釜石とガザがなぜ交流?若者同士で被災地から戦地へ“恩返し”「あなたたちを忘れていない」 #知り続ける

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2024-03-09 07:01
釜石とガザがなぜ交流?若者同士で被災地から戦地へ“恩返し”「あなたたちを忘れていない」 #知り続ける

いまも多くの市民が犠牲となり続けているパレスチナ自治区ガザ。
実はこのガザでは東日本大震災以降、被災地に想いを寄せた"凧揚げ"が行われてきた。

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震災から13年、ガザの子どもたちから勇気をもらった釜石の中学生たちはいま、どのような思いでガザの現状を見ているのか。

ホラン千秋が、以前釜石に来たこともあるガザの女性とのオンライン交流に密着した。

(TBS/JNN「Nスタ つなぐ、つながるSP〜いのち〜」大﨑雅基)

ガザと釜石 9000キロを超えた交流

岩手県・釜石市からおよそ9000キロ、パレスチナ自治区ガザ。文化も言語も全く異なるこの2つの地域では、長年交流が続いている。
きっかけは2011年の東日本大震災。日本の震災に胸を痛めたガザの子どもたちが翌年、犠牲者の追悼と復興への想いをのせた凧を揚げた。

ガザは当時から、周囲を壁やフェンスで囲まれた「天井のない監獄」と呼ばれ、空爆も度々行われていた。そんな中でも被災地を気にかけてくれた彼らの想いに応えるため、2015年には釜石でもお返しの凧揚げが行なわれた。
その時、ガザからは3人の中学生が招待され、地元の子どもたちと交流した。

来日した中学生のひとり、ガイダさんは津波の映像を見て涙した。父親を病気で亡くしたばかりだったのだ。封鎖されたガザで、十分な医療物資が入ってこなかったと言う。震災と戦災、形は違えど大切な人や故郷が奪われる悲しみは変わらない。

そして今、ガザは去年10月から始まった大規模な戦闘で、これまでにないほど深刻な状況にある。「今こそガザのために出来ることを」。動き出した釜石出身の2人の女性がいる。

津波で釜石の街が一変「違和感を言語化できない悔しさ」

2月、ホランキャスターが出会ったのは、釜石出身の佐々木千夏(ささき・ちなつ)さん(26)。

佐々木さんは中学1年生の時に被災。帰りのホームルームの最中、経験したのことのない揺れを感じた。その後、全校生徒約400人で学校近くの山に避難した。

ホランキャスター
「あの日、どのような思いでこの坂を登ったんですか?」
佐々木千夏さん
「喘息持ちだったので、寒い中小走りで来たら息が上がっちゃって。走るのも苦手だったので、ヒューヒューなりながら。もし津波が来て、頂上まで行けなかったら死んじゃうのかなって」

幸いにもこの場所まで津波は到達せず、佐々木さんの家族や自宅も無事だった。しかし、思い出のある釜石の街は流されて一変した。

佐々木さんは復興が進んだいまの街を見渡し、つぶやいた。

佐々木千夏さん
「ここに何があったのだろう。思い出さないことも悔しいですよね。小学生くらいまでの知っている街ではないという違和感はあるけど、それを言語化できない悔しさ。こんなに無くなるんだったらもっと覚えておけば良かったって」

「3.11は電車に乗ると涙が出る」東京で感じる孤独感と戦地への想い

高校生になった佐々木さんは、釜石でガザの子どもたちとの交流会や凧揚げに参加。さらに、ヨルダンの難民キャンプやパレスチナも訪れた。
そこで出会ったのは、同じように街を破壊された人々だった。自分たちが大変な生活を送っているにも関わらず、日本の震災の話をすると涙を浮かべて心配してくれた。

佐々木さんは大学の講義や、地元・釜石で開かれた勉強会でこうした体験を発信。伝え続けるのは、「忘れられること」の苦しみが分かるからだという。
現在東京で働く佐々木さんは、毎年3月11日になると自分だけが取り残されたような錯覚に陥ると話す。

佐々木千夏さん
「3.11は電車に乗ると涙が出るんです。皆が当たり前に電車に乗ってスマホをいじって何気なく生活していること自体が、自分だけが取り残されて別の国に放り込まれたような気持ちみたいな。世界中で戦争とかで苦しんでいる人たちもこういう気持ちで、やっぱりどこかで覚えていてほしいんだろうなって」

ガザの凧揚げ会場には避難民が殺到 釜石から送る平和への願い

「ガザのみんなのことを忘れてはいないよ」
釜石では、そんな思いを込めた凧揚げが、今年1月にも行なわれた。

ホランキャスターが次に話を聞いたのは、このとき初めて主催者として凧揚げに関わることになった野呂文香(のろ・あやか)さん(22)。釜石出身の大学生だ。

野呂さんは小学3年生のときに被災。当時は大津波警報の意味も分からなかったが、学校に迎えに来た母親の車の中で、テレビで津波に飲み込まれる街の映像を見て大きな衝撃を受けた。

高校生の時、ガザで被災地に向けた凧あげが行われていると知り、リモートで現地の子どもたちと交流した。そのときの様子をこう振り返る。

野呂文香さん
「ガザの皆さんは自分たちが大変な中でも、遠い日本の震災復興を願って凧揚げをしてくださって、その思いがすごく嬉しくて。ガザの平和のために何かしたいと思いました」

しかし、ガザで去年まで凧揚げが行われていた広場はいま、最大規模の避難場所となり、多くの人が殺到して仮設テントで溢れている。

どうか希望を捨てないでほしい。「平和」「共に」「幸せ」―。釜石の空に揚がった、子どもたちの思い思いのメッセージをのせた凧。

この様子はガザの少女にもオンラインで届けられた。少女は去年10月に来日したが、日本に滞在している間に戦況が悪化してガザに戻れなくなり、ヨルダンに留まっている。

釜石の子どもが凧を手に「まちが平和になりますように」と画面越しに呼びかけると、ガザの少女は「ありがとう」と笑顔になった。

あの日のガザの中学生はいま…凧揚げの映像に涙「私たちは一人じゃない」

もう一人、1月の凧あげを見る予定だったガザの女性がいる。
2015年に来日した、ガイダさん(22)だ。
実は、凧揚げ当日、連絡がとれなくなった。

一体何があったのか。後日、オンラインで繋ぐことに。
2015年の凧あげに参加した佐々木さんとはおよそ9年ぶりの再会だ。

佐々木さんがガイダさんに近況を尋ねると、ガザを離れエジプトに留学中だという。医師になって故郷の人々を助けるため勉強をしているのだと明るい表情で語った。

しかし、話がガザの現状へと移るとその表情が曇った。

ホランキャスター
「ガザにいるご家族や友人はいまどのような状況なのでしょうか」
ガイダさん
「ガザに安全な場所はありません。電気もインターネットもなく、家族が無事かどうかも分かりません。ニュースを見て死者の名前の中に、家族がいないかを確認する毎日です」

釜石で凧揚げが行われたその日、ガイダさんはガザで仲の良かった級友を亡くしたのだという。
ガイダさんが参加できなかった凧あげ…。野呂さんら主催者が心を込めて作った、その日の様子をまとめた動画をガイダさんに見てもらう。

「一刻も早くこの戦争が終わってほしい」「ガザのことを心から想っています」
凧あげの映像と共に流れる釜石の人々からのメッセージに、ガイダさんの目から涙がこぼれた。

ガザと釜石は互いに苦しみを分かち合ってきた、そのことが大きな支えになっているという。

ガイダさん
「自分たちのことを想ってくれる人たちがこんなにもいるのだとガザの皆に知ってほしいです。私たちは決して一人ではないと」

ガザへの想いをのせた凧が再び空へ

翌日、野呂さんが初めてガザに向けて凧あげをした場所に連れて行ってもらった。

「GAZA children happiness」、そして「繋」。野呂さんがこれまでに作った凧に書いたメッセージだ。この二つの凧が、再び釜石の空を舞った。

ホランキャスター
「メッセージを大空に掲げて空をバックに見てると、直接相手は見えなくてもこの思いが届けばいいなとか、どこにでも飛んでいけそうだなとかそういう思いになる皆さんの気持ちがすごくよく分かりました」

野呂文香さん
「ガザのことをニュースで見て、悲しいなとか大丈夫かなとか、いろんなことを考えたんです。けれど、それをすぐにこれまで会ってきたガザの子どもたちに伝えることはできなくて。でも凧揚げを通していろんなことを伝えられたかもしれないなって」

野呂さんは、この4月小学校の教師になる。
相手を想う気持ちの大切さを、子ども達に伝えていくつもりだ。

取材を終えて、ホランキャスターが感じたこと

「震災当時、幼かった子どもたちが十年以上経つとそれぞれが強い思いを持って、エールを送られる側から、今度は送る側になる方もいるのだなと、奮闘する姿に胸をうたれました」」

「遠くから願っても相手に想いが届かないかもしれないとか、力になれないのではないかとか、考えすぎずにまずはその地域や人々に想いを寄せてみる、空に向かって想いを飛ばしてみるといった行動が、相手のためにも自分のためにもなるのかなと感じました」

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