「日本版DBS」性犯罪歴で“最長20年”子どもと接する仕事に就けず なぜ“一生”ではない?弁護士が解説【Nスタ解説】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-05-22 20:26

子どもと接する仕事に就く人に 性犯罪歴がないかを確認する 「日本版DBS制度」を創設する法案がきょう衆議院の委員会で可決されました。 ただ、性被害に遭った当事者からは 「不十分」との声が出ています。

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「穴だらけで、非常に不安」「一番重要なことは子どもを守ること」

一般社団法人 Spring幹事 金子深雪さん 
「今も被害に遭った当時のことというのは、もう温度から、においから全て覚えているんですけれども」

性被害に遭った人たちをとりまく法律や、さまざまな制度の改善を求め、政策提言活動に取り組む金子深雪さん。自身も子どもの頃に被害を受けた一人です。

小学2年生のとき、校庭で遊んでいたところ、突然、見知らぬ男性から体を触られたと言います。さらに…

一般社団法人 Spring幹事 金子深雪さん
「小学6年生の冬に(担任の教諭に)突然後ろからバッと抱きつかれて、胸を掴まれて、『大きくなったな』って」 

小学生で経験した2度の性被害。40年近くが経った今も、「癒えない傷」として心に刻みつけられています。 

きょう、「日本版DBS制度」を創設する法案が衆議院の特別委員会で全会一致で可決しました。

学校や保育所に対し、子どもと接する仕事に就く人について性犯罪歴を確認するよう義務づけ、前科があった場合には直接子どもと関わる業務を担当させないことなどが盛り込まれています。

ただ、被害者側などからは確認する性犯罪歴が限定的、などの批判が寄せられました。 

立憲民主党・大西健介議員
「下着窃盗やストーカー行為が対象にならないという答弁がありましたが、これでは子どもを性暴力から守ることはできないと思いますけど、大臣いかがですか?」

加藤鮎子こども政策担当大臣
 「性的な動機に基づくものなのかどうか、現実問題、(判断が)難しいという問題がございます」 

きょうの委員会では附帯決議がつけられ、▼下着窃盗やストーカー行為なども「性暴力」として対象にすることや、▼ベビーシッターや家庭教師なども性犯罪歴を確認する対象とするよう検討することなどが盛り込まれました。 

野党側も今回の法案は「不十分」としつつも、「制度を始めることが最大の抑止効果になることを期待する」と指摘し、賛成に回りました。

金子さんは「一番重要なことは子どもを守ること」だと訴えます。

一般社団法人 Spring幹事 金子深雪さん 
「(法案成立は)歓迎できること。ただまだまだ穴だらけであるということ、非常に不安を覚えます。子どもを守るということが一番重要なんだと。そこを法律を作る人たちも、実際に実行していく人たちも常に念頭に置いていていただきたいなと」 

法案はあすの本会議で採決が行われ、衆議院を通過する予定です。

性犯罪歴を確認する法案「日本版DBS」とは?

小笠原亘キャスター:
「日本版DBS」とはどういうものかというと、「子どもと接する仕事に就く人に性犯罪歴がないかを確認する制度」です。

ただ、この内容で子供を本当に守ることができるのかなど、▼実用性を不安視する声や、▼制度の問題点を指摘する声も上がっています。実際に21日には市民団体が、内容の変更を求める要望書を提出しています。

今回は「日本版DBS」の問題点となる二つについて。▼対象となるのはどういった事業者なのか、▼対象となる犯罪はどういった犯罪になるのか、詳しく解説します。

まず対象となる事業者は、
【義務】学校、認可保育所などの公的機関
【任意】塾や、スイミングスクールなどのスポーツクラブ、芸能事務所などの民間事業者

任意の事業者については、“国が認定をする”という形で、事業者が従業員の前科を確認することができます。

国は認定されている事業者を公表します。公表することにより認定事業者は、「認定の表示可能」になり、広くアピールすることができます。そうすることで、子どもを預ける側は、認定事業者の方に子どもを預けようと思うので、政府としては「認定事業者に人が集まるので、任意でも実効性がある」という見解です。

“個人契約”や“ボランティア”はどうなる?

しかし、ベビーシッターや家庭教師などの「個人契約」の場合、あるいは野球のコーチなど、地域の「ボランティア」はどうなるのでしょうか。

弁護士 河西邦剛さん:
これは「任意の対象ですらない」ということになってくるので、親としては、例えば個人の家庭教師や、ボランティアの方々に任せるのはどうしても躊躇してしまいます。大学生など「個人の家庭教師でやりたい」という人の働くチャンスを失う結果にもなりかねません。

ですが他方で、子どもは大人に比べて、被害の声を上げにくい、また同時に被害に遭ってることすらわからない場合がある。「“圧倒的な弱者”である子どもを社会全体で保護していこう」というところから法案成立を急ぐ必要がありました。

欧米に比べても日本というのはこの制度が遅れている。実は、前回の国会で提出がされていた可能性もありましたが、どの範囲にするかなど、いろんな議論があり成立が遅れてしまいました。まずはこの法律を成立させ、社会全体で子どもを守っていく。ここを優先させた結果になっています。

なぜ「生涯」ではなく「最長20年間」なのか

ホラン千秋キャスター:
例えば「何歳以下の子どもと関わる場合は、必ずこういったところに登録してください」など、業種で縛らなければいけないものなのでしょうか。

河西邦剛さん:
本来ならば、どういった会社であっても「内部に性犯罪を犯した方がいる」というのは抵抗があるし、正直ネガティブに捉えますよね。どの事業者も対象にするという可能性はあり得ますが、同時に重要なプライバシー問題にもなってきます。また事業者に国が提供して、そのプライバシーがちゃんと守れるのか、という問題もあります。

なので、まずは国が前科情報を提供する先として、子どもに接する学習塾、スイミングスクール、芸能事務所などを任意の制度の対象にした、というところになってきます。

井上貴博キャスター:
職業選択の自由もプライバシーも加害者に関して守らなければいけない、というところもあると思います。しかし、一番大切なのは子どもの安全だとすると、性犯罪歴がある人は「最長20年間」は子どもに関わる仕事に就けません。今後の議論にもなると思いますが、なぜ20年で区切るのでしょうか。生涯できなくてもいいのではないか、とも思いますが。

「食べチョク」代表 秋元里奈:
職業選択の幅が狭まる、とはいえ他の職種には就けるので「子どもの性犯罪を極力ゼロに近づける」という意味でいうと、やはり厳しくしていった方がいいと思います。

それこそ共働きが増えていく中で、ベビーシッターを使う人もすごく増えているし、個人契約とはいえ、それをマッチングするプラットフォーマーは必ずDBSで確認しなければいけない、というような義務化していかないと、どうしても接点というのは残っていくので、性犯罪を犯した人が逆に民間の方に流れていく、というのは少し怖いなとは思います。

河西邦剛さん:
今回「最長で20年間、なぜ一生ではないのか」疑問ですよね。どうやら、過去の犯罪歴を調べてみると「9割以内の人が20年以内に再犯してる」と。なので、人権の問題と法案提出を両立させる中でどこで線を引くか、今回は20年で切ったということになっています。

<プロフィール>
河西邦剛:
レイ法律事務所パートナー弁護士
芸能・エンターテインメント分野の法律問題が専門

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