衆議院の解散から一夜明け、今月27日の投開票に向けて事実上の選挙戦がスタートしました。9日に自民党で非公認が決まったいわゆる裏金議員は“背水の陣”で選挙戦に挑みます。
「公認」「非公認」で違いは?
加藤シルビアキャスター:
9日、衆議院が解散となり、事実上の選挙戦がスタートしました。どんな戦いになるのでしょうか。今回注目されたのは、裏金事件関与の自民党の議員についてです。
公認されたのは34人、非公認が12人となりました。非公認で衆議院選に立候補となれば、無所属として選挙活動を行うことになりますが、選挙戦において公認・非公認というのはどのような違いがあるのか、1つずつ見ていきたいと思います。
まずは、選挙資金についてです。公認された場合、自民党から公認料500万円が支給されますが、非公認の場合は公認料は無く、供託金を含め自己負担になります。
また、政見放送では、公認されると候補者本人が出て自分の言葉で話すことができますが、非公認では経歴のみの放送になります。
選挙運動の際は、公認だと党の幹部が応援に駆けつけたり、ビラは通常の上限7万枚に加え4万枚配布することができます。しかし、非公認だと、応援は期待することはできないうえにビラも上限の7万枚のみになり、公認・非公認でかなり立場が変わってくる印象です。
「非公認」から公明党「推薦」へ なぜ?
自民党から非公認となった12人のうち、西村康稔 元経産大臣と三ツ林裕巳 前衆院議員の2人の議員は、自民党からは非公認となりました。ですが、この2人が自ら推薦を希望し、公明党が衆院選の推薦を発表しています。
そもそも解散の前は、公明党は自民党の非公認議員について推薦を見送る方針でしたが、西田幹事長は「公明党の独自の判断として、今回推薦を決めた」としています。
なぜこのようになったのか、星さんにその理由を伺うと…
TBSスペシャルコメンテーター 星 浩さん
「2人とも地元で、公明党とは協力関係にあった。公明党側は比例票を期待しているのではないか」
当選なら追加公認へ、石破総理 否定せず
加藤シルビアキャスター:
また、2024年10月9日は党首討論でこのようなやり取りがありました。
立憲民主党 野田佳彦代表(党首討論 10月9日)
「非公認で立候補し当選した場合(自民として)追加公認されるのか?」
石破茂 総理
「仮定の話だが、国民の代表者としてふさわしいと国民の皆様が判断された場合、それは公認するということ」
ホラン千秋キャスター:
そもそもこの公認・非公認は、自業自得なことだと思います。にも関わらず、「公認がついていないと、悪いことをしたから公認がないんだと思う人がいる」というような発言がありましたが、別に悪いことしなければ公認になったでしょうし、だとすると非公認になった皆さんは、なぜ非公認になってしまったのかをそれぞれ認識していらっしゃるのかという疑問がわきます。
星浩さん:
おそらく相当数の非公認の裏金の議員がいる中で、「なぜ自分だけ非公認になるんだ」「あの人だって裏金もらってたじゃないか」といった意識なんです。
だけど、それは少なくとも自分自身はそういう違法行為をやったわけで、そこについては甘んじて受ければいいのであって、「同じ違法行為をやってるのにあの人が何で」という話は必要のない話だと思いますよね。
井上貴博キャスター:
脱税まがいのことをやっていたら、金額に関わらず民間人だとどうなっているかとも思います。再公認するかどうかの話も、言わなくていいことをこういった場所で言うというのは、石破さんがある意味すごく正直な方なんだなと思いました。
ただ、この公認問題について思うのが、何に使っていたかの調査も行っていない、第三者の調査もしてないといったような、スタートからチャンチャラおかしかったですよね。
星浩さん:
この追加公認は、おそらく大接戦になって自民党が過半数割れみたいなときになったら、追加公認して切り抜けようという、少しさもしい考えという一面があります。
「政策活動費」廃止に言及していたのに…
井上貴博キャスター:
あと党首討論で1つ驚いたのが、領収書の必要ない「政策活動費」を、今回「使う」とある意味で明言しました。
野党各党も「廃止」と言っていて、総裁選でもせっかく各候補者が「廃止」に言及していたのに、完全に元の木阿弥になってしまいました。
星浩さん:
これだけ問題になっているので、「今回は控えます」と言うべきですが、逆に言うとそれだけ自民党の事情が苦しいということの表れだと思います。一種の“不透明なお金”でも使わないとこの選挙は持たないという自民党の危機感の表れなんでしょう。
ホラン千秋キャスター:
ここでそのようなことを言わずに、「クリーンにやっていきます。不公平なく、平等にみんなやっていきます」って言った方が、国民に対する印象も変わろうとしてるんだなとアピールをすることもできると思いますが、それをあえてしないというのは?
星浩さん:
おそらく、それをする事と、お金をいっぱい使って組織選挙をやるのではどちらがプラスかっていうのを計算した結果なんでしょう。
井上貴博キャスター:
結局、あの総裁選の各候補者の話で、我々は何を聞かされてたんだろうと思ってしまいます。あの中には幹事長の歴任者もいらっしゃって、「政策活動費がなくてもいけるんだ」っておっしゃってました。でも結局蓋を開けると、選挙で使うという。
星浩さん:
総裁選では綺麗事言っていたが、その後は元の木阿弥みたいなことになってますよね。
井上貴博キャスター:
そうすると、例えば野党が政権とったときも、結局同じように政策活動費がないとできないのでしょうか?それとも、あれは理想論でしかないのでしょうか?
星浩さん:
これは野党は、政策活動費なしでいいということになってます。仮に政権交代ということになれば、いの一番でやる政策になると思います。
井上貴博キャスター:
できるとみている?
星浩さん:
はい。これは難しい問題ではなく、公職選挙法をちょっと変えればいいだけです。確かに参議院では自公が過半数持っているので、トラブルはあるかもしれませんが、公明党が今や「政策活動費はいらない」って言ってますので、公明党も巻き込めば、参院でも多数ですから、やろうと思えばできます。
投票率は前回55.93%で低いんです。これが上がってくれば、かなりの激変が起きる起爆剤にはなるので、投票率が今回は相当注目される。ちなみに、前回の政権交代のときは70%近い投票率でしたので、そこまで届くかどうかっていうのは非常に注目点だと思います。
ホラン千秋キャスター:
そうすると、この選挙で、もちろん国民の皆さんがいくことが望まれているわけですけれども、やはりこの政治家に任せたい、この政党に任せたいといった期待を持たせるところを見せてほしいです。
星浩さん:
有権者もよりましな政権・候補者を選ぶことを考えていく選挙になると思います。
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<プロフィール>
星浩 さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年