働く学生「給料明細を毎回出す」扶養控除受ける親からは「何しているんだよ」 103万円の壁は見直しへ【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-11-21 12:50

いわゆる「103万円の壁」の見直しへ向けて20日進展があった一方で、「親の手取り」で悩む学生の声を聞きました。

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自公と国民が合意 「103万円の壁」見直しへ

固い握手を交わす、自民・公明の与党と国民民主党の政調会長たち。20日、3党はいわゆる「103万円の壁」の見直しを、政府の経済対策に明記することで合意しました。

国民民主党 浜口誠 政調会長
「103万円の壁について、令和7年度の税制改正の議論の中で引き上げると言い切っていただいた」

「103万円の壁」は、年収が103万円を超えると所得税が生じることから、“税の壁”とも言われています。

「103万円超えないように」働く学生と親世代の本音は

さらに、学生などの場合、103万円を超えると扶養の対象から外れ、親の手取りが減るケースもあります。

例えば、親の年収が500万円の場合、子どもの年収が103万円を超えた際には、親の負担が8万8000円ほど増えるとの試算もあります。

学生たちからは…

22歳専門学生 
「両親から『103万円超えないように』と言われていたので、103万円超えないよう働いている」

20歳専門学生 
「(親から)絶対に103万円だけは超えるなって。『給料明細は、給料明細は』って感じで言われていて、毎回出して、計算を親がして『あと何万』(までと言われている)」

20歳大学生
「(103万円を)もう超えちゃって多少の税金は払うことになるけどそれ以上に稼いで、それをまかなえるぐらい、それでやりたいことをやれればなって」

――両親から何か言われた?
「めっちゃ言われましたね。何しているんだよって」

20歳専門学生
「扶養ぎりぎり、103万円ぎりぎりで稼いでいる。物価が上がっているのにずっと一緒じゃないですか。昔から103万って。だから毎月カツカツ。買い物したりご飯いったりしてるとカツカツになっちゃうのできつい」

19歳大学生 
「103万円が少なすぎて稼げなくなって、(年の)後半。だからお金が結局足りなくなる」

――(103万円の壁)どれぐらいまで上がってほしい?

「10万×12か月、120万円、130万円ぐらいまでは上がってほしい」

また、親世代からも…

親世代
「103万円を超えてしまったんだけど、超えたときはやっぱりうーんって思った。ちょっとショックだったよね。だって自分の税金上がっちゃうからね」

この問題について、国民民主党は…

国民民主党 玉木雄一郎 代表
「学生の就労抑制に関しては、『特定扶養控除』の所得要件を引き上げることが効果があることも理解していますので、石破総理と党首会談をしたときにも、103万→178万円への引き上げと同時に、併せて要請をしています」

これに対して、自民党内からは…

自民党税調幹部
「学生であることを証明できれば、扶養から外れずに済むような措置を講じた方がいい」

「扶養控除」の見直しに前向きな声が出るなか、与党と国民民主党は、2025年度の税制改正に向けて今後、協議をおこない具体策について検討を進める考えです。

特定扶養控除 103万円を超えると親の負担は

藤森祥平キャスター:
きょうのキーワード「特定扶養控除」は、19歳から22歳までの親族を養っている場合は、親などの世帯主はこの特定扶養控除を受けることができて、税の負担が減るということになります。

ただ働いている子どもたちの収入が103万円を超えた場合、税負担で助けなくていいという考え方です。

実際に学生が103万円の壁を超えてくると、世帯としてどれくらい負担が増えるのでしょうか。ファイナンシャルプランナー・塚越菜々子さんの試算によると以下のようになるといいます。

▼親の年収400万円の場合 負担増8万6100円
▼親の年収600万円の場合 負担増10万9460円
▼親の年収800万円の場合 負担増17万3660円

ファイナンシャルプランナー 塚越菜々子さん:
学生自身の税金は、(年収が)103万円が104万円になったとしても、本人の税負担は500円くらいしか増えません。ただ、親の税金が増えるから、増えた手取りを家計に入れるかというと、そうではなく、恐らく自分のために使っていることがほとんどだと思います。

住民税と所得税は払う時期はずれていますが、親(の年収が)が800万円の場合、年間17万の増税となり、月1万5000円近く親の手取りが減る計算になります。結構大きいですよね。

小川彩佳キャスター:
103万円は1か月で換算すると8万5000円ほどになります。学生にとってこの額、どうなのでしょうか。

トラウデン直美さん:
まさに大学生の友達にも働きすぎて、働き控えをしている子がいます。周りの話を聞いていると、勉強をしながら時間をやりくりしてバイトしている子でも、超えてしまう額なのかなと思います。

各家庭で差はあれど、子どもが働ける分が増えて自分で使えるお金が増えたら、親からの援助も少なくて済むともいえるので、むしろ働ける額が増えた方がいいのではないかと思います。

小川キャスター:
取材の中でも「120万円くらいあったら」という声もありましたが、このラインをどう見ていますか。

塚越菜々子さん:
月に8万5000円という金額は、お小遣いだとしたら十分な金額ではないかなとも思う一方で、学生が一人暮らしをして、生活費や学費を少しを払っていたりする場合は、足りないと感じる方も多くいるのではないかなというのが現状ですよね。

藤森キャスター:
物価も上がっていますし、皆さん事情はさまざまだと思います。

「働き控え」「税収減」 壁どう見直す?

藤森キャスター:
「103万円の壁」の議論については財源が大きなポイントになっています。その中で、親の特定扶養控除の基準額を上げればいいのではないかという考え方があります。

大和総研・是枝氏の分析によると、現在103万円の壁を超えて働いてる学生がそもそも少ないので、税収が減るということは生じないのではないかということです。

一方、誰でも一律に控除が受けられる基礎控除について、壁を178万円に引き上げてしまうと、税収減が7~8兆円になるという影響の大きさがあるので、特定扶養控除に限って壁を引き上げればいいのではないかということです。

塚越菜々子さん:
特定扶養控除を上げても税収に影響はありません。学生に限って103万円を178万円に上げたとしても、これとは別に130万円の壁という社会保険の問題が出てくることには違いありませんので、行けても130万円ぐらいにはなってしまうのかなと思います。

特定扶養控除であれば、さほど税収に影響は出ないと思いますが、適用されるのは基本的に学生(19歳〜22歳)に限られます。全ての方の手取りを増やすという意味では効果はなくなってしまうので、それで良いのかという問題もあります。

藤森キャスター:
国民民主党・玉木代表は、記者から「『特定扶養控除』の引き上げなら減収も伴わないのでは」という質問に対し、「これまでもインフレのときは、基礎控除を上げていた」と強調しました。

23ジャーナリストの片山薫記者によると、玉木代表としては、政治的なインパクトを求めていて、▼少なくとも4兆円規模の大減税を実現したい▼壁については、103万円から130万円以上まで引き上げることを実現したいのではないかとしています。

小川キャスター:
私たちにとって、手取りが増えるのは嬉しいことですが、一方で、地方からは、減収に繋がり行政サービスにも影響が出るという声が出てきました。今後の議論、どのようなところに注目していきますか。

トラウデン直美さん:
「働きたい」と思ってる人が、働いただけちゃんと(収入が)増えるという形は実現されてほしいなと思います。手取りが増えるようになったら経済にもいい効果があるのではないでしょうか。

税収が減ってしまうということは一旦飲み込んで、例えばアメリカでイーロン・マスク氏が「政府予算の3分の1を削減する」と主張するように、せっかくの機会なのでここで歳出の見直しをして、家計もやりくりしてるので政府もやりくりして、地方で減ってしまった分を補填するなど、やり方はあるのではないかと思います。

塚越菜々子さん:
そもそも基礎控除は、生活に最低限必要なものにはお金をかけないということなので、これだけ物価が上がって生活に最低限必要なもの(の金額)が上がっているとなると、時代に合わせて動かしていく方が自然だとは思います。どこまでやるのかは別問題ですが、学生に対する対応とは別に、きちんと考えていくものなのではないでしょうか。

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<プロフィール>
塚越菜々子さん
ファイナンシャルプランナー
「共働き家計の金銭不安解消」を目指し資格取得
「年収の壁」などをテーマに執筆

トラウデン直美さん
環境問題やSDGsについて、積極的に発信
趣味は乗馬・園芸・旅行

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