専門紙の2024年ヒット予測に上がった「陸上養殖」。ご当地サーモンが全国に拡大する中、ついにキングサーモンの“代理親による養殖”までも登場。さらには、これまで生ではなかなか食べられなかった「ホッケ」も“刺身”で味わえる日がすぐそこに来ています。
【写真を見る】2024年ヒット予測の「養殖魚」…“代理親養殖”からイチゴで育つサーモンまで「陸上養殖」が戦国時代に突入【THE TIME,】
薬膳・ミカン・イチゴ…“ご当地サーモン”戦国時代へ
「2024年にヒットする魚は、海ではなく陸の施設で育てる陸上養殖のサーモン」
今年1月、THE TIME,の取材で、こう予測したのは『日刊水産経済新聞』の佐々木一正編集委員。
「サケの価格がここ2~3年で世界的に上がり、日本が買い負け状態になっている」ことから、円安が進めば陸上養殖がさらに加速し、輸入に頼っていたサーモンに国産の波が来ると読んでいました。
そして予測から半年、再び訪ねてみると…。
『日刊水産経済新聞』佐々木編集委員
「実際に半年経過して、計画通り一部で水揚げが始まりました。製品も一部都内で販売されるようになってきて、今まさに戦国時代の入口という感じ」
佐々木さんの予想通り、大手企業NECが手がける陸上養殖サーモンも5月ごろから本格的な水揚げを開始。
国産・陸上養殖サーモン市場は拡大を続け、今や27道府県に74か所の養殖場が作られるほどに。
(※北海道・青森・宮城・山形・福島・群馬・千葉・山梨・長野・新潟・富山・石川・静岡・愛知・滋賀・大阪・兵庫・岡山・鳥取・愛媛・香川・徳島・高知・福岡・大分・熊本・長崎/水産庁データより)
食べるとさわやかなミカンの香りがする「宇和島サーモン」(愛媛)はじめ、「富士山サーモン」(静岡)などなど、地の利を生かした“ご当地サーモン”は、まさに戦国時代に突入!
そこには養殖ならではの、ブランド戦略があるといいます。
『日刊水産経済新聞』佐々木編集委員
「特産物みたいな性質があるので、ご当地で色んな物が餌に混じって。北海道では『薬膳サーモン』。ミカンの皮を乾燥させた陳皮や松の実などの薬膳を餌に配合して、健康なサーモンでそれを食べて健康になってもらおうと」
この薬膳サーモン、業界初の機能性表示食品にもなっています。
イチゴで育てた「ストロベリーサーモン」の強み
そもそも、サーモンは「白身魚」。餌として食べたエビやカニなどの色素が蓄積して身がオレンジ色になるため、養殖の場合でも食べるエサによって身の色が変わります。
例えば、長野県で養殖されている「信州サーモン」と「シナノユキマス」。この2つ、見た目も味も全然違います。
信州サーモンは、鮮やかなオレンジ色の身。そのお味は…
THE TIME,マーケティング部 原千昌部員
「脂がのっていて、まろやかなコク。ただ後味はさっぱりしていて美味しい!」
一方の、「シナノユキマス」。身の色はタイのように真っ白で、味も少し変わっています。
THE TIME,マーケティング部 原千昌部員
「口の中に入れた瞬間は白身魚のあっさりした味わいなんだけど、後味はサーモン特有のトロッとした脂身がある。えぇ〜これ不思議」
さらに、『日刊水産経済新聞』佐々木さんが注目しているのが、栃木県の「ストロベリーサーモン」。
今年養殖が始まったばかりで、まだ一度も出荷されていませんが、養殖されている場所が変わっているんです。
その場所は…宇都宮市にある白沢浄水場。
「宇都宮市の水道水が安心安全で美味しいことを、より多くの人に知ってもらうPR事業として養殖をはじめた」とのこと。
宇都宮市の水道水は上質な地下水を使用していて、浄水場は水温を保ちやすく養殖に適しているといいます。
そして、こだわりは水だけでなく、やはり餌にも!
栃木名産・スカイベリーを丸ごとすり潰して餌に混ぜているんです。
宇都宮市上下水道局 関口祐樹技師
「イチゴに含まれるビタミンCなどがサーモンの免疫力向上に繋がったり、ストレスへの耐性が付いたりと、より健康に育つ」
実は、集団で育つ養殖ではストレスや感染症のリスクがあり、生存率は8割ほどだといいますが、ストロベリーサーモンは、イチゴパワーで100%元気。
まだ誰も味わっていないという宇都宮の新名物は、11月の初出荷を予定しています。
“代理親”から生まれたキングサーモン
さらにさらに!
今年5月には、サーモン養殖業界をざわつかせたビッグニュースも。
それは、“養殖には不向き”とされてきたキングサーモンの“代理親による養殖”。
最大にして最高級のキングサーモンですが、成熟が遅く、オスは精子を作るまでに早くて3年、メスでは産卵まで7年かかる場合もあるといいます。しかも産卵は生涯で1回のみなので、養殖には向かないと言われてきました。
しかし、東京海洋大学・吉崎悟朗教授の研究チームが新たな技術を開発。
キングサーモンの卵と精子を作る幹細胞という大元の細胞を、毎年産卵するニジマスに移植。ニジマスを「代理親」にして、キングサーモンを生ませるという技術。
養殖以外にも、絶滅危惧種の保護につながると期待されています。
全国初!「ホッケ」の養殖もスタート
そして養殖革命が起きているのは、サーモンだけではありません。
今年6月に、全国初となる「ホッケ」の陸上養殖が始まったんです。
かつては大量に獲れて安い魚だったホッケ。しかし漁獲量は右肩下がり…。
2004年に17万1844トンだった漁獲量は2015年には1万7039トンにまで激減。2023年も3万1000トンと回復の兆しは見えていません。(※水産研究・教育機構 水産資源研究センターより)
もはや大衆魚とは呼べないほど値段も上がる中、養殖に乗り出したのが、北海道・白老町。この実証実験がうまくいけば、“ホッケの刺身”も食べられるようになるといいます。
もともとホッケは、鮮度の落ちが早い上、寄生虫の一種「アニサキス」が寄生しているため、北海道の産地以外では刺身で食べてきませんでした。
しかし養殖ならエサも管理できるため、寄生虫の心配もなく、安心して食べられるように!
「後味さわやかなブリみたいなイメージ」というホッケの刺身を口にする日も近いかもしれません。
なぜか“リアクション薄め”の安住アナ…そのワケは…
スタジオでは、『水産経済新聞』に掲載された、漁師に人気のアイテムを紹介した。
それは、高機能靴下「ぺスカリー」(1980円)。
靴下メーカー「助野」(富山・高岡市)が開発したもので、最大の特徴は、和紙の糸を使っていること。漁師ならではの足元の悩み「蒸れ・ズレ・疲れ」を解消してくれるという。
原部員の説明を聞きながらも、何故かいまいちリアクション薄めの安住紳一郎アナ。ひとしきり説明が終わったところで、その理由を話した。
「実は6時台でも同じ話しちゃったんです…」
そう、安住アナ、実は6時冒頭の1人しゃべりのコーナーで「今日のマーケティング部は…」と内容を軽く紹介しつつ、この靴下についても触れ、しっかりその機能についても話してしまっていた。
説明が丸被りになった原部員が「そうですよね。ああ同じこと言ってると思いました。どうしたものかなと…」と実は少々戸惑っていたと告白するとスタジオは笑いに包まれた。
それでも安住アナは改めて、この靴下について「やっぱり長靴の中には少し遊びがあるから靴下どんどんズレるんでね。フィットして蒸れない、これは全国の長靴ユーザーは見逃せない」と熱く語っていた。
(THE TIME,2024年7月17日放送より)