![「女性に教育の機会を」千葉市の学校でアフガン女性向けの無料日本語講座](/assets/out/images/jnn/1051875.jpg)
千葉県千葉市中央区に在る「千葉明徳学園」の校舎を借りて、毎週土曜日の午前中に、アフガニスタン人の女性向けの、無料の日本語講座が開講されています。
【写真を見る】「女性に教育の機会を」千葉市の学校でアフガン女性向けの無料日本語講座
混乱の渦中のアフガニスタンからやって来た女性たち
取材に伺った際には、「ある/いる」の使い分けを教えていました。例えば玉子は「ある」、アフガニスタンは「ある」ですが、子どもは「ある」ではなく「いる」を使うとか。それに数字の使い方を組み合わせて、「あなたの家には自転車が何台?」という質問には、「1台あります」と答えるといった感じです。
こちらを主催しているのはNPO法人「イーグル・アフガン復興協会」。その理事長を務める、江藤セデカさんにお話を伺っています。
NPO法人「イーグル・アフガン復興協会」理事長・江藤セデカさん
「2021年からタリバンの政権に変わってから多くのアフガニスタンの方が日本に難民として逃れて、その中で向こうで学校に行けない人が沢山います。アフガニスタンの地方でも女の子が、小学校高学年になると、学校中退させて結婚する家庭がものすごい多いので、自分はそのような女の人に、高等教育が出来るような機会を作りたかったんです…」
アフガニスタンは長年の戦乱の後、アメリカの援助で支えられていた政権が、2021年8月に倒れて、イスラム原理主義のタリバンの支配が復活。その混乱によって、多くのアフガニスタン人が国外に逃れました。
セデカさんは平和な頃のアフガニスタンで生まれ育ち、カブール大学に通っていた時に、留学生だった日本人の男性と知り合います。しばらくは日本に帰った男性と文通を続けたのですが、内戦が激しくなった1983年にアフガニスタンを脱出。来日して結婚し子どもも生まれたのですが、男性は早くに亡くなってしまいます。その後、子育てをしながら、中東物産店を運営する会社を経営。その傍ら故郷に衣類など援助物資を送り続けました。
NPO法人「イーグル・アフガン復興協会」は2003年に設立。2023年11月「千葉明徳学園」から教室の無償提供を受けて、「日本語講座」をスタートさせました。ご存じの方も多いと思いますが、現在、アフガニスタンを支配するタリバンは女性の社会進出や教育を受ける権利を認めていません。またアフガニスタンは伝統文化の面からも、教育を受けたくても受けられない女性が多かったのです。講座の受講生の中で、日本に来てから2年、日本語を学び始めて半年ほどという、イブラヒム・マイヤンさんに授業の感想など伺ってみました。
イブラヒム・マイヤンさん
「漢字はとても難しいです。でも面白いです。前は学校の先生と全然話せません。いま少し先生と話せます。アフガニスタンで女の人は全然勉強できないです。学校(に通うの)がダメです。私の子どもは5人、女の人です。だから今、日本いいと思います」
マイヤンさんは、週1回の講義を半年ほど受けただけで、驚くべき上達ぶりです。こちらの日本語講座は、習熟度に合わせて3つのレベルに分けて学習を進めているのですが、マイヤンさんは上級クラスの受講生です。
人気の秘密は“安心感”と…
昨年6月の時点で日本に長期滞在しているアフガニスタン人は5618人。その内、千葉県には、2327人が住んでいます。特に四街道市や佐倉市が多いそうですが、こちらの講座には現在、主にそうした地域から90名ほどの女性が登録しています。当初は10人も集まれば…と思っていたそうですが、「無料」とはいえ、これだけアフガン女性が集まる背景には、“安心感”があると言います。
NPO法人「イーグル・アフガン復興協会」理事長・江藤セデカさん
「この学校が、女性だけの専用として、アフガン女性だけ。先生の皆さんも女性で、お母さんたちは自分の子ども、1人じゃなくて2人3人を夫に預けずに学校に連れて来て、学校側でそういうボランティアの先生が子どもの面倒見て、安心感があって、家族からそういう許可貰って」
アフガニスタンでも女子学校の先生はみな女性なのですが、こちらでボランティアで教えているのも女性で、日本語専門の先生。子どもの面倒を見るボランティアには男性も参加されていますが、そうした方々は、保育園とか幼稚園の先生です。そうした“安心”に加えて、もう一つ。この講座が開かれている場所というのが、アフガン女性を大きく惹きつけているのだそうです。
NPO法人「イーグル・アフガン復興協会」理事長・江藤セデカさん
「ここがやっぱり学校ということ。ゲートがあって学校の中に入る。その夢が一番大きいですよね」
セデカさんは、いま通ってきている女性たちが大学に行けるぐらいまでに日本語レベルを上げていけたらと考えています。女性と一緒に来ている子ども達に関しても、宿題を手伝ったり、英語を教えたりなども出来るようになったらと構想しています。また子ども達は、日本に幼い頃に来たり、日本で生まれたりで、日本の学校に通って日本語の方が上手になってしまい、両親の話すアフガニスタンの言葉(ダリー語)がわからなくなってしまう場合が多いんです。そうしたことにならないように、将来的には母国語教育まで出来るようにしたいということです。「イーグル・アフガン復興協会」では、ボランティアや協力者の方を募集しています。
(TBSラジオ「人権TODAY」担当・松崎まこと(放送作家/映画活動家))