輪島のビルはなぜ倒壊したのか?調査から見えてきた安全対策の落とし穴 #知り続ける

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2024-03-09 17:09
輪島のビルはなぜ倒壊したのか?調査から見えてきた安全対策の落とし穴 #知り続ける

能登半島地震で相次いだ建物の倒壊。木造家屋だけでなく鉄筋コンクリートのビルが傾くケースも相次いだ。耐震化の重要性が叫ばれるが、いわゆる“上物”の耐震性を高めるばかりではだめだと指摘する専門家がいる。今回の地震では建物を支えるために地中に打たれた“杭”が折れるなど、地下構造が壊れた可能性が高いというのだ。実は、こうした“弱い杭”は全国に残されている。

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(TBS/JNN「Nスタ つなぐ、つながるSP ~いのち~」三國谷浩司 大賀広之)

なぜ?・・‟上物”が壊れずに傾く被災地のビル

能登半島地震では、輪島市の中心部にある鉄筋コンクリート造りのビルが横倒しになった。地上7階建てで、建物の東側が地面に大きく沈み込み、国土交通省の調査ではその深さが3.5mにも達することがわかっている。しかし、建物そのものは形を保ったままだ。

輪島市ではすぐ近くの7階建てのビルも傾いた。こちらも建物そのものに大きな損傷はないが1階部分が地面に沈み込んでいる。能登の被災地では輪島以外でも、七尾市の和倉温泉で9階建てのホテルが、さらには近くのビルも傾いた。やはりこちらでも建物の片側が地下に沈み込んでいる。

こうした場所の住人に話を聞いてみると。

輪島で倒れたビルの隣に住む人
「錦川という川があったんだそうですよ。こっちの方に川があって、海の方に流れてたんですね」

輪島市に残る最古の土地図面には、ビルが建つ場所のすぐそばに「水路」が描かれている。

和倉温泉の住人
「この辺はずっと海やった。で、埋め立てしとる」

江戸時代後期に描かれた絵図によると、和倉温泉の一帯はかつて海だった。

ビルが傾いた場所は、いずれも地盤が弱い地域だ。ただ、地震に強い建物を長年研究している東京大学地震研究所の楠浩一教授は、現地調査の結果、建物が傾いた原因は「地盤の弱さだけではない可能性がある」と指摘する。

東大地震研 楠教授
「東側の地下のおそらく杭が激しく壊れて、それが倒壊の引き金になったというふうに考えてます。」

緩い地盤の建物を支える「杭」

1964年の新潟地震では、大きな建造物が相次いで倒れた。新潟市では県営アパートが倒れたが、建物には「杭」が打たれていなかった。

そもそも杭の役割は軟弱な地盤でも建物が地面に沈み込むことがないよう、支えることだ。例えば液状化が起きるような地域でビルを建てる際には、地下の「支持層」と呼ばれる固い岩盤まで杭を打ち込むことがある。当時の新潟では液状化が起きることが想定されないまま建物が設計されていて、国は建物を支える地下構造について、震度5強程度の地震まで耐えられるよう、杭などの強度の基準を徐々に高めていった。

侮れない地震のパワー~頑丈な杭が壊れるとき

しかし、その杭も地震の揺れに対して万全ではないことが研究者らによる調査や実験で分かってきた。

防災科研は、弱い地盤に打たれた杭が地震の揺れでどうなるかを確かめる実験を行った。揺れが強まると、杭に亀裂が入り、その後拡大した。コンクリートで出来た杭であっても、強い揺れにさらされると完全に破断してしまい、建物を支える力を失ってしまうのだ。

輪島の7階建てビルはなぜ倒れたのか

東大地震研究所の楠教授は、能登で倒れたり傾いたりしたビルの多くで地下にある杭が壊れた可能性を指摘する。番組では、7階建てのビルがどのようにして倒れたのか、楠教授が推定したシナリオをCGで描いた。

震度7の激しい揺れによって、右側の杭が地中で折れると、建物は支えを失い傾き始める。

その後、左側の杭は基礎から抜ける。建物の右側は地面に更に沈み込みながら倒れ、建物は最終的に完全に横倒しになった。建物の1階から5階までが地面にめり込んだ。

国土交通省が1月に行った調査では、東側の杭が地下1メートルほどの場所で折れている可能性があることがわかった。杭は直径35センチ、中空部を持つ円筒形で、西側におよそ30°傾斜した形で地表に露出しているのが見つかった。

東大地震研 楠教授
「昔の杭は今のように厳しく計算をするということがまだ行われていなかった時代のものもありますので、それ相応の地震力で壊れてくるということになります。」

古い基準で作られ、今より強度が低い杭は全国に大量に残されているという。

今後に備える最新技術

実は弱い杭を補強する新たな技術も開発されている。

地下工事を専門に手がける会社が開発した「ジェットクリート工法」と呼ばれる技術。建物の1階や地下など、基礎の上など屋内の狭いスペースに専用の機械を運び込み、そこからパイプ状の装置を地面に挿入。装置を回転・往復させながらセメントを噴射し、周囲の土と混ぜ合わせて杭に巻きつける。杭のまわりの土を固める補強技術だ。

既存の建物に適用できるメリットはあるが、全国に行き届いていないのが現状だ。

建物については多くの自治体で補助金などの制度があり、耐震補強が進められてきた。一方で、見落とされてきた地下の耐震化。今後30年間で70%の確率で起きるとされる首都直下地震など、次なる地震で杭は揺れに耐えられるのか、対策は待ったなしだ。

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