台風10号は各地で大雨による被害をもたらしました。東京でも豪雨による水害は、もはや日常的な危険となりつつあります。
【写真を見る】「1つ高いレベルの脅威に変わった」大都市・東京が抱える水害の懸念 荒川の氾濫で深刻な被害のおそれも 防災の日に考える夏の豪雨【サンデーモーニング】
「防災の日」9月1日に考える都市の水害
列島を縦断し、各地で被害をもたらした台風10号。関東でも大雨による被害に見舞われました。
今回の台風で懸念されたのが、東京など都市部での大雨被害。実際、ここ最近の大雨は、大都市・東京の脆さを改めて露呈しました。
8月下旬のゲリラ豪雨でも、都心の至る所が冠水。地下鉄市ヶ谷駅周辺の道路は川のように。市ヶ谷駅も、階段が滝のようになり、足首の高さまで浸水しました。
また港区の麻布十番でも、水は子どもの膝の高さに達します。
麻布十番駅は、構内への浸水を防ぐため、急遽シャッターを閉める事態に。当時、港区付近では1時間におよそ100ミリの猛烈な雨が降っていたとみられます。
“エアハンマー現象”
また新宿ではマンホールから大量の水が。別の映像では水が吹き上がり、マンホールのフタとみられるものが吹き飛ばされたのです。
撮影者「爆発でも起きたみたいな、大きな音がしてあんなの見たのは
初めて」
一般的に約40キロもの重さがあるというマンホールのフタ。それが吹き飛ぶ、こうした現象について…
日本グラウンドマンホール工業会・大石 直豪事務局長
「逃げ場を失った空気や水がフタの裏を強く“エアハンマー現象”で押し上げてフタを吹き飛ばしてしまう」
この「エアハンマー現象」が起きる原因の一つが、想定以上の雨です。下水道管を想定した管に、大量の水を流し込むこちらの実験でも…
すごい勢いで水が吹き上がっています。
1時間に100ミリの豪雨
想定を超える雨量が引き起こす危険な事態。実は東京では過去にも、大雨がたびたび深刻な被害をもたらしてきました。
例えば2005年には、杉並区で1時間に100ミリを超す大雨が降り、善福寺(ぜんぷくじ)川が氾濫。マンション1階が水没し、7000世帯以上が停電しました。
首都・東京の水害対策
こうした事態への対策として、東京都は、道路の地下に巨大な調節池を整備。こちらの「神田川・環状七号線地下調節池」では最大54万トンの水を貯めることができます。
現在、対応できる想定雨量は1時間50ミリですが、将来的に75ミリまで対応できるようにするといいます。
ところが今、東京はそうした想定を越える豪雨に見舞われているのです。
記者レポート「渋谷駅の地下に広がる空間、大雨から駅を守ります」
すり鉢状の地形の最も低い位置にある渋谷駅周辺。以前から水害対策が課題となり、2020年8月、渋谷駅東口の地下に、雨水をためる施設を完成させました。
総面積およそ1000平方メートルの区画を3つに区切り、降水量に応じて使用。合計でおよそ4000トンの雨水を貯めることができます。
アンダーパス 地下街の危険性
しかし都市の浸水に詳しい、早稲田大学の関根教授は、こうしたハード面の整備には限界があると指摘します。
関根正人・早稲田大学教授(河川工学)
「1時間に50ミリの雨で、下水道とか都市河川は設計してます。最近、それを超えるような100ミリの雨が降ってくる。これは渋谷区が公開しているハザードマップ。この緑の帯の所は周辺より、大きな浸水になる場所ですが、ここから先も実は(昔は)川はあった。標高が低いので渋谷区も危険ですよと。それから、地下空間、地下街、アンダーパスが最も危険な場所」
実際、1999年8月の大雨では、渋谷駅の地下街が浸水し、大きな被害をもたらしています。
では、仮に1時間およそ100ミリの大雨が降ると、地下街はどうなるのでしょうか。例えば丸の内の地下街。何も対策をしなかった場合、関根教授のシミュレーションでは、水深3メートルに達する箇所も出るといいます。
河川の氾濫
さらに大都市・東京で、広範囲に深刻な被害をもたらす恐れがあるのが、荒川の氾濫による水害です。
これは、国土交通省が最悪の事態を想定して作ったシミュレーション動画。もし荒川が氾濫すると、東京は濁流に呑み込まれていきます。関根教授は2019年の台風の際も、こうした危険があったといいます。
関根正人・早稲田大学教授(河川工学)「もしかすると(東京の堤防を)越えるかもしれない、そういう危ない状況が起こって いた。1990年代ぐらいまではハードウェアできっちり守っていた。ところが 自然が一つ高いレベルの脅威に変わってしまった。今後も引き続き同じようなことが起こる可能性はある。」
9月1日は防災の日。近年、激しさをます台風や大雨を前に、改めて真剣な対策が求められています。
(「サンデーモーニング」2024年9月1日放送より)