猫の命を脅かす『がん』…発症につながる危険な6つの原因と予防法

2024-11-16 20:20

猫にとって、がんは代表的な死因のひとつになっています。細胞の変異であるがんは、細胞がある場所なら身体のありとあらゆるところにできる可能性があり、どの猫でもがんになる可能性があるのです。今回は、猫のがんについて解説していきます。

猫のがんを引き起こす6つの原因

病院で触診される猫

がんになる原因は複数あり、またがんに至るまでにもさまざまな要因の重なりが考えられます。

ここでは、がんを引き起こす6つの原因を紹介します。

1.加齢

猫ががんにかかる原因は加齢です。年を取るにつれて、細胞を修復する能力や免疫力が低下します。

通常、細胞にはエラーを感知するメカニズムがあり、自己修復ができない異常な細胞が速やかに破壊される仕組みになっています。

しかし、加齢により、誤った情報を持つ細胞の破壊が遅れることにより、発生したがん細胞が増殖しやすくなるのです。

2.環境要因

猫ががんになる背景には、環境要因も大きく関わっています。化学物質(タバコの煙や農薬、殺虫剤など)や紫外線が、がんの原因となることがあるのです。

化学物質のなかには、DNAを傷つけるものがあります。DNAが損傷すると、がん細胞の発生に加えて異常な細胞を抑制することができなくなり、結果的にがんの原因となるのです。

3.遺伝的要因

猫種や血統によっては、遺伝的に特定のがんになりやすい傾向があるといわれています。たとえば、シャム系の猫はほかの猫種と比較して、2倍ほど乳腺腫瘍になりやすいといわれています。

また、白い被毛を持つ猫は、紫外線の影響から扁平上皮癌という皮膚がんになりやすい傾向にあります。

特に純血統は、限られた個体間で繁殖が行われていることもあるため、遺伝性の癌を引き継いでいるリスクが高まります。

4.ウイルス感染

猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)の感染があると、がんのリスクが大幅に上がります。

FeLVは血液を作る細胞のDNAを変化させ、がん細胞を発生させます。一方、FIVは体の免疫力を弱めることで、通常なら退治できるはずのがん細胞を増やしやすくします。

どちらも血液のがんや、リンパ腫などを引き起こす可能性が高くなります。

5.慢性的な炎症

猫に多い口内炎や腸炎、肥満などで慢性的な炎症が続くと、原因である病原体を攻撃するため、活性酸素が発生します。

活性酸素は、体内の酸素が不安定になった状態です。炎症によって活性酸素が増えると細胞のDNAが傷つき、修復する能力のない細胞が蓄積した結果、がん細胞が生まれやすくなるのです。

さらに、このDNAの変異によって、細胞の異常増殖がコントロールされなくなると、がんのリスクがいっそう高くなります。

6.ホルモンバランスの乱れ

猫の乳腺腫瘍は、ホルモンの乱れが原因で発生する非常に悪性度の高いがんです。特にシニア期以降のメスに多く見られ、避妊手術をしていない猫や手術が遅かった猫はリスクが高くなります。

メスの生殖機能を調整するホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)は、細胞の増殖を促進する働きがありますが、これらのバランスが崩れると過剰に細胞を作り出し、エラーのある細胞(がん)が発生しやすくなるのです。

愛猫をがんから守る最善の対策は?

抱っこされるチャトラ

がんは猫の身体の中にできる上、初期症状は軽い体調不良しか示さないため、毎日一緒に過ごす飼い主さんでもなかなか発見が難しい病気です。

そのため、積極的に予防法を取り入れることが最善の対策となります。

定期的な健康診断で早期発見

がん予防の基本となるのは、やはり定期的な観察になりますので、若いうちは年に一度、シニアになったら半年に一度の健康診断を受けるようにしましょう。

がんになると体重の減少や食欲の変化、皮膚の変化(しこりなど)が見られます。健康診断での血液検査や触診などを通して、がんを早期に発見できれば治療の成功率が高くなります。

適切な栄養と体重管理

日本の猫の約4割が肥満気味だと言われています。肥満はホルモンバランスの乱れや慢性的な炎症、免疫力低下の原因にもなります。

そのため猫のがん予防には、バランスの取れた食事と適度な運動が大切です。添加物のない品質の良いフードを選ぶことはもちろん、与える量にも注意が必要です。

室内飼いはどうしても運動不足になりやすいため、できるだけ時間を取って、おもちゃ遊びで運動不足を解消するよう努めましょう。体重管理もがん予防の一環です。

ウイルス感染への対策

猫白血病ウイルス(FeLV)と猫エイズ(FIV)の予防は、がん対策の重要なポイントです。

FeLVにはワクチン接種が可能ですが、FIVのワクチンは現在提供が終了しています。そのため、FIVの予防には室内飼育を徹底し、外に出さない・ほかの猫との接触を避けることで予防しましょう。

もともと屋外にいた保護猫は、すでに感染している可能性もあるため、お迎え時の血液検査をお勧めします。陽性だった場合は、発症しないよう手厚いお世話が必要です。

避妊手術

猫の避妊手術は適切な時期に行うことで、乳腺腫瘍の予防効果も高まることがわかっています。生後12ヵ月までに不妊手術を受けると、ホルモンの影響が大幅に減少し、乳腺腫瘍のリスクは減少するとされています。

しかし、2歳を過ぎて避妊手術をした猫はホルモンの影響を受けているため、乳腺がんの予防効果はありません。子猫をお迎えした家庭では、早い段階で獣医師に相談しておき、適切な時期を逃さないようにしましょう。

安全でクリーンな生活環境

生存や健康に関わるさまざまな理由から室内飼育が推奨されていますが、がんなどの病気の予防策としても室内飼いが推奨されます。人が暮らす住宅内では、比較的化学物質や有害物質への接近を避けることができるからです。

ただし、タバコの煙や農業・ガーデニングなどに使用する薬剤、あるいは強力な洗剤など、生活用品のなかにも猫に有害な物はあります。猫が触れないよう十分に注意しましょう。

紫外線対策

紫外線を浴びることで、ビタミンDの生成や体温調整など多少のメリットはありますが、実は猫にとって日光浴は、人間ほど大きな必要性はないといわれています。

がん予防に関していえば、特に白い毛の猫や耳や鼻、目の周りなどの毛の薄い部分は、紫外線による皮膚がんのリスクが高まります。屋外に出ていなくても、部屋の直射日光を避けて、日陰で過ごせる環境を整えてあげることが重要です。

まとめ

笑っているキジ猫

猫のがんは、さまざまな要因が重なって発症しますが、「加齢」という自然な変化も大きな原因のひとつです。そのため完全に発症を防ぐことは簡単ではありません。しかし、私たち飼い主にできることはたくさんあります。

定期的な健康診断やワクチン接種、バランスの良い食事などを徹底しましょう。無理せずに毎日続ける基本的な健康管理こそが大切です。

また、日頃から猫の健康に注意を払い、変化を見逃さないことで早期発見につながります。がんの早期発見は、万が一、発症した場合でも、治療の選択肢が広がるため寿命にも大きく影響するのです。

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