家計を直撃する値上げは止まりません。6月の食品の値上げは614品目で、電気とガスも補助金が廃止され値上がりします。こうしたなか始まったのが1人4万円の「定額減税」。消費を刺激する狙いがあり、セールも始まっていますが、「制度が複雑」「1回限りなので効果は疑問」という声も上がっています。
【写真を見る】1人4万円「定額減税」スタート 企業からは「制度が複雑」…消費者からは「効果は疑問」の声も【news23】
止まらない値上げの中、定額減税スタート
神奈川県のこちらのスーパー。6月から値上げしたモノは…
株式会社セルシオジャパン バイヤー久保田浩二さん
「実際の値上げ幅になるんですけども、ポテトチップスですと、軒並み価格が10円。こちらの商品でしたら税抜き価格169円が179円に上がりました」
袋に入ったスナック菓子は10円から20円値上げ。また、チョコレート菓子の定番「たけのこの里」や「きのこの山」もそれぞれ10円値上げしました。
10代女性
「こんなした!?250円もしたっけ、高くない」
20代男性
「気軽にはなかなか買いづらいですね」
10代女性
「ご褒美になっちゃうよね」
帝国データバンクによると6月の値上げは、「加工食品」や「菓子」など614品目。家計への圧迫は、まだまだ続きそうです。
株式会社セルシオジャパン バイヤー久保田浩二さん
「1回の買い物で“ついで買い”も含めて10品購入されていた部分が、やはり、すこし手が止まって9品、8品ぐらいまで抑えているのかなという印象は正直受けています」
一方、イオンでは「定額減税セール」が…
記者
「こちらの売り場、除湿器や炊飯器が並んでいます。そして、テレビは4万円。こちらのベッド一式も4万円という価格で販売しています」
通常5、6万円で販売している商品を税抜きで4万円均一で販売します。定額減税の1人あたりの減税額に合わせました。
客
「マットレスとか買ってみたいな、とか思っていたので、ちょうど良い機会かなと思っています」
今月から始まった「定額減税」。1人あたり年間で所得税で3万円、住民税で1万円のあわせて4万円を差し引くもので、年収2000万円以下の人が対象となります。例えば、夫婦と子ども2人の場合、世帯全体では4万円×4人分、合計で16万円の減税になります。
定額減税に困惑の声も…
この制度に困惑している人がいます。従業員25人の会社で経理担当の松下さんは定額減税の対応に追われていました。
伊達建設 経理担当 松下真弓 副社長
「この方の場合、こちらに定額減税が1万870円ということで。扶養家族もいらっしゃらないので、あと2回。全部で3か月で定額減税の処理が終わります」
人によって減税の金額や期間が異なります。さらに、給付が必要になる場合も。制度が複雑なため、給与などを支払う企業では大きな事務負担が生じていました。
ある調査によりますと、従業員が100人程度の中小企業では、事務負担が40~52時間増えると試算しています。
伊達建設 経理担当 松下真弓 副社長
「細かい事務作業がたくさんあって。本当にみんながこういう減税がよかったなって思うのかな、と正直思いますけど」
国民の生活不安を払拭し個人消費を上向かせる減税となるのでしょうか?
女性「結構大きいと思います、4万円というのは。助かります」
女性「大したことない。月にしたら3000円ぐらいでしょ」
男性「1回限りなので、効果があるのかな」
効果は限定的?企業・自治体の負担重く…
藤森祥平キャスター:
定額減税について専門家の方に話を聞きますと、GDPの押し上げ効果は0.19%(年間)、約1兆2000億円だといいます。野村総合研究所の木内登英さんは「物価高の逆風を打ち消すほどの影響力はない」と話しています。それほど消費に回すことはなかなかできず、貯蓄に回ってしまう、という見解です。
ただ定額減税を巡り、経理担当の負担をはじめ、自治体への事務経費が無視できません。コールセンターの設置費用やシステムの構築などについて国から約809億円の税金が投入される見通しです。
小川彩佳キャスター:
「減税は減税なので嬉しい」という声など様々な声がありますが、この1回の減税で企業や自治体などが大きな負担を被ることとなっています。
データサイエンティスト 宮田裕章さん:
いろいろな思惑のもとで走った減税ですが、やはり予測だけではなく、効果も実際検証した方がいいです。「生活者がどう感じたか」「それが国としてどうGDPに貢献したか」だけではなく、対応コストや人件費など、マイナス部分もあります。それも含め「一体これが何だったのか」という検証はやはりすべきだな、と。
ただ一つ惜しむらくは、こういう細かい個別対応の仕組みを作ること自体は、本来レガシーにもなりうるはずでした。今回はこれ一回で捨ててしまうということなので、本当に大きな損失ですが、コロナのとき海外は何をしてたかというと1人1人の所得や苦しさに応じて迅速に給付が出せたわけですよね。
もし今回そういうような仕組みを一つレガシーにしながら、多様な人に寄り添う仕組み。これをデジタルで作れば本当はよかったのにな、というふうに感じますね。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
今の給付のシステムには、マイナンバーカードがまず普及して、そのマイナンバーカードの銀行の口座を紐付けなくてはいけない。さらに所得を把握して、例えば「年収500万円以下の人に一斉に給付できるシステム」をやろうと思えば実はそう難しいことではなくて。先進国では当たり前のシステムですよね。
宮田裕章さん:
いや、その通りなんです。まずそういう意味で、住民税の仕組みを使えば、苦しい人たちには給付ができるし、所得まで抑えれば申請もいらない。
星浩さん:
ただ今回の減税は、「政策としてもインフレを加速するんじゃないか」や「借金をして減税とは一体何事だ」という問題がたくさんある。他にも、岸田総理が政権浮揚の策として使っている、という。いろんな意味で問題が多すぎるんです。
ただ、おそらく国民の意識は少しずつ変わり始めていて、「一時的なつかみ金が欲しい」というより、「将来不安を解消してほしい」とか「将来世代にそのツケ回しをすることを少しずつ止めていきましょう」という意識に変化してるので、どうも国民の意識を読み誤っているのではないか、というのがかなり深刻な問題だと思います。
小川キャスター:
「長い目で見たときの安心をください」という思いもありますし、6月から電気代も値上がりしますから。どれだけその恩恵の実感を得られるのか、ここはかなり疑問符がつくところです。
『定額減税』について「みんなの声」は
NEWS DIGアプリでは『定額減税』について「みんなの声」を募集しました。
Q.4万円の「定額減税」何に充てる?
「生活必需品」…39.3%
「ぜいたく品の購入や飲食」…2.6%
「借金の返済」…5.5%
「節約や貯蓄」…31.5%
「その他・考えていない」…21.0%
※6月3日午後11時10分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは4日午前8時で終了しました
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<プロフィール>
宮田裕章 さん
データサイエンティスト
慶応大学医学部教授
科学を駆使して社会変革に挑む
星浩 さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年