芝浦工業大学、柔軟な触覚センサーを活用した指先の微細動作識別システムを開発

2024-05-22 10:00

芝浦工業大学(東京都江東区/学長 山田 純)のシステム理工学部生命科学科・佐藤 大樹教授らの研究チームは、柔軟な触覚センサーを活用し、手指の微細な動きを高精度で識別できるシステムを開発しました。このシステムは、さまざまな「つまみ動作」を90%以上の識別率で分類することが可能です。

研究の背景と目的

微細運動スキルは人間の認知において重要な役割を果たしていますが、これを客観的に定量化し評価することは長年の課題でした。ビデオコーディングなどの従来の方法は時間がかかり、コーディング者のバイアスに影響されやすいという問題があります。特に乳幼児の指の動きを評価するには、モーションキャプチャーや装着型デバイスには限界がありました。

研究の概要

本研究では、電気インピーダンス・トモグラフィ(EIT)に基づく柔軟な触覚センサーを用いて、指の微細な動きを評価するシステムを開発しました。このシステムは、16個の電極を備えたフレキシブルプリント回路基板と導電性材料を使用し、さまざまな指の動きから電圧データを取得、数値解析ソフトウェアを使って接触分布画像を再構成します。

実験と結果

12人の成人参加者が、指の本数と方向によって特徴付けられる6種類のつまむ動作を行い、電圧信号と再構成画像を用いて動作を分類しました。結果として、再構成画像を用いた場合の分類精度は79.1%、電圧信号を用いた場合の分類精度は91.4%に達しました。

今後の展望

本研究の成果は、知育玩具の開発や医学研究への応用が期待されます。特に、乳幼児の手指運動を促す玩具の開発支援や、発達医学研究における人手不足の解消に寄与する可能性があります。また、将来的にはオンライン医療の分野にも貢献できると考えています。

語句解説

電気インピーダンス・トモグラフィ(EIT):非侵襲的な生体断層イメージング技術で、電気的インピーダンスの変化を計測・可視化します。
トモグラフィ型触覚センサー:接触圧力により電気接触抵抗が変化することを利用し、電気接触抵抗分布を可視化する技術です。
微細運動スキル:精密把持などの手指の微細な動作技能を指します。
ビデオコーディング:行動解析手法の一つで、記録映像を観察者が分類します。

研究助成

本研究の一部は、JSPS科研費(23H00955)の助成を受けています。

論文情報

著者:芝浦工業大学大学院理工学研究科 朝火 龍之介、東京大学大学院新領域創成科学研究科 講師 吉元 俊輔(現 大阪大学大学院工学研究科 准教授)、芝浦工業大学システム理工学部生命科学科 教授 佐藤 大樹
論文名:Development of Pinching Motion Classification Method using EIT-based Tactile Sensor
掲載誌:IEEE Access
DOI: https://doi.org/10.1109/ACCESS.2024.3395271

芝浦工業大学について

芝浦工業大学は、工学部、システム理工学部、デザイン工学部、建築学部、大学院理工学研究科を有し、グローバル教育と産学連携研究活動に注力しています。東京都と埼玉県にキャンパスを構え、2027年には創立100周年を迎え、アジア工科系大学トップ10を目指しています。

URL: https://www.shibaura-it.ac.jp/