政治とカネの問題などで低支持率が続いていた岸田政権。9月末の任期満了に伴う自民党総裁選挙をめぐり、続投への構えを崩していなかった岸田総理が突然、不出馬を表明した。連立政権を組むパートナーとして岸田総理の会見をどう見たのか?新総裁に望むことは?また、同時期に行われる立憲民主党の代表選挙で注目する点は?自民党と連立政権を組む公明党の赤羽一嘉幹事長代行に聞いた。(聞き手:川戸恵子 収録:8月21日)
【写真を見る】総理自ら会見で述べた「政治家の意地」 初めて人間「岸田文雄」を見た 公明党・赤羽一嘉幹事長代行【国会トークフロントライン】
「政治とカネ」に打ち消されてしまった岸田政権の政策
ーー政治とカネの問題であったり経済が大変な状況です。しっかり自公政権で連携して政治をやってもらわないと困るわけですが、ここのところどうなのでしょうか?
赤羽一嘉幹事長代行:
具体的な政策で例えば物価高対策でいうと、この国では以前やったことないんですけども、国の予算を石油の元売り会社に直入する。例えば、油の値段もレギュラーガソリンですとリッター170円を抑えるということにものすごい予算を投入したりとか。電気料金、ガス料金も去年の1月使用分から、これも初めてですけども、値下げをするとか。
これ相当公明党としてもですね、庶民の暮らしを守るという観点で全国の声を届けてですね、総理に直訴した。それを受けてちゃんとやってくれたということは今の政権、評価されるべきだと思うんですが、それの評価を覆すぐらいの政治とカネの問題ですとか、旧統一協会の問題というのがあってですね、岸田政権はある意味では気の毒だったというのは言葉が正しいかは分かりませんけども、政策実現を色々してきたのに、それが打ち消されてしまった期間だったかなというふうに思いますね
「政治家の意地」という言葉から初めて見えた「人間 岸田文雄」
ーーこうしたなか岸田総理が突然、総裁選への不出馬を表明しました。どのように受けとめていらっしゃいますか。
赤羽一嘉幹事長代行:
私も閣僚をやらせていただいた自分の経験から言いますと、一閣僚では当然ですけど、それ以上に総理というと職責は大変大きな(もの)。その職責を果たさんためには24時間365日、誠心誠意それに没頭するというか、専心するというそういう思いでやっていたと思うんですね。そういう立場の時に辞めようかどうしようかと考えながらできないと思うんです。
だから私は自分でやっている時もそういう辞めどきなんて考えていませんでしたし。総理であったら、尚更まだ続けようと思われていたんだと思いますし。基本的には辞めるという選択はないんじゃないかなと思いましたので、この前の突然の会見というのは私たちは非常にびっくりしました。
ーーでもそれを受け入れたというのは、納得する部分があった?
赤羽一嘉幹事長代行:
総理の会見で一連の様々な政策課題は実現しようと、総理にしては珍しく「政治家の意地」、長年お付き合いしていてああいうワーディングというのを使うんだなと。なんとなく「人間、岸田文雄」を初めて見たというとちょっと失礼ですけど、そういうのが初めて伝わったので。2回言いましたので、びっくりしましたけども。
そうしたことを整理をしつつ、政治とカネの問題については自分自身が党の責任者として責任を明らかにしなければいけないと。総理は率先して派閥を解消するとか、あと政倫審に出席をするとか、公明党とのいろんな議論の中で党内でもずいぶん反対があった項目も、ある意味では決断するとか。それでもなかなか国民の皆さんの理解が得られない中で「自分自身がけじめを明確にとる」「それが政治改革の第一歩だ」とこの前の会見で言われたと思うんですけど。
そういう意味で腹を決めていたというのは、改めてそうしたことの決意があってやっていたんだなというのは、見直したというとすごく失礼ですけど、そういう意味でも驚きました。
“政治とカネ”で地に落ちた信頼 総理の総裁選不出馬を政治改革の第一歩に
ーー連立を組んでいる公明党としては、支持率が下がり岸田総理に対して辛口コメントをずいぶんなさってきましたが?
赤羽一嘉幹事長代行:
政治とカネの問題というのは政権に影を落としてたのは事実で、いくら一生懸命、賃金を引き上げるとか、子育て支援をするとか、具体的にやっていても全く霞んでしまうぐらい。
常に予算委員会の集中審議は政治とカネで、それについてはっきりした国民の皆さんが納得するような対応ができない。そもそも国民の皆さんの付託を受けて、立法府で仕事をするのが国会議員なので。その付託を受ける前提としてはですね、当たり前ですけど国会議員というのは法律を守り、ずるをしない、公僕として仕事をする、この前提が今回の政治資金の問題で崩れてしまった。
ですから、相当信頼は地に落ちてしまった。ここについて、やっぱり明確に責任をとらないという政治家についてはですね、国民の見方というのは厳しいと今でも思いますね。そのことを何とかしたいと思って、今回自らが辞することで自民党として、この政治とカネの問題の前進の第一歩にしたいと言われてたのは、それは全くその通りだなというふうに思いました。
政治改革 曖昧にする新総裁なら「自民党に将来はない」
ーー岸田総理が不出馬を表明したことで、政治資金問題について責任を一応トップがとったという形になりましたけど、これだけでは国民は納得しないのでは?
赤羽一嘉幹事長代行:
岸田総理も会見で言われたように、これを第一歩として新しい総裁はその思いを政治改革、政治資金の問題の改革を続けていく、その方向性は間違えないで欲しいと、こう言われているので。10名以上立候補されると聞いてますけど、そこを曖昧にするような方が新総裁に選ばれるとするならばですよ、自民党の将来はないんじゃないかなと。
そういう言い方をするのはちょっと大変、私が言うのも変なんですけど。逆に言うと、その点は認識してる自民党の議員さんが大半だと思いますから。そうしたことについて、しっかり言及する候補者が新しい総裁に選ばれる良識は自由民主党にはまだあるというふうに私は思っています。
ーーまた一方で立憲民主党の代表選も行われます。政治に対して国民が不信感を持つのは野党がだらしないというのがありますよね。
赤羽一嘉幹事長代行:
議会制民主主義で与党が強すぎるというのは健全じゃないと思いますし、立派な野党が存在するということが大事です。そのために、それぞれの政策というのを明確にする。ちょっと余計なことなんですけど、立憲民主党でよく言われるのは、例えばエネルギー政策をどうするか、そこを非常に曖昧にしている。
これからの日本のカーボンニュートラルを目指しながら経済の成長を考える時にエネルギー政策をいい加減にというのはありえないと。その辺の整理をどうされるのかということは私が言うことじゃありませんけども、第一野党である以上、政権を代わる受け皿である以上ですね、国民生活に直結する日本の経済活動に直結するエネルギー政策も明示をして掲げないと、国民の皆さんもすっきりしないものがあるんじゃないかなと思います。