのために何もしなかったし、これからもしない。テイラーがバイデンを支持するはずがない」と牽制をするような投稿をしました。
「スーパーボウルは今政権が仕組んだもの」陰謀論も
さらにトランプ派の支持者からは、陰謀論がささやかれているそうです。
2月にスーパーボウルが行われ、スウィフトさんの恋人のトラヴィス選手が所属するチームが優勝しましたが、このシーンを巡って「スーパーボウルは今政権が仕組んだもの」「目的達成のためにテイラーを利用している」など、優勝自体に政権が絡んでいるんじゃないかというような陰謀論がささやかれています。
また、スウィフト氏が政府の秘密工作に関与しているという陰謀論を信じている人も18%いるということで様々な思惑が渦巻いている今回の大統領選です。
井上貴博キャスター:
トランプさんが最も陰謀論を利用して、前回大統領になったときもトランプリスクということが声高に言われた。一方で蓋を開けてみると、大型減税などを行ったことで株価が上昇してるんですよね。選挙期間中に自分の支持層を固めるため、わざとアメリカ第一主義の極端なことを言って、メディア嫌いを囲って、そしてなった後は、虎視眈々とやる。本当に80歳のバイデンさん、トランプさんに任せていいのかということで、テイラー・スウィフトさんのような若者がどう対抗していけるのかということかもしれないですね。
テイラーの呼びかけ 11月本選前にも?
ホラン千秋キャスター:
テイラー・スウィフトさんは、音楽界のアイコンと見られることも多いと思うんですが、ここ数年、女性の地位向上などに関しても声を上げ続けているので、単なるアイコンではなくなってきています。
樫元さん、テイラー・スウィフトさんのような影響力のある方がどう声を上げるのか、候補者の皆さんは、かなりやきもきしている部分があるのでしょうか?
樫本照幸記者:
トランプさんの勢いがすごいと伝わっていますが、バイデンさんとの直接対決はまだどうなるかわかりません。そして最終的には7つの「スイングステート」と言われる州でどっちに転ぶかというところで大統領選が決定していきます。そこで勝利を分けるのはほんのわずかな差なんです。
1月下旬、ニューヨーク・タイムズによると、「民主党のバイデン陣営はテイラー・スウィフトさんに何かの表明をしてもらいたいと期待している」という記事も出まして、ちょうどスーパーボウルの直前だったので、かなり話題になりました。
話題になった後、テイラーさんが表明をするのかが注目されましたが、5日、投票を呼びかけました。支持政党は特に表明していませんが、11月の本選の前にも何らかの発信があるのではないかと民主党側は期待をしています。
井上キャスター:
どうしても気になるのは、トランプさんにせよバイデンさんにせよ80歳前後、他の候補はいないのか。日本でもそうですが、新しい顔が出てこない。日米ともに、そのことの方が最も憂慮すべきなのかなという気もしますが、その点はどう捉えていますか。
樫本記者:
民主党側からすると、現職の大統領が再選を目指すと表明した以上、やはりなかなか出られないというのが正直なところですね。共和党側は、トランプさんの存在感が大きすぎたというところでしょうか。
ヘイリーさんがこの後どうなるかわかりませんが、若い方々はそれなりにいて、50代ぐらいの力のある方もいますが、次の選挙=2028年を目指しているというのが今の状況で、今回はバイデンさん対トランプさんの80前後対決。この再対決ということで、有権者は意思表示をしなくてはいけないという状況です。