投開票日まであと8日となった、衆議院議員選挙。大きな争点となっているのは政治とカネの問題です。裏金問題で非公認となった、いわゆる”裏金議員”の戦いを取材しました。
【写真を見る】衆議院議員選挙 非公認となった“裏金議員”の選挙区では… 支援者は「好きでも嫌いでもないが、いないと困る」【報道特集】
お詫びからはじまる演説…有権者は「公約の内容より、どこの政党から出ているかの方が気になる」
東京・立川市などを含む東京21区。裏金問題で処分された候補が厳しい戦いにのぞんでいる。
無所属 小田原潔候補
「なんとか1票差でも、石にかじりついてでも、国と地域の絆を守り抜いてください!お力添えをお願いします!」
外務副大臣などを務めた自民党の前衆議院議員 小田原潔氏。安倍派の政治資金パーティー券をめぐって1240万円の不記載が発覚し、党の公認から外された一人だ。
小田原候補(2010年)
「勝つぞー!」
これまで自民党公認のお墨付きを得てきた小田原氏。比例での復活を含めて4回当選した。
しかし、今回は比例重複も認められていない。
演説は毎回、お詫びからはじめるという。
小田原候補
「私の不名誉な報道をご覧になり、がっかりした方も多くいらっしゃると思います。本当に申し訳なく思います」
非公認だとポスターやビラの枚数の優遇がなくなり、使える選挙カーも1台のみ。党からの公認料もない。
山本恵里伽キャスター
「このたすき、テープが貼られてますよね?」
小田原候補
「『自民党公認』とあった。一生懸命自民党を応援してきたという人でがっかりしたと感じる人がいることが一番大きいですね」
山本キャスター
「でもそれはがっかりさせることをしてしまったわけですよね?そのことはどのように考えていらっしゃる?」
小田原候補
「もう申し訳ない。その一点」
ポケットから取り出したのは修正後の収支報告書のコピー。有権者への説明に使うことがあるという。
小田原候補
「不記載リストに載る。それはしょうがない。ところがテレビだと裏金リストになるじゃない?」
こう不満をこぼしつつ…
小田原候補
「とにかく皆さんがイメージ悪いねって思っているのだから、まず悪いイメージ通りを受け止めて、謝罪して、その上で、どうしてもやらねばならない仕事について話すようにしている」
一方、野党は裏金問題を大きな争点に掲げて支持を訴える。
立憲民主党 大河原雅子候補
「この東京21区に裏金議員はいりません!(そうだ!)裏金政治の自民党もいらない!(そうだ!)」
立憲民主党公認で、前衆議院議員の大河原雅子氏。前回は小田原氏に1万3000票差で敗れた。
大河原候補
「一般の人なら脱税は犯罪。それを政治家は免れるということ自体がおかしい」
政治改革をすすめるためには政権交代が最も効果的だと強調する。
大河原候補
「(政治改革)は政権を変えるという緊張感の中からしか生まれないと思う。まっとうな民主主義を作る新たな段階に私たちは来ているということを是非、有権者の皆さんにも十分知っていただきたい」
日本維新の会からは…
ウグイス
「しがらみなし。もちろん裏金ゼロの山下容子、山下容子」
国政選挙に5度目の挑戦となる新人で、元東京都議の山下容子氏。党本部の方針に従い、収支報告書の会計責任者を本人の名前で届け出たと強調する。
日本維新の会 山下容子候補
「よく政治と金の問題で、秘書がとか、会計責任者がということで逃げてしまうケースが非常に多い。それが不透明なものを増長していると思う」
参政党 森裕一候補
「参政党の森 裕一でございます」
この選挙区からは参政党の新人、森裕一氏も立候補している。
森候補
「(裏金問題は)国民に直結する話題ではなくて、本当であれば、国民の所得が下がっていたり、税金負担が高かったり、そういった政策の方が一番大事、要だと思っています」
4人が立候補した東京21区。有権者は…
有権者
「個人的には掲げている公約の内容より、正直、どこの政党から出ているかの方が今は気になっている」
有権者
「非公認だが、自民党からは小田原候補しか出ていないので、ほぼ実質公認だと思う」
有権者
「裏金、裏金と言っているが、そればかりに左右されてしまうのは違うかなと。長期的にどう国を運営していくかという視点の話が個人的には聞きたい」
支援者は「好きか嫌いかっていうと嫌いな人が多い。だけど、いないと困る」
福井・小浜市を含む福井2区。保守分裂で注目を集めている選挙区だ。
ウグイス
「衆議院は高木、高木毅、8期24年の経験を持つ高木」
無所属で立候補している自民党、元国対委員長の高木毅氏。安倍派の事務総長を務めた、いわゆる安倍派5人衆の一人だ。
無所属 高木毅候補
「高木でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます」
高木氏は1019万円にのぼるパーティー収入の不記載問題で6か月の党員資格停止処分を受け、今回の衆院選では自民党本部から非公認とされた。
この衆院選は、お詫びから始まる戦いなのだという。
村瀬キャスター
「ご自身も1000万円を超え、また安倍派の幹部でもあるという意味では、もろの当事者になられる」
高木候補
「多くの方に政治不信を招いた。ご支援いただいた方の期待を裏切った。ご迷惑をかけて心配をかけたということは本当に申し訳なく思ってまして、まずは本当にお詫びを申し上げたい」
無所属として地元を回る高木氏。これまでの実績などを有権者に訴え、支持を広げたいところだが…
高木候補
「今回のことについてこの場で心よりお詫びを申し上げる次第でございます。本当にこの度は申し訳ございません」
党本部からは非公認となったとはいえ公示日に行われた出陣式では、自民党関係者も多く集まり、会場は支援者で埋め尽くされていた。
自民党に所属の宮本俊 福井県議会議長。独特の言い回しで支援を訴えた。
宮本俊 福井県議会議長
「私がよく使う言葉、好きな言葉に、“黒い猫も白い猫もネズミ捕る猫はいい猫”という言葉があります。今回高木さんが黒だとはもちろん申しません。ただ、純白なところにちょっとくすみが入ったのも事実だと思いますが、大切なことはネズミを捕るかどうかなんです。その仕事をきちんとしてもらう為には、他の方になっていただいたんでは困る」
宮本氏は福井県連が、「自由投票」との方針を示したことで、無所属の高木氏支持に回ったという。
宮本 福井県議会議長
「国会議員としての仕事をどうするんだっていう話の中では、ネズミ捕る猫は、いい猫なんだという表現でね、じゃあ他の方クリーンでしょたぶん。裏金についてという意味では、クリーンなという表現がいいのかもしれないですけど、ネズミ捕ってもらえますかねっていうところに、やっぱりクエスチョンマークなのでああいう表現を使ったということです。裏金の問題は大きい問題だしそれがあってもいいじゃないかということではないけれども、高木さんに仕事をしてもらうかどうかということが問われてるんです。だから好きか嫌いかっていうと嫌いな人が多いと思います。私は嫌いとは言いませんけれども別に好きではないですから。だけど、いないと困るんです。それだけです。もう簡単に言うと」
高木氏は、地元経済活性化のため全国で最も多くの原発を抱える福井県で原発政策を推進してきたほか、北陸新幹線の延伸も主張している。
高木候補
「ほとんど前回と同じような方が、しっかりといわゆる自民党の支部の方たちも事実上の公認ではないですけど、もちろん公認じゃないでしょうけど、一緒の方たちがしっかりやっぱりやっていただいてるってのはありがたい」
有権者は…
有権者
「自民党の裏金は絶対に嫌です。庶民は1円でも税金をごまかさずに納めているのに、あの人たちは何千万円というお金を記載しなくて、“訂正しました。修正しました”それでOKですか。ちょっと納得できません」
有権者
「現職(高木候補)支持や新幹線問題やら、敦賀にもってきたのもそうやし、これから大阪の方につなぐのも」
有権者
「そんなに甘くはないと思いますわ。庶民は物価高の中で厳しい生活をしているんでね。利得を個人的に得ているというのは有権者として許しがたい」
高木氏に今後のことを聞くと…
村瀬キャスター
「ただあの選挙カーを見ますと、自民党の文字がないですね」
高木候補
「しばらく預けてます。また必ずいただきます」
村瀬キャスター
「また戻る?」
高木候補
「もちろんです。戻らないとやっぱりね、仕事をしっかりするためには、やっぱり党にいるってのは大きなことだと思いますし、これまでもそうやってきましたから」
高市早苗氏の夫も出馬「裏金議員には負けたくない」
福井2区では自民党系の無所属候補がもう一人いる。
無所属 山本拓候補
「慣れないことで」
記者
「久しぶりのたすきですね」
山本候補
「そう!」
元衆議院議員の山本拓氏だ。妻は自民党総裁選の決選投票で敗れた高市早苗氏。
安倍晋三氏(2005年)
「乾杯!」
20年前に行われた結婚披露宴には多くの政治家の姿があった。結婚後、一緒に登院する姿もあったが、「政治スタンスの違い」を理由に離婚。
しかし4年後に再婚した。
食料・エネルギー自給率100%の実現を訴える。
出馬について高市氏の反応を聞くと…
記者
「どんなふうにおっしゃっていました?」
山本候補
「頑張ってね」
記者
「それだけですか?」
山本候補
「(頷く)頑張って、それだけ」
今回、山本氏はなぜ出馬したのか。
山本候補
「公認候補を出していませんのでね。だからその受け皿に。(私は)明らかに自民党経験者ですから選択肢を出させていただいた」
高木氏の非公認決定後に立候補を決めたという。
これまで8期衆院議員を務めたベテランだが、選挙区の区割り変更の影響などで高木氏に小選挙区を譲った過去がある。
有権者
「拓ちゃん頼んだよ」
山本候補
「裏金議員には負けたくない」
山本氏の長男・建氏。
自民党所属の福井県議だが、父親の支援に回った。
山本建 福井県議
「身内なので応援しているのもありますけど、今回例えば公認候補がいるなかで、(山本候補が)無所属で戦うと言ったら身内でも自民党の役員という立場をとっていた」
自民党系2人で保守票を奪い合う構図となったことについて山本氏は…
山本候補
「私に入れたい人は私に入れるし、高木さんに入れたい人は高木さんに入れる。それでいいんじゃないですか。選挙で決まるんですから」
選挙戦初日、福井2区にはこの人の姿もあった。
立憲民主党 野田佳彦代表
「裏金隠し解散だと私は思っています。大物裏金議員の選挙区で勇気をもって立ち上がった候補者の応援をしようと思ってやって参りました」
野田代表が応援するのが大学教授で、新人の辻󠄀英之氏だ。
立憲民主党 辻󠄀英之候補
「この国は弱い人たちがより弱くなって犠牲になる、そんな社会になっちゃった」
子どもたちに自然教育を行うNPO活動を続けてきたという辻󠄀氏は教育機会の拡大などを政策に掲げる。
村瀬キャスター
「保守分裂が辻󠄀さんにとってかなり有利な状況ではないかとも?」
辻󠄀候補
「(自民党に)いろいろな批判があっても最後は一緒に戦う仲間は多いと思いますので、そう簡単ではないと思っています」
元衆議院議員の、斉木武志氏。前回の選挙では立憲民主党から出馬し落選したが、今回、党が辻󠄀氏を擁立したため日本維新の会から出馬することを決めたという。
日本維新の会 斉木武志候補
「維新で選挙することは一切していません。私で選挙をしています。政党の政策とか知名度に頼るつもりは一切ありません」
一方で、「大阪と話ができる政治家」として北陸新幹線の延伸の早期実現などを訴えている。
共産党からは新人の小柳茂臣氏が出馬する。元・しんぶん赤旗の記者で、原発の速やかな廃止などを政策に掲げる。
共産党 小柳茂臣候補
「共産党は自民党に勝つためには共闘しようという方針できていますけども、今回は立憲の代表の方がはっきりと『共産党とはしない』と明言されていますので、それを変えるような国民世論が高まればゼロとは言えませんけども、現状では困難だと思う」
裏金の影響もあり5人が立候補し大混戦となっている福井2区。勝ち抜くのは誰なのか。