「引き続き金利を上げていく」利上げ決定した植田総裁の会見を受け1ドル=149円台まで円高が進行 物価・為替・住宅ローンどうなる?【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-08-01 14:22

31日午後9時すぎに円相場が1ドル=150円を割り込みました。およそ4か月ぶりの円高・ドル安水準です。背景にあるのは、この日、短期金利を0.25%に引き上げることを決めた日銀・植田総裁の発言です。今後の円相場の見通しは?私たちの生活への影響は?

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大手銀行3行は普通預金金利を5倍に引き上げ

スーパーの担当者は頭を悩ませていました。

スーパーセルシオ和田町店 久保田浩二さん(7月31日)
「税抜き価格で169円の販売のところ、8月以降は179円。(別の商品は)20円の税抜きの値上げ」

帝国データバンクによると、8月1日から食品642品目が値上げとなります。

買い物客
「600品目となるとかなり家計に大打撃受けちゃうので困っちゃいます」

歴史的な円安による物価高です。

日本銀行 植田和男 総裁(7月31日午後3時半すぎ)
「円安の物価への影響ですけれども、重要なリスクとして認識して、政策判断の一つの理由とした」

7月31日、日銀は追加の利上げを決定しました。0%~0.1%程度としていた短期金利(誘導目標)を、0.25%に引き上げます。

この利上げで、5ポイント以上も開いているアメリカと金利差が縮まり、“超円安”が少しやわらぐ可能性もあります。

31日午後9時半ごろには、一時1ドル=149円台をつけました。

また、気になるのは家計への影響です。銀行預金の金利が上がります。

利上げを受けて、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行は、普通預金金利を年0.02%から0.10%に引き上げると発表しました。これまでの5倍にあたります。

住宅ローン「変動型」0.15%程度上がると…

一方、利上げによって増えるのは住宅ローンの返済額です。

約8割の人が選ぶ「変動型」の金利は、今回の利上げで0.15%程度上がるとみられています。

変動金利上昇のシミュレーション(35年返済)・4000万円】
・金利 0.4%→0.55%
・月々の支払い 2644円増える
・総支払い 111万480円増える
※ニッセイ基礎研究所・福本氏の試算

ニッセイ基礎研究所の福本氏の試算では、4000万円を35年でローンを組んだ場合、月々2644円の返済額が増えるとの試算です。

これから20年の返済に踏み出そうとする50代の方は…

50代男性客
「支払いを続けていけるかなというところが一番、そこが常に頭にあるんで不安だらけです」

本格的に迎えた「金利のある世界」に…

日本銀行 植田和男 総裁
「利上げといっても、非常に低い水準での少しの調整。景気に大きなマイナスの影響を与えることはない」

少しずつ「金利のある世界」に どう影響?

藤森祥平キャスター:
前回、片山薫記者が「0.25%引き上げ案」を紹介しました。振り返ります。

物価は年間1000円程度、押し下げる効果があるとみられています。

一方で、住宅ローンは4000万円のローンで年間3万円程度は支払額が増えるとみられています。(みずほR&T・酒井氏及びニッセイ基礎研・福本氏の試算)

そして、為替は150円台半ばで推移しているものが152円台くらいまで円高に進むと予想しました。ただ、31日夜は予想以上に円高が進みました

片山薫 記者:
30日夜は1ドル=154円台でした。深夜に「日銀が利上げするかも」と報道が出て、予想通り152円台くらいに推移しました。「利上げする」と発表があり、ずっと152円台に進んでいたのですが、植田総裁の会見が終わった直後から一気に円高に進みました。31日夜には149円台まで推移しました。

背景にあるのが、会見でのこちらの発言です。

「見通しどおり経済・物価が動いていけば、引き続き、金利を上げていく。0.5%は壁として特に意識していない

例えば、年内に1回は利上げ、さらに2025年春くらいにもう1回利上げするという観測が広がり、149円台まで推移したとみられます。この発言は予想外でした。

藤森キャスター:
さらに、金利「0.25%」に引き上げた場合の預金利息は仮に100万円を銀行に預けた場合、普通預金の場合は年間300円程度、定期預金(10年)の場合は年間6000円程度は利息が増える可能性があると考えていました。

大手銀行はすぐに動きを見せました。三井住友銀行は8月6日から、三菱UFJ銀行・みずほ銀行は9月2日から、0.10%に引き上げると発表しました。

少しずつ「金利のある世界」が始まっているような感じですね。

トラウデン直美さん:
日本に住んでいて、「金利のある世界」の経験がないので実感もないです。

ただ、金利が上がるということは、企業からしたら銀行からの借金を返すときに少し大変になってくると思います。

今回、小さい幅かと思われていましたが、どのくらい影響があるのでしょうか。

片山薫 記者:
植田総裁は「大きなマイナスの影響を与えることはない」と言っていますが、これまで“低金利慣れ”しているので、少しでも上がると苦しい企業が出てくると思います。

大きくお金を借りても、それに対する利益を出せないと、企業として成り立たない。つまり市場から退出しないといけない例も出てくると思われます。甘くない世界だと思います。

9月にアメリカが利下げに踏み切れば…家計に影響する“2つのシナリオ”

小川彩佳キャスター:
一方で、生活を苦しめている物価高、歴史的円安という局面で見ると、一息つけるのか。その場合、どの程度の一息になるのでしょうか。

片山薫 記者:
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジストに聞きました。

植野大作さんによると、アメリカが9月に利下げに踏み切れば、年内から年明けにも1ドル=145円前後もあり得るそうです。これがメインシナリオです。

仮にしばらく利下げ見送りになった場合、1ドル=150円台後半になる可能性も指摘しました。

トラウデン直美さん:
日本としては、どちらの方が都合がいいのでしょうか。

片山薫 記者:
家計にとっては145円や140円台はいいことだと思います。逆に、また円安が進むとマインドが下がってしまうので、リスクになるからこそ、日銀は利上げする判断をしたということです。

トラウデン直美さん:
ただ、今後も利上げをしていこうと発言があったと思いますが、企業としては賃金を上げづらくなってきませんか。

片山薫 記者:
ギリギリのところまで日銀の植田総裁は考えるでしょう。確かに、上げられる企業と上げられない企業は出てくると思います。

小川キャスター:
そして9月には自民党の総裁選もあります。「9月」が1つのターニングポイントになりそうです。

========
<プロフィール>

片山薫 記者
23ジャーナリスト
元経済部筆頭デスク 財務省や経産省・農水省などを担当
趣味はハイキング 育児休暇中に家事をイチから学ぶ

トラウデン直美さん
慶応大学法学部卒
環境問題やSDGsについて積極的に発信

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