「有名人をかたるSNS投資詐欺」第4弾。ネット上に広がる「偽広告」をめぐってはフェイスブックやグーグルなど「プラットフォーム」側の対策を疑問視する声も上がっています。こうした状況に政府も“対策に乗り出す”考えを示しています。
【写真を見る】SNS投資詐欺、プラットフォーム側の対応は? 無断使用された有名人からも困惑の声「違反報告しても不適切ではないと…」【news23】
“なりすまし”被害の有名人「削除されない」 プラットフォーム側は「違反広告の検出などに力を入れている」
喜入友浩キャスター
「警察庁がSNS型投資詐欺の被害額を公表しましたが、未だにGoogleの検索結果の中にはスポンサーと書かれ、堀江貴文さん、そして森永卓郎さんと有名人の名前を使った広告がすぐ出てきました。こうした広告が耐えません」
これらは、プラットフォーム側に料金を支払って掲載されるものです。
有名人を名乗る偽の広告を入口に投資話などを持ちかけ、金をだまし取る悪質な詐欺。2023年1年間の被害額は約278億円に上っています。
被害者が最初に接触したツールとして多いのが、インスタグラム。次いでLINE、Facebookなどの大手プラットフォームでした。
Facebookで村上世彰さんの偽広告を見て、3100万円の被害に遭った男性は以前、村上さんのことを検索したことがあったといいます。
3100万円投資詐欺被害にあった男性
「自分の過去の検索履歴は当然大手のプラットフォーマーは熟知しているはずなので、(村上世彰さん)ご本人の写真の下にLINEグループが出ていたので、本当に関係してるのかもって思ってしまった」
「(プラットフォーム側の)フィルターで除外できれば、(偽広告の)掲載数は減るかもしれない」
一方、なりすましの被害を受けている有名人らも、プラットフォーム側の対応に怒りをあらわにしています。
前澤友作さんのXより
「なにより詐欺被害を受けている人が続出している中、何も対応しないFacebook社の責任を厳しく追及します」
岸博幸さんのXより
「僕の名前を使った投資詐欺の広告がまたFacebookに出ていて非常に不快」
経済アナリスト 森永康平さん
「(違反通報しても)『審査の結果、これは不適切ではない』と言って、また再掲載されてしまうことが起きていて、なかなかこちら側が通報しても、思うように対応してもらえないという現実があります」
プラットフォーム側は取材に対し、違反広告の検出などに力を入れていると回答しました。
Meta(Facebook・Instagramを運営)
「意図的に他者を欺く、故意に虚偽の表示をする、或いはほかの方法で他者の金銭または財産を搾取することを意図したコンテンツは削除しています。Metaは今後もそのような詐欺を防ぐために、検出技術の規模拡大に大規模な投資を続けていきます」
Google
「Googleは広告における詐欺行為に対して、厳格なポリシーを持っております。このような行為に対する検出と執行に多額の投資を行っており、先日、この分野のポリシーの強化を行いました」
LINE
「著名人の方からのLINEアカウントの削除要請に対しては、当社への申告に基づき、『なりすまし』等を確認できましたら、随時対応させていただいております」
有名人かたる投資詐欺被害急増 政府「取り組み進める」
ただ、専門家からは…
ITジャーナリスト 星暁雄さん
「従来の広告というと、広告代理店を通してちゃんと審査があるとかそういうイメージが、今のデジタルの世界では全く通用しない。自動的に人手を返さずにできてしまう。それでチェックが甘くなっており、かつ、そのチェックを厳しくするというのはプラットフォーマーにとって出費が増えるわけでやりたくない」
その上で、法的な規制も必要だと指摘します。こうした中、国の対応は…
——政府として、こうした広告に対して何か対策を講じる考えはあるのか、そしてプラットフォーマーに対して何か要請は考えているのか?
松本剛明 総務大臣
「検討会でも主要なプラットフォーム事業者からのヒアリングをさせていただいております。大変権利を侵害するもので、悪質なケースについては関係省庁と連携して、対処をしてまいりたいと思っております」
河野太郎 デジタル大臣
「かなりネットでも問題になっておりますので、政府としてもしっかりとこれに対応できるように取り組みを進めていきたいと思います」
欧米では規制の動きも 「犯罪起きたらプラットフォーム側が損をする仕組みを」
藤森祥平キャスター:
待ったなしで何とかしなければいけないこの問題。
ITジャーナリストの星さんのお話では、私たちがよく利用するFacebookやInstagram、X、TikTok、LINE、Googleなどデジタルプラットフォーム側の考え方としては、自由にビジネスをさせたい。彼らは情報を流しているだけで、情報の中身に手を加えることはよくないという考え方があるそうで、結果としてこうした対応に乗り出すことに消極的になってしまうと見ています。
ただ世界を見てみると、こうしたプラットフォーム側へ厳しい目が注がれています。
アメリカでは、SNSの利用で子どもが性被害を受けた画像が拡散され、自殺に追い込まれるというケースが相次ぎました。これを受け、今年の1月にFacebookを運営するMetaのザッカーバーグCEOらが議会の公聴会に呼ばれ、謝罪をするという形になりました。
またEUでは、大手プラットフォーム事業者に対して規制を設けています。2022年に施行されたデジタルサービス法は、違法コンテンツに対して排除や対応を義務付けるものになります。
これに違反すると、最大でそれぞれ世界の売上高の6%に制裁金を課すということで、世界はもう既に動き始めています。
小川彩佳キャスター:
少しずつ欧米では規制の動きも出てきているというわけですけれども、このプラットフォーム側の責任をどう考えますか。
日本総研主席研究員 藻谷浩介さん:
多分、世界で初めて車が発明されて道路が整備された20世紀の頭と同じような状況なんです。移動がすごく便利になって、みんなが自由に車に乗ることで事故が多発して、多分最初は車や道路を作った側は「責任ない」って言っていたと思うんです。
しかし、100年経ってみると多額の投資をして、ご存知の通り信号ができて、免許ができて、そして車の安全装置をつけなくてはいけない、と。
このように物事が動かざるを得ません。つまり、今のように自由だと被害が起き続けるので、規制はしなきゃいけない。ただ、規制だけだと窮屈だというのであれば、「犯罪利用でプラットフォーム側も損をする仕組みを」することもぜひ考えた方がいい。
つまり自動車事故が起きると、もちろん法律違反になるのだけれども、車会社側も欠陥車で事故が起きると訴えられて、お金を払わなきゃいけない。
他の例では、クレジットカードが不正利用されると持ち主ではなく、クレジットカード会社側が盗まれたクレジットカードの不正利用の負担をします。
同じように、プラットフォーム側がこういう詐欺などで出た被害について一定額負担するという仕組みを作ると、お金をケチらずにもっと真面目に対策をするようになる。
法律で取り締まる、取り締まるのは嫌だのイタチごっこではなくて、犯罪が起きると、プラットフォーム側が損をしますという状況に持ち込むことによって、ようやく尻に火がつくんじゃないでしょうか?新しいルールを作らなきゃいけない時期だと思います。
プラットフォームの規制は必要?「みんなの声」は
NEWS DIGアプリでは『有名人かたる投資詐欺』などについて「みんなの声」を募集しました。
Q.有名人を名乗るSNS型投資詐欺 どんな規制が必要?
「プラットフォーム事業者の自主規制」…11.7%
「国がプラットフォーム事業者への規制を強化する」…74.8%
「規制しても意味がない」…9.3%
「規制は必要ない…1.0%
「その他・わからない」…3.2%
※3月12日午後11時11分時点
※動画内で紹介したアンケートは13日午前8時で終了しました。
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません