SNSやテレビなどで流れてくる異なる動物たちの映像は、自分も愛犬の他に異なる動物を新しく迎えられるのではないかと思わせてくれます。しかし実際には難しい面が多く、命に関わる悲劇を生み出すことも決して少なくありません。それでもどうしても迎えたい、迎えざるを得ないといった場合、最低限知っておきたい動物間の相性や注意点をご紹介します。
犬との同居に向いていない動物
多くのメディアで流れている映像のように「上手くいっている」実例をたくさん目にしたとしても、実際に異なる種類の動物と一緒に暮らすのなら、「上手くいく」ことを前提に始めるべきではありません。
なぜなら同じ犬種同士でも上手くいかないこともあるくらい、複数の動物と一緒に暮らすのは難しいことだからです。ましてや、これまで長く一緒に暮らしてきた愛犬がいて、そこに新しい動物を加えるということは、どのような動物であっても簡単ではありません。
愛犬や迎える動物の年齢、健康状態、これまでの社会経験等を考慮した上で、共生の可否を見極める必要があります。そしてそれぞれの習性や生活環境をしっかりと理解し、準備を整え、常に双方の安全を確保する責任が求められます。
それでは、後から異なる動物種を迎え入れる際の注意事項や、犬と他の動物との相性について見ていきましょう。
1.小動物
ハムスターやリス、モルモットなどの齧歯類やうさぎなどの小動物は、犬の狩猟本能を刺激する要素を多分に持っているため、犬との同居に向いていない動物の筆頭に挙げられます。特に好奇心旺盛で遊び好きの子犬には、これらの小動物は格好のおもちゃとなります。
室内で自由に遊ばせる際に同じ部屋にいると、犬は本能的に追いかけじゃれついてケガをさせる、場合によっては命を奪うこともあるでしょう。
生活空間の分離、手の届かない場所へのケージの設置、小動物のケージからの脱走防止等、特段の注意が必要です。
キツネやアナグマなどの猟に活躍していたテリアや、視覚と走力で獲物を追跡捕獲する視覚ハウンドなどは、チョロチョロ動く小動物に敏感に反応するため、特に相性の悪い犬種だといえます。
2.爬虫類、両生類
爬虫類や両生類も、犬のおもちゃにされてしまう可能性が高いです。小動物たちと同じように、別室で過ごさせるのが良いでしょう。
また小型犬と大型蛇の組み合わせは、犬が蛇に噛みつかれてケガをする可能性があります。愛玩飼養が認められていてもかなり大きくなる蛇もいますので、よく調べてから迎え入れるかどうかを決めましょう。
3.小鳥
「鳥は飛べるから逃げられる」と思うかもしれませんが、タイミングが悪ければ傷つけられたり噛みつかれたりする可能性は十分にあります。
別室での飼育、手の届かない場所へのケージ設置といった配慮は欠かせません。
特にガンドッグやレトリーバー、スパニエルなどの犬種は、鳥類の狩猟に特化して能力を強化されてきた犬種です。小鳥との同居は特に避けた方が良い犬種といえます。
4.猛禽類
猛禽類は、犬が襲われる可能性もあるため、おすすめできない組み合わせです。小型犬はもちろんですが、中型犬や大型犬でも、鋭い鉤爪やくちばしでケガをする可能性は十分にあります。
愛犬の安全のためにも、別室で飼育したり愛犬が猛禽類にちょっかいを出せないような環境を整備することが大切です。
5.猫、フェレットなどの小型肉食獣
猫やフェレットなどの小型の肉食獣と犬も、同じように縄張り意識が強く捕食者同士であるという関係から、同居が難しいケースが多いです。
子犬、子猫、子フェレットの頃からずっと一緒に育っている場合は仲良く暮らせることも多いです。しかし、後から迎え入れる場合は、生活空間を分けるなどの工夫が必要です。
一緒に暮らす場合の注意点
では、犬を他の動物と同居させる場合に気を付けるべきポイントとはどのようなことなのでしょうか。
動物種間の関係性
犬は肉食動物で、自然界の中では捕食者です。必然的に、迎え入れる動物が肉食動物なら競争相手となり、草食動物なら捕食者と被食者の関係になります。
食事を与えられ飢えることのなくなった犬にも、狩猟本能は色濃く残っています。
被食者の動きは狩猟本能を目覚めさせ、相手の動物を「獲物」や「おもちゃ」として襲っても少しもおかしくないのです。
体格差
後から迎える動物が先住犬よりも小さい場合は、特に注意が必要です。肉食か草食かに関わらず、犬は小さくて素早く動くものを追いかけて捕まえたがるという習性を持っているからです。
また先住犬が小さく、迎える動物が大きい場合は、迎える動物が草食動物でも犬の方が警戒したり怯えたりして、大きなストレスを抱えることになるかもしれません。
年齢差
高齢の先住犬の下に若い動物を迎えれば、先住犬が新参動物にちょっかいを出す可能性は低いでしょう。しかし、若くて元気な新参動物が先住高齢犬のストレスになる可能性はとても高いでしょう。
若い先住犬の下に高齢の動物を迎える場合も問題があります。動物種に関係なく、高齢の新参動物が先住犬からのちょっかいに抵抗できず、大きな事故につながる可能性が高いからです。
「うちの子に限って」はありません
犬と人の脳は構造がよく似ています。しかし人と犬の脳には決定的な違いがあります。それは大脳新皮質の量です。大脳新皮質は複雑な情報分析や理性的な考え方に寄与する部位で、人と比べて犬はとても少ないのが特徴です。
そのため犬は理性よりも生存に必要な本能が強く、恐怖などのネガティブな刺激や獲物を連想させる刺激に本能的に反応します。十分にしつけられ、飼い主さんの指示をよく聞く犬でも、本能を理性で抑えることは非常に難しいことを忘れてはいけません。
まとめ
今回は、犬との同居に向いていない動物について解説しました。
犬同士でも、相性が悪ければ一緒に暮らすのが難しいケースは多々見られます。ましてや異なる種類の動物を後から迎えるのは、とても難しいことです。
どうしても犬以外の動物を犬のいるご自宅に迎えなければならない場合は、事前の調査と準備をし、かつ共生できる十分な環境、経済的な余裕や飼い主さん自身の時間的余裕がある場合のみ実行に移しましょう。
特にテリア、視覚ハウンド、嗅覚ハウンド、ガンドッグなどの狩猟で活躍していた血統を持つ犬種は要注意です。
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