新入社員採用の場などで用いられる「青田買い」。
学生に対して早い時期に内定を出す、といった意味合いのこの言葉と同じく「青田」という語句を含む「青田刈り」という表現があります。
意味合いこそ全く異なるこの2つの言葉について、それぞれ見ていきましょう。
「青田買い」とは
ここでは「青田買い」の意味や成り立ちについて解説します。
「青田買い」の意味
「青田買い」、そのものは青々とした状況の田んぼを見て収穫量を見越すことで米を早めに買うことをあらわしています。
それが転じて、会社や企業が早い段階で学生の可能性を見越すことで内定を出すことを意味するようになりました。
近年では、就職活動の場に限らず、可能性のあるものを見越して先に買ったり仕入れたり導入しておくこと全般に対して用いられる表現となっています。
「青田買い」の由来
可能性を見越して事前に買う事を意味する「青田買い」。
その由来は、本来の意味合いの収穫前の田んぼから収穫量を見越すことで、あらかじめ米買ってしまうことにあります。
「青田刈り」とは
同じように「青田」という言葉を含む表現「青田刈り」の意味や成り立ちについても解説していきます。
「青田刈り」の意味
「青田刈り」は、まだ稲穂が実りきっておらず青い段階にも関わらず、収穫を急いで稲穂を刈り取ってしまう様子をあらわしています。
「青田刈り」の由来
「青田刈り」という表現は、武士が台頭してから生まれた表現とされます。
戦において、攻め手が防衛している相手の土地に進入して収穫前の稲穂を刈ってしまうことで相手を怒らせたり、戦意を喪失されるといった戦法が取られていました。
相手の食糧を奪う事も事もできるこの手段が「青田刈り」と呼ばれていました。
「青田買い」と「青田刈り」は混合されやすい!?
一節には、「青田買い」と「青田刈り」は混合されやすい表現だともされています。
では、実際のところはどうなのでしょうか、平成16年度に文化庁が行った「国語に関する世論調査」からその実態について見ていきましょう。
文化庁による調査結果
「青田」という言葉をどちらも含むことから、「青田買い」と「青田刈り」は混合されやすい傾向にあるといえるようです。
文化庁による平成16年度に行われた「国語に関する世論調査」では、「青田買い」を本来の使用する人が29.1%しかいないという回答結果が出ました。
そして、「青田買い」の意味で「青田刈り」を使用するという人は34.2%いるという結果になっています。
当時は誤用が目立つ結果だったと言えます。
「青田買い」の意味が再認識されている?
一方で、後年の調査では「青田買い」の意味が再認識される傾向が見えてきます。
平成26年度の「国語に関する世論調査」では、「青田買い」を本来の意味で使用する人が47.4%と、18%以上増えていました。
対して、誤用である「青田刈り」を使用する人については31.3%に減っているという結果が出ています。
まとめ
「青田買い」と「青田刈り」、どちらの熟語にも「青田」という言葉こそ含まれていますが、その意味合いは大きく異なります。
「青田買い」は、将来有望な若者を早いうちに内定を出す就職活動にまつわる中で特に用いられる表現です。
それに対して、「青田刈り」は鎌倉時代や戦国時代に攻め入った相手の土地の田んぼから収穫前の稲穂を刈り取ることで相手を苦しめるさまをあらわしています。
意味合いこそ大きく異なりますが、文化庁の調査によると、「青田」を含む両者は混合されることの多い表現となっているようです。