富士山「通行料2000円」高い?安い? 事前予約など新ルール導入で混雑や“弾丸登山”を防げるか【ひるおび】

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2024-05-15 16:04
富士山「通行料2000円」高い?安い? 事前予約など新ルール導入で混雑や“弾丸登山”を防げるか【ひるおび】

日本人のみならず、外国人観光客にも人気の富士登山。
この夏のシーズンから通行料の徴収や事前の予約システムが導入されます。弾丸登山や軽装登山、混雑が問題となる中、新ルールの導入で解消されるのでしょうか?
日本山岳ガイド協会認定登山ガイドの上田洋平氏に聞きます。

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富士登山に新ルール導入

富士山に登るには、4つのルートがあります。
2023年の全登山者数は22万1322人で、そのうち約6割が山梨側からの「吉田ルート」を利用しています。

山梨県は、吉田ルートの5合目に7月1日からゲートを設置し、1人あたり2000円の通行料(任意の協力金1000円とは別)を徴収します。
さらに山小屋宿泊者を除き、午後4時から午前3時までは入山を規制1日に4000人を超えた場合も入山規制をする事にしています。

観光客からは様々な声がー

ニュージーランドからの観光客
「安全のために登山者数を管理することはいい考え」

アメリカからの観光客
「人が多すぎるので、コントロールする必要があるのでいいと思う」

大阪からの観光客
「それぐらい制限しないと、人だらけで登るに登れない」
「知っていないと、登れなくて残念ですよね」

背景に‟弾丸登山”や‟軽装登山”

規制には、外国人観光客の急増による山頂付近の混雑の解消や、“弾丸登山”防止の狙いがあります。
“弾丸登山”とは、御来光を見るため五合目を夜間に出発し、山小屋などで十分な休息を取らず一気に山頂を目指す危険な登山を指します。昨シーズンの弾丸登山者数は約3800人でした。

日本山岳ガイド協会認定登山ガイド 上田洋平氏:
寝ずに登ることで、体力面の問題や睡眠不足がある。その状態で登り続けると疲れが溜まってきて高山病になりやすいというところが懸念されますね。

さらに目立つのが、サンダルや半袖・半ズボンなどラフな服装で登る“軽装登山”。外国人観光客に多く見られます。
上田氏によると、軽装で登山することは大変危険です。富士山は岩場など険しい道が多く、また山頂付近は強風により体感温度は夏でも0℃くらいで、低体温症のおそれがあると言います。

登山ガイド 上田洋平氏:
雨や風がひどいときなど、無理やり登ってしまうと低体温症まっしぐらだと思いますので、事故防止のためにもなにかしら装備をチェックするルールがあるといいと思います。

2000円は高い?安い?通行料に賛否

通行料について『ひるおび』で行なったLINEアンケート(総回答数4533)では
「高い」・・・33%
「安い」・・・67%

という結果でした。

【高いと思う人の意見】
「高校生にはちょっと高いと思う。学割があってもいいのでは」
「登山はお金がかからず楽しめる趣味なのにそれが2000円とられると思うと高く感じる」

【安いと思う人の意見】
「富士山をきれいに保つためにお金がかかるし気軽に登って救助されるニュースも多い。環境や人の命を守るためなら5000円くらい払ってもいいと思う」
「海外での入山料はもっと高いので5000円でも問題ない」

海外の入山料を見てみると、アメリカのデナリ(旧マッキンリー)は約6万7400円。中国・ネパールのエベレストは約170万円となっています。

弁護士 八代英輝:
2000円は安いですね。環境保全や環境負荷について、それから案内板や登山道の整備やゴミの片付けなどやらなければならないことはたくさんありますよね。
まずは導入でこの金額なんだと思いますけれど、もっともっと上げていく必要が出てくるんだろうなと思います。

登山ガイド 上田洋平氏:
安すぎではないかと思っています。海外の入山料と比べても破格値じゃないかなと。
日本人は地元なので安めに設定して、外国の方は5000円とか1万円とかにしてもいいのでは。他の国でもそのような対応をしてますし、同じようにやればいいんじゃないかなと思います。

「通行予約システム」5月20日から 懸念点も

入山規制に伴い山梨県は、山梨県側の登山ルートについて5月20日から「通行予約システムを」導入すると発表しました。
登山前日までに名前や連絡先などを専用サイトに登録し、通行料2000円を事前に決済。
予約完了時に届いたQRコードを5号目の窓口で提示すれば支払い証明のリストバンドが渡される仕組みです。
日本語・英語・中国語に対応しています。

予約システムの上限は3000人で、当日の受付1000人分を確保しています。事前の予約枠が余った場合は当日分に回し、受付可能な人数はSNSなどで発信予定です。
自己都合でのキャンセルや変更への返金は原則できないとしています。

この予約システムには懸念点もあります。
約2000人収容できる山小屋の宿泊者は登山規制の対象外で、予約システムとは連携していません。
予約システムで事前予約を行なっていない宿泊予約者が多くいれば、規制の4000人を大きく上回ることも考えられます。

吉田ルートの山小屋関係者は、
「山小屋の予約と勘違いしたり、今後いろいろと問題が出てくるのでは。今月7日から(今シーズンの)予約を始めたが、既にほぼ満室」
と話しています。

登山ガイド 上田洋平氏:
システムに関しては、団体客用に1人が100人分を一括で予約できちゃうので、転売みたいな行為が行われないかというのも、個人的には心配です。

また静岡県側の3つのルートでは、登山計画などを記入するウェブでの事前登録を促すということですが、「任意」となっています。

恵俊彰:
4つのルートをみんなで話し合って同じ条件でということは不可能なんでしょうか?

登山ガイド 上田洋平氏:
管轄しているのが吉田ルートは山梨県で、その他の須走・御殿場・富士宮は静岡県ですので、県同士がうまく連携してやっていただきたい。
条件が同じである方が、登る人にとっても分かりやすいんじゃないかと思います。

恵俊彰:
とにかく何か富士山を守っていかなきゃいけないですね。

登山ガイド 上田洋平氏:
環境面でもいろいろお金のかかるところはありますので、今回の通行料は非常に良い取り組みだと思います。今後、値上げなどしてしっかり回るようにしていただきたいなと思います。

(ひるおび 2024年5月14日放送より)

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<プロフィール>
上田洋平氏
日本山岳ガイド協会認定登山ガイド
日本オートキャンプ協会公認オートキャンプ指導者

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