アサド政権下で残虐な拷問や処刑が行われていたとされる刑務所にJNNのクルーが入りました。解放されたばかりの内部には、絞首刑に使われたとされる器具も残されていました。
【写真で見る】単独取材した、刑務所内部 絞首刑に使用か、壁に設置された器具も
シリア前政権の刑務所「残虐な拷問や処刑」内部は?
増尾聡 記者
「奥に見えてきた建物がサイドナヤ刑務所です」「刑務所から逃げる人を防ごうとすることだと思いますけど、奥に至るまでずらっとバリケードが設置されています」
首都ダマスカス北部にあるサイドナヤ刑務所。弾圧を受けた市民が投獄されていました。
受刑者の家族
「息子がここに13年間投獄されているんだ。当時まだ15歳だった」
数千人の受刑者がいたとされるものの、政権崩壊後に解放されたのは約250人。まだ刑務所のどこかにいるのではないかと家族が探していました。
増尾記者
「地面いっぱいに刑務所の資料が散乱しています。携帯のライトを照らしながら、何か自分の家族の行方に繋がるものがないか1枚1枚見ています」
建物を上ると現れたのは鉄格子に囲まれた部屋。
増尾記者
「鉄格子の内側に看守役が配置されます。収容されている人たちとは接触しないように、暴動があっても彼らは自分の身を守れるように鉄格子も設けられています」
看守の部屋を中心に雑居房が広がっていました。
増尾記者
「中に入ってみると、まだ解放されたばかりということがよくわかります。雑居房には25人ほどが収容されていたということです」
独房の壁に残された「もうだめだ」
建物の地下に進むと…
増尾記者
「地下にある独房の場所です。一畳ほどの壁に囲まれた本当に小さなスペースです。爪で削ったような跡があります。“ここに収容されてから何日目”ということを記録していたのでしょうか。『ああ、もうだめだ』と書かれています」
想像を絶するほどの劣悪な環境。食料や医療などはほとんど提供されず餓死していった人も多いといいます。
そして刑務所には…
増尾記者
「処刑に使われていたということです」
絞首刑に使われたとされる器具も残されていました。国際人権団体は2011年からの5年間だけで1万3000人が絞首刑になったと報告しています。ただ、実際の数はわかっておらず、“もっと多くの人が処刑された”との指摘が根強くあります。
投獄された人の多くが今も行方がわかっていません。受刑者の家族らは隠し部屋に取り残された人がいると信じ、捜索を続けています。
行方不明の家族を探し病院へ
増尾記者:
ここはダマスカス市内の病院です。私の後ろに見えるのは、遺体を安置する部屋です。ここには、アサド政権崩壊後に様々な場所で見つかった遺体が多く集まっています。
遺体のなかには、サイドナヤ刑務所に収監されていたものも含まれるということです。
連日この場所には、行方の分からなくなった家族がいないか、市民の方々が押し寄せて確認していますが、その遺体の状況を見て泣き叫ぶ人の姿も多くあります。
私も遺体を見ましたが、皮膚の一部がえぐられているような痕や、顔や体にあざのような赤く変色した遺体もありました。
さらに法医学者によると、首や手首にはロープで結ばれていたような痕が残っている遺体や、銃が撃ち込まれたような痕がある遺体もあったということで、拷問や処刑があった可能性を指摘していました。
シリアでは今も、アサド体制に批判的だった人を中心に極めて多くの市民の行方が分かっておらず、今後、遺体となって見つかる人が激増する可能性も指摘されています。