「自民党のガバナンスが崩壊」世論の7割が“評価しない”自民の修正案

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-06-08 06:23
「自民党のガバナンスが崩壊」世論の7割が“評価しない”自民の修正案

6日、政治資金規正法の改正案が衆議院を通過した。岸田総理が麻生副総裁、茂木幹事長の反対を押し切り公明党、日本維新の会に大幅譲歩した自民党案については、最新のJNN世論調査で7割が「評価しない」結果だった。なぜ評価されないのか。国会での議論が国民感覚とはかけ離れていたことが世論調査から見て取れる。

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“禁止すべき”半数以上なのに…全く触れられなかった「企業・団体献金」

パーティー券の購入者の公開基準について、現在の「20万円超え」から「10万円超え」(自民党案)にするか「5万円超え」(公明党案)にするか。「5万円超え」にすることに猛反対する麻生氏、茂木氏だったが、最終的に岸田総理は公明党案に譲歩する方向に舵を切った。そんな岸田総理がどうしても譲れなかったものが、「企業・団体献金の廃止」と「政治資金パーティーの禁止」だったとされる。

結果、今回の自民党の修正案に「企業・団体献金」の見直しは全く盛りこまれなかった。与党協議では議論の土台にすら上がっていない。修正案に賛成した維新をふくむ、ほぼ全ての野党が「企業・団体献金の禁止」を主張していたにもかかわらず。
野党側は「政策がゆがめられる懸念がある」などとして禁止を主張したが、岸田総理は「多くの出し手による様々な収入を確保することが、政策立案における中立、公正やバランスの確保において重要。一部の企業からお金を受けることによって、政策がゆがめられることはない」と断言した。果たして、この総理の主張にどこまで説得力があるだろうか。

今回の世論調査で企業・団体献金について聞いたところ、「禁止すべき」は54%で「認めるべき」28%を大きく上回っている。(自民党支持層に限れば「禁止すべき」33%、「認めるべき」46%と逆転する)

企業・団体献金についてはかねてより「金権腐敗の温床」と問題視され、30年前の細川護熙総理と自民・河野洋平総裁による平成の政治改革で、規正法の付則に、政党向けの企業・団体献金の5年後の「見直し」が明記されたが、うやむやにされて今に至る。河野氏は23年末に衆議院が行ったオーラルヒストリー事業のインタビューでこう訴えた。

「企業献金の廃止は、個人献金に振り替えろという話はなかなか難しいだろうから、企業献金を止めて公費助成にしようということでした。だから、公費助成が実現したら企業献金は本当は廃止しなきゃ絶対におかしいんですよ。しかも、激変緩和のため5年後に見直すと法律の附則に書いたのにスルーした。見向きもしないでスルーしてもう25年たったんだからね」

河野氏は税金を原資とする政党交付金が交付されている以上、企業献金は廃止すべきだと、怒りをもって語っている。

5万か10万か…そこ揉めるところ?国民不在の「政治資金パーティー」の議論

94年の政治改革で政治家個人への企業・団体献金が禁止された。しかし実態は献金が「パーティー券」という形にかわり、企業・団体がパーティー券を政治家個人の政治団体から購入するという“抜け道”が残った。

今回、政治家が資金の集める方法としてパーティーを開くことに「納得できるか」という聞き方で調査を行った。結果は「納得できる」25%、「納得できない」73%。自民党支持層に限っても「納得できる」42%、「納得できない」57%と納得できない人が多数を占める。

しかし今回議論になったのは、パーティー券の公開基準を現在の20万円超から「10万円超」にするか「5万円超」にするか。はじめから「パーティーは存続ありき」で微に入り細に入る国民不在の議論ではなかったか。しかも実施は法律の施行後1年となる2027年1月1日から。自民党幹部の中からも「本当に世間が分かっていない」とため息が漏れた。

一方、野党側からも議論に水を差す出来事があった。立憲などは「パーティー禁止」の法案を提出したものの、議論の最中に立憲の岡田幹事長や大串選対委員長らがパーティーを実施しようとした(後に中止)。岡田幹事長は「法律ができるまでに自分たちの手を縛らなきゃいけないなんて話は普通はない」と強弁したが、本気度に疑問符がついた。

政策活動費「10年後公開」の不可解

とりわけ批判の矛先となったのは政策活動費の領収書公開が「10年後」となったことだ。また上限額が明記されなかったことや、10年後に領収書が出てきたとしても「黒塗り」にされる可能性があることが審議で明らかになった。さらに移行期間を経て実施するのは2026年1月1日からで、パーティー券の公開基準引き下げの実施時期とずれがある。この「10年後公開」には、共産党・小池書記局長がこう指摘した。

「政治資金収支報告書の保存期間は3年です。不記載などの罪に問われうる公訴時効は5年です。10年に一体どういう意味なのか、大体今の議論している政党幹部が10年後国会にいるのかどうかすらわからない全くふざけた中身だと言わなければなりません」

このほか、国会審議では「感熱紙タイプの領収書は10年後には印字が残らない」ということも議論になった。

これらの指摘に対し、岸田総理は「保存、提出、公開については、具体的な制度の詳細は早期に検討を行い結論を得るということになっている。具体的なこのルールについて、法案が成立した暁には、罰則の要否等も含めて、各党各派で会派で検討を行われるもの」と正面から答えることはなかった。

維新との間で合意した上限額含め、政策活動費の詳細について、総理は「検討」を連発し、“生煮え”感を印象づけるものとなった。

修正案の付則第14条には、「制度の具体的内容については早期に検討が加えられ、結論を得るものとする」との文言が書かれてあるが、元官僚で法案立案に携わった経験をもつ、ある野党議員は、「この表現は官僚の世界だと“やらなくて良いよ”ってことだから」と解説する。

「評価されるわけないじゃないか」内閣支持率は4.7ポイント下落

岸田内閣の支持率は前月調査から4.7ポイント下落し、25.1%だった。麻生副総裁、茂木幹事長の反対を押し切り、総理の決断で公明、維新に大幅譲歩した今回の自民党の改正案だったが、7割が評価せず、政権の支持率にも繋がらなかったようだ。

この結果を聞いた自民党幹部は「予想通りだ。今回の結末が評価されることなんて絶対ない」と淡々と話した。

自民党議員にとっては、パーティー券の公開基準を「5万円超」に引き下げることで収入が激減する議員もいることから総理の求心力低下や、公明などの案に反対する麻生氏らとの確執がより深まったことなどが指摘された。

さらに自民、維新の党首間で合意していたにもかかわらず、政策活動費をめぐり「全て公開すべき」とする維新に対し、自民の修正案に「50万円を超えるものに限る」と条件が付けられていたため、維新が土壇場で猛反発したこともあった。法案の詰めの部分が甘く、結果的に3度も修正案を出し直すことになったことについては自民党内からも「党のガバナンスが崩壊している」と呆れ声があがった。自民、維新双方が“お粗末だった”との見方が大勢だが、いずれの話も、国民からは遠い“永田町の中の話”だったと言える。

この期に及んで「自民党のことほめてもいいんじゃないの?譲るところ譲ったんだから」との声が自民党内から漏れ聞こえてくるのは、国民といかに感覚がずれているかを物語っているのではないか。

改正案は参議院に送られたが、求められているのは裏金事件の再発防止にむけた実効性のある政治改革である。

(6月JNN世論調査の結果概要は以下の通り)

●岸田内閣の支持率は25.1%。前の調査より4.7ポイントの下落。不支持率は71.6%で前の調査より3.7ポイント上昇。

●政党支持率では自民党の支持が23.8%(前の調査より0.4ポイント上昇)。立憲民主党は7.3%(2.9ポイント下落)。日本維新の会は4.3%(0.3ポイント下落)。

●いま衆議院選挙が行われた際、比例代表の投票先は自民24.2%、立憲16.9%、維新10.3%、公明5.4%、共産5.5%、国民5.1%、教育0.8%、れいわ4.0%、社民0.8%、参政1.7%、その他0.7%

●次の衆院選後の政権について、「自民党中心の政権の継続を望む」が39%、「自民党以外の政権に交代することを望む」が48%

●定額減税について「大いに評価する」6%、「ある程度評価する」31%、「あまり評価しない」37%、「全く評価しない」23%

●政治資金規正法改正案をめぐり公明、維新などの主張を盛りこんだ自民党の修正案について「大いに評価する」4%、「ある程度評価する」24%、「あまり評価しない」31%、「全く評価しない」39%

●「企業・団体献金」について「認めるべき」28%、「禁止すべき」54%

●「政治資金パーティー」開催について「大いに納得できる」3%、「ある程度納得できる」22%、「あまり納得できない」39%、「全く納得できない」34%

●ライドシェアの「全面解禁」について、「賛成」38%、「反対」48%

【調査方法】
JNNではコンピュータで無作為に数字を組み合わせ、固定電話と携帯電話両方をかけて行う「RDD方式」を採用しています。

6月1日(土)、2日(日)に全国18歳以上の男女2231人〔固定890人、携帯1341人〕に調査を行い、そのうち45.2%にあたる1008人から有効な回答を得ました。その内訳は固定電話503人、携帯505人でした。

インターネットによる調査は、「その分野に関心がある人」が多く回答する傾向があるため、調査結果には偏りが生じます。

より「有権者の縮図」に近づけるためにもJNNでは電話による調査を実施しています。無作為に選んだ方々に対し、機械による自動音声で調査を行うのではなく、調査員が直接聞き取りを行っています。固定電話も年齢層が偏らないよう、お住まいの方から乱数で指定させて頂いたお一人を選んで、質問させて頂いています。

TBS政治部 世論調査担当デスク 室井祐作

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