![海底地すべりを再現!予測より早い津波はなぜ起きる?カメラ10台で捉えた津波発生の瞬間 #知り続ける](/assets/out/images/jnn/1039579.jpg)
元日に発生した能登半島地震では、富山県で予測よりも早く津波が観測された。
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気象庁の津波到達予測時刻は地震から10分後だったが、実際に検潮所で津波が観測されたのは地震からたった3分後だった。
なぜ7分も早く津波が来たのか。その原因とみられているのが「海底地すべり」だ。
気象庁の予測システムや自治体のハザードマップにも含まれていない、この“想定外の津波”を津波研究の第一人者と再現した。
実験室で海底地すべりを人工的に起こすと、津波がどのように発生し、陸地に到達するのかが見えてきた。(TBS/JNN「Nスタ つなぐ、つながるSP 〜いのち〜」畑中大樹)
“想定外の津波” 実験で海底地すべりによる津波を再現
海の中で斜面が崩れる、海底地すべり。地震などによって海底地すべりが起きると、そこから津波が発生することがあるのだという。水中で地すべりが起こると水面はどのように動くのか、実験を行った。
実験に協力してくれたのは、津波研究の第一人者、中央大学理工学部の有川太郎教授。水槽に約100分の1スケールで海底を再現し、人工的に海底地すべりを起こした。
まずは比較的緩やかな斜面で海底地すべりを再現する。角度は約20度で、富山湾の海底にも同程度の勾配があるという。
斜面の砂がすべり出すと、勢いよくそのまま一気に崩れ落ちた。
「地すべりの瞬間 水面はどう動く?」
水面の変化は、真横からの映像で捉えた。元の水面の高さに赤い線を引いて比較すると、地すべりとほぼ同時に、斜面の真上の水面が砂の動きに引っ張られるようにして下がる。
いったん下がった水面は、その後反動で盛り上がる。そして周囲の水面に揺らぎが広がった。
このときの実験では、水面が変化した高さは最大で約1センチだった。
実験は、砂の種類や勾配を変えて複数回行い、砂の滑り方や波の大きさを確かめた。
次はより大規模な地すべりを再現してみる。角度は先ほどよりも急な約30度、海底の地形の中でも比較的急な勾配を想定している。また、岩などが崩れ落ちるような地すべりを再現するため、砂をセメントで固めて大きな塊を作った。
斜面の逆側の陸地には家や木の模型を置いた。どれほどの波が起こるのか。
「カメラが捉えた 波が生まれる瞬間」
砂の塊が地すべりを起こすと、先ほどの実験よりも大きく水面が下がった。
その後、水面は反動で盛り上がり、先ほどよりも水面が大きくうねり、波となる。この波が水面を伝わって広がっていく。
斜面の逆側に作った陸地近くの映像を見てみると、一度波が引いた後に…
大きな波が一気に陸地に乗り上げ、家や木を押し流した。
波は一度ではなくその後も何度か押し寄せた。この実験では、波の高さは最大で約3.5センチにまで達した。
さらに驚くことに、地すべりが起きた直後には、斜面が崩れた側の陸地にも波が到達していた。この実験のように陸地の近くで地すべりが起きると、津波はすぐに襲ってくる可能性がある。
「地すべりによる“想定外の津波” 危険性は」
斜面の勾配が緩やかなケースでは、砂は比較的ゆっくりと滑り落ち、波は高くなりづらかった。
海底とは環境や条件が異なる実験ではあったが、有川教授は「急な勾配で大きな塊が動けば、大きな津波が起こることが確かめられた」と話す。
過去には3メートル超の津波が海底地すべりによって発生
海外では海底地すべりが原因の巨大津波も発生している。2018年9月のインドネシアのスラウェシ島での地震では3~5メートルほどの津波が確認されていて、その主な原因は海底地すべりだと考えられている。日本でも、今後30年以内に70~80%の確率で発生すると予測されている南海トラフ巨大地震(マグニチュード8~9)で海底地すべりが起きる可能性がある。
しかし、この海底地すべりによる津波は気象庁による津波予測や自治体のハザードマップには含まれていない。陸地の近くで海底地すべりが起きれば、気象庁の津波予測よりも“早く”津波が到達する恐れがあり、“注意報”しか出ていない地域であっても警報級の津波が来る可能性があるのだという。有川教授は「海底地すべりは海底が急に深くなるような地形で起こりやすい。特に沿岸部に住む人は自分の地域の地形を把握し、予測を上回るような早さで津波が来る可能性も考えて避難行動をとってほしい」と警鐘を鳴らす。