台風など豪雨で相次ぐ土砂崩れ…人災の側面の指摘も 森林伐採のやり方にも原因が? 土砂災害を防ぐ“森づくり”とは【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-09-05 15:01

列島に大きな被害をもたらした台風10号では、各地で土砂崩れも相次ぎました。実は、土砂崩れが起きる背景には、豪雨などによる「自然災害」だけでなく、人為的な側面もあることが指摘されています。

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台風での土砂崩れ被害 人災の側面は?「林業での伐採方法が一因」

8月27日、土砂崩れに巻き込まれ、家族3人が犠牲となった愛知県蒲郡市。発生から一週間あまりたった9月4日、県は専門家と共に現地を調査しました。

名古屋大学 田中隆文客員教授
「今回の崩壊の一番の特徴は、ここでしか発生していないこと。崩壊の最上部から水による浸食を受けていることが注目された」

豪雨により各地で相次ぐ土砂崩れ。ここ数年、その理由として自然災害だけではなく、人災の側面も指摘されています。

土砂崩れの原因は様々ですが、東京大学の蔵治光一郎教授は、林業での伐採のやり方が一因となる可能性を指摘します。

東京大学 蔵治光一郎教授 
「こういう急斜面での木材生産は非常に危ない。やった後のリスクというのがある」

数十年かけて森で木を育てる林業。伐採の際は、通常、大型重機で一気に木を伐ります。“木を皆伐る”=「皆伐」と呼ばれるやり方です。

土砂崩れのリスクが高まるのはその後。残された切り株の中が腐り、次々と空洞になるというのです。

蔵治教授 
「切り株の力で地面が支えられていて崩れないようになっているが、空洞になったら、水が入るので崩れちゃう。皆伐の一番の危険性は切り株の腐った直後。その後は、植林した木が大きくなって、植林した木の根で支えるので、また大丈夫になっていくが」

さらに、皆伐に伴う「ある作業」も土砂崩れのリスクを高めるといいます。

皆伐のための「作業道」が土砂崩れの起点に 業者は対策・植林も

熊本県で69人が死亡・行方不明になった4年前の熊本豪雨災害。県内での土砂崩れは560か所に上り、熊本県・代市の集落も被害を受けました。

付近の住民・山﨑由光さん
「大きなコンクリートのところに家が建っていた。この家の住民の方は流されたけど、奇跡的に何かつかまって」

救出された女性は、こう振り返ります。

救出された女性
「そりゃあ死ぬ思いだったですよね。もうこれで終わりかなと思いました。土砂がバーッと、ずぶずぶと…」

記者
「土砂はどこから発生しているのですか?」

付近の住民 山﨑さん
「ここら辺の山主さんたちが業者さんに木を売買させた。業者さんが木を切って竹藪の上から入れた作業道が崩れてきた」

住民たちが疑いの目を向けたのは、皆伐された森でした。重機を山に入れるため、一時的に作られた幅3mほどの道が土砂崩れの一因ではないかと言うのです。

私たちは、蔵治教授と現場を目指しました。

蔵治教授
「何方向からか崩れたルートが最終的に合流していったんですが、その1本がこれ」

ドローンで撮影すると、全体の状況が見えてきました。

さらに山を登ると、土砂崩れの起点の一つに辿り着きました。やはり重機を入れるために作られた道でした。  

蔵治教授
「もし樹木がちゃんと生えているなら、水をある程度保水をするので、水の集中の度合いは少し抑えられたが、ここは運悪く皆伐の跡地で木がない。木の部分の保水力がないため、一気に水が増水した」

この森を皆伐した業者が、取材に応じました。 

記者 
「どうすべきだったとお考えですか?」

亀田産業 亀田洋さん
「あの雨はどうしようもなかったという言い方を少し強めたい。ためらいもありましたよ、入る前は。民家の上だなとか、石一つ落とせないじゃないですか。作業上、危険なエッセンスの一つにはなる。なおのことデリケートに現場を進めていた」

道には水の逃げ道となる排水路=「横断溝」を備えるなど、細心の注意を払って作業したと答えました。また業者は、「森の木々は切らなければ別のリスクが生じる」とも主張しました。

亀田産業 亀田さん
「1本で1~2トンをざらに超える木があると、風が吹いたときにそりゃ山が動く。雨が降って崩れてもいけない。なので、“更新をしませんか?”っていうことを話している」

皆伐後、業者は確かに植林も行っていました。それでも山は崩れたのです。

NPOの調査によりますと、当時、大きな被害が出た球磨村で起きた土砂崩れの9割以上が、皆伐された場所や作業道などが起点となっていたといいます。

熊本県八代市は、災害の後、新たに「自主行動規範」を策定。業者が山に一時的に使用する道をつくった場合、早期に現状回復することなどを求めています。

豪雨災害も増える中、今、改めて森の在り方が問われています。

外国産木材との競争の中、国推進“皆伐”「もう少し慎重さが必要では」

藤森祥平キャスター:
「皆伐」という森林伐採方法は、外国産の木材との競争が激しくなる中で、国が推進してきた面もあります。業者にとってはコストを抑えながら効率よく作業できるという点もあります。

取材したTBS社会部の川上敬二郎記者は、「皆伐には賛否があるが、進めるにしても民家の上の急斜面で行う場合などにはもう少し慎重さが必要ではないか」と指摘します。

小川キャスター:
森とどう生きるか、どう向き合うかが問われていますね。

トラウデン直美さん:
森には土砂災害を防いだり、保水して川の増水を防ぐことでその先の被害を抑えたり、水を蓄えて少しずつ川に流してくれるなど、様々な役割があると思います。木がなければ水が一気に流れて、その後は水がなくなるという状況にもなりかねません。

防災や資源としての観点からみても、もっと時間やお金、気持ちを森や木に向けて、向き合っていけたらいいのかなと思いますが、コストがかかるので難しいですね。

保育士 てぃ先生:
国の対策も必要ですが、ハザードマップ的にあまり安全でない場所に住んでいる僕自身の実感として、誰かが何かをしてくれるのを待っているだけでは自分の命は守れないと思います。例えば「雨量がここを超えたら、通達が来る前に逃げよう」などと、あらかじめ対策をしておかないといけないのではないかと思います。

小川彩佳キャスター:
個々で向き合い方を考えていかなければならないですね。

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<プロフィール>
トラウデン直美さん
慶応大学法学部卒
環境問題やSDGsについて積極的に発信

てぃ先生
保育士16年目の37歳 育児アドバイザー
SNSの総フォロワー数200万人超

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