処分の違いで何変わる?政治生命に影響も 自民党派閥の裏金事件39人の議員らの処分決定

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2024-04-05 06:00
処分の違いで何変わる?政治生命に影響も 自民党派閥の裏金事件39人の議員らの処分決定

自民党は4月4日、党紀委員会を開き、派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金事件に関わった議員ら39人に対する処分を決定した。

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最も重い処分となったのは安倍派幹部の塩谷立元文科大臣と世耕弘成前参院幹事長の「離党勧告」で、最も軽い処分となったのは500万円以上~1000万円未満の不記載などがあった安倍派議員17人となった。
離党勧告を受け、世耕氏は直後に離党届を提出し、受理されている。

自民党はこれまで「政治と金」の問題で不起訴となった議員に対しては、基本的に処分をおこなってこなかったが、今回は社会的影響や世論におされる形で処分せざるを得ない状況に追い込まれた形だ。

処分をめぐっては、党幹部の間にも「党内融和を考え甘い処分にすべき」という意見と「世論を考えた厳しい処分にすべき」という意見があり、調整は難航した。
8段階ある自民党の処分、その違いで一体何が変わるのだろうか。

自民党8つの処分

自民党の処分には重い方から①除名、②離党勧告、③党員資格の停止、④選挙の非公認、⑤国会・政府の役職辞任勧告、⑥党の役職停止、⑦戒告、⑧党則遵守の勧告がある。

この処分の1段階の差は、選挙での当落さえも左右しかねず、処分を受ける議員にとってはまさに死活問題となる。

以下、党関係者への取材などをもとに、それぞれどのような処分なのか、また処分が1つ上がるごとにどのような影響が出てくるのかをまとめた。

⑧党則遵守の勧告(該当無し)
党則を守るよう勧告するもので、スポーツで例えるならレフェリーが口頭で注意するようなもの。

⑦戒告(安倍派議員17人)
問題行動を戒めるための注意。サッカーで言うところのイエローカードのようなもの。もう一度同じような過ちをすればより重い処分となることもある。
→不記載額が500万円以上 1000万円未満議員
対象:丸川珠代元五輪担当大臣、柴山昌彦元文科大臣ら17人

⑥党の役職停止(安倍派・二階派議員17人)
党の役員や部会長など、党の役職に就くことが出来ない。
※3か月以上2年以内の期間を定めて実施。期間が過ぎれば自動的に解除される。
→(1年)派閥の幹部および5年間の不記載額が2000万円以上の議員
対象:松野博一前官房長官、萩生田光一前政調会長、武田良太元総務大臣ら9人
→(6か月)上記以外で、5年間の不記載額が1000万円以上2000万円未満の議員
対象:衛藤征士郎元防衛庁長官、杉田水脈衆院議員ら8人

⑤国会・政府の役職辞任勧告(該当無し)
大臣・副大臣・政務官など政府の役職や、各委員会の委員長など国会での役職に就くことが出来ない。

以上は、党紀委員会だけでなく、幹事長の権限で処分をおこなうことも出来る。

以下は、党紀委員会のみが処分をおこなうことができ、選挙への影響も大きくなるため、処分を受ける議員にしてみれば非常に重い処分だと言える。

④選挙の非公認(該当無し)
選挙の際、公認を得られず無所属での出馬となる。このため比例候補となることが出来ない。
衆議院では、比例復活出来なくなる他、政見放送も出来なくなる。
また、党公認候補に比べ、割り当てられるポスターやビラの枚数も減ることになる。
自民党ではこれまで「選挙の非公認」の処分はおこなわれておらず、今回は一時検討されたものの、結局踏襲された。

③党員資格の停止(3人)
自民党員としての資格が停止されるため、総裁選への立候補や投票が出来なくなるほか、党の会合に出席することなども出来なくなる。
選挙区の支部長にもなれず、企業や団体から寄付が受けられなくなるため資金面での影響も大きくなる。
※3か月以上2年以内の期間を定めて実施。期間が過ぎれば自動的に解除される。
対象:(1年)下村博文元文科大臣、西村康稔前経産大臣
対象:(6か月)高木毅前国対委員長

②離党勧告(2人)
自民党を離党するため、自民党員としての活動が出来なくなる。
離党勧告を受けて離党しなければ、除名となる。
会社で言うところの「退職奨励」のイメージ。
自ら離党することで、復党の道が残される。
対象:塩谷立元文科大臣、世耕弘成前参院幹事長

①除名(該当無し)
自民党員ではなくなり、基本的に復党も許されない。
会社で言うところの「懲戒解雇」のイメージ。

以上のように、自民党の処分は8つに分かれている。

「政治生命を失う可能性」と「党内政局への影響」

今回の処分は、議員の政治生命や、自民党総裁選にも大きな影響を与えることになる。

例えば、離党勧告を受けた塩谷元文科大臣は、2021年の衆院選で立憲民主党の源馬謙太郎氏に敗れ比例復活している。今回、離党勧告を受けたことで自民党員ではいられなくなり、小選挙区からの立候補しか出来ず比例復活をすることが出来ないため、前回と同じ結果となれば政治生命を失うことにもなりかねない。

一方、同じく離党勧告を受けた世耕前参院幹事長は、2019年の参院選では選挙区全国トップの得票率で当選するなど、選挙には強いため、かねてから摸索していた衆院への鞍替え出馬が注目されている。いずれにしても、次に立候補する国政選挙で無所属で勝利した後、自民党に復党するのではないかと見る党関係者もいる。

また、世耕氏に関しては、離党することで影響が大きくなると見られるのが、今年9月に予定される自民党総裁選だ。世耕氏は約40人いる参院安倍派「清風会」の会長を務め、岸田派や二階派に匹敵するほどの一大勢力を率いていた。この世耕氏が離党したことで総裁選への影響は避けられない。

「党員資格停止」「選挙の非公認」検討も・・・弱まった処分

当初、塩谷氏、世耕氏の処分は「③党員資格の停止」または「④選挙の非公認」を軸に検討されていた。だが、厳しい処分を求める世論や党内の声もあり、より重い「②離党勧告」へと処分は引き上げられた。

その一方、一時は「③党員資格の停止」または「④選挙の非公認」を軸に検討された萩生田前政調会長、松野前官房長官、武田元総務大臣は、党の重鎮議員らからも擁護する声が上がる中「⑥党の役職停止」へと処分が引き下げられる結果となった。

党内に充満する不満

今回の裏金事件を巡り、検察は世耕前参院幹事長ら安倍派幹部に対しては、「不起訴(嫌疑なし)」としている。にもかかわらず、世論におされる形で離党勧告などの厳しい処分を科すことは法治国家としての課題も残るように思われる。

ただ、安倍派幹部は収支報告書への不記載などをめぐり「知らない」「承知していない」などと繰り返すばかりで、自ら実態解明をおこなう姿勢も見せず、政治不信や党の信頼を損ねてきたことも事実だ。今後は検察審査会でも安倍派幹部らの責任は問われることになる。

党内の処分をめぐっては「基準が曖昧で場当たり的だ」「捜査能力のない人達で決めた人権侵害だ」などと不満も充満している。
何より、党の責任者である岸田総理が処分対象となっていないことに対し党の重鎮からも「岸田総理にも党のトップとしての責任はある。処分がされなければ火を噴く」などと、責任を問う声が上がっている。

政治資金パーティーのキックバックがいつから始まり、安倍派ではどのようにして復活したのかなど、実態が明らかにならないまま処分だけが決まることを疑問視する声もある。

党執行部からは、処分をおこない、幕引きを図りたいとの思惑も透けて見えるが、実態解明が進まない限りは世論の納得は得られず、野党の国会での追及も収まることはないだろう。

最新のJNNの世論調査では、次の衆議院選挙で「政権交代をのぞむ」が42%と、「自公政権の継続をのぞむ」の32%を大きく上回った。
“裏金事件の実態解明に努め、政治と自民党の信頼回復をすることが出来なければ、国民の審判が下る日がくる”
そうした危機感を持つことが出来るのかに、自民党の再起はかかっている。

TBSテレビ政治部 与党担当キャップ
中島哲平

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