【ニューイヤー駅伝】1区に豪華メンバー集結 ! 3000m障害五輪入賞の三浦龍司とマラソン日本歴代3位の吉田祐也が激突

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2024-12-31 16:05
【ニューイヤー駅伝】1区に豪華メンバー集結 ! 3000m障害五輪入賞の三浦龍司とマラソン日本歴代3位の吉田祐也が激突

2025年最初のスポーツ日本一が決まるニューイヤー駅伝 in ぐんま(第69回全日本実業団対抗駅伝競走大会。群馬県庁発着の7区間100km)。大会2日前の12月30日、区間エントリー(https://www.tbs.co.jp/newyearekiden/start/)が発表された。

1区にはパリオリンピック™3000m障害8位入賞の三浦龍司(22、SUBARU)が出場する。三浦に吉居大和(22、トヨタ自動車)、佐藤一世(23、SGホールディングス)を加えたルーキートリオが、福岡国際マラソンに日本歴代3位の記録で優勝した吉田祐也(27、GMOインターネットグループ)、22&23年世界陸上5000m代表だった遠藤日向(26、住友電工)ら、実績のある先輩選手たちに挑戦する。

◇ニューイヤー駅伝(1月1日)の区間と距離、中継所
1区 12.3km 群馬県庁~高崎市役所
2区 21.9km高崎市役所~伊勢崎市役所
3区 15.3km 伊勢崎市役所~三菱電機群馬工場
4区 7.6km三菱電機群馬工場~太田市役所
5区 15.9km 太田市役所~桐生市役所
6区 11.4km 桐生市役所~伊勢崎市西久保町
7区 15.6km 伊勢崎市西久保町~群馬県庁

20年ぶりのトラック種目五輪入賞者のニューイヤー駅伝出場

1区の戦いを想像するだけでワクワクする。三浦龍司はトラック個人種目では日本人初の五輪連続入賞者。トラック種目五輪入賞者のニューイヤー駅伝出場は、シドニー五輪10000m7位の高岡寿成(現Kao監督)が出場した2005年大会が最後。20年ぶりのことになる。

三浦は24年4月にSUBARUに入社。「ニューイヤー駅伝は初めての出場、新参者です」と大会2日前の会見で“挨拶”をした。「1区という重要な区間を任せてもらったので、しっかり流れを作る走りをしていきたいです。かなりのメンバーが1区に集まりました。どんなレース展開になるかわかりませんが、僕は新参者。チャレンジャーとして周りの出方を見ながらも、出るべきところでは前に出て、勝負どころで勝ちきりたい」

“出るべきところ”とは、おそらくラスト勝負の局面を指す。3000m障害だけでなく5000mなどでも、三浦のラスト1周(400m)の強さは世界レベルだ。以前の取材で「駅伝でもトラックで研いできたものを武器にしていきたい」と話していた。ニューイヤー駅伝1区も、残り400mを切ってからのスパート合戦になることが多い。三浦向きの区間である。

吉田祐也は、1か月前の福岡国際マラソン優勝者。2時間05分16秒の日本歴代3位で、25年9月開催の東京世界陸上参加標準記録(2時間06分30秒)を突破した。代表決定は25年3月以降だが、福岡の結果でその有力候補になった。

会見では三浦との対決について質問されていた。「三浦選手はトラックの素晴らしいスピードを持っていますが、自分はマラソンのスタミナで勝負をしていきたいと考えています。ラスト勝負では絶対に勝てませんので、(独走で区間2位に40秒差をつけた)東日本実業団駅伝のときのように、状況を見ながら早い段階でハイペースに持ち込むか、中盤から行くのか、(風の強弱など)天候も見ながら判断していきます」。ラスト勝負になる段階よりも前に、吉田がスパートするのは間違いない。そこで三浦や遠藤がついて行けるかどうか。1区の注目ポイントだろう。

ルーキー対決にも注目。吉居が三浦との対決に意欲

三浦、吉居大和、佐藤一世のルーキー3人は、全員が“1区の実績”を持つ。吉居は箱根駅伝1区(21.3km)の区間記録保持者。22年大会で素晴らしい独走をやってのけた。佐藤は八千代松陰高の後輩(鈴木琉胤)に更新されたが、5年間、全国高校駅伝1区(10km)の区間記録保持者だった。11月の関西実業団駅伝1区(12.6km)でも最初から先頭に立ち、9km付近で大塚製薬を振り切って区間賞を獲得した。

三浦は箱根駅伝でこそ区間上位がないが、箱根駅伝は全区間が20km以上の特殊な駅伝。大学1年時には全日本大学駅伝1区(9.5km)で、当時の区間新記録で区間賞を獲得している。
三浦と吉居は大学1年時の20年7月に、ホクレンDistance Challenge千歳大会で、ともに当時のU20日本記録を出した。三浦が3000m障害で8分19秒37(学生新、日本歴代2位)、吉居が5000mで13分28秒31。大学1年生の2選手が同日に新記録を出し、日本の長距離界に新たな人材が台頭していることを実感させられた。

その後の2人は三浦が五輪&世界陸上で入賞するなど、トラック種目の世界大会で活躍したのに対し、吉居は2年時の箱根駅伝1区、3年時の同駅伝2区の連続区間賞と、駅伝での活躍が世間の注目を集めた。2人の直接対決は、吉居の記憶では「大学1年の箱根駅伝予選会だけ」だ。予選会の距離はハーフマラソンで、三浦が1時間01分41秒のU20日本記録(当時)で日本人トップの5位。吉居は6秒差で日本人6位だった。

吉居は三浦について「一番尊敬する同学年選手。世界でこれだけ結果を残し続けているのは本当にすごいことです」と、以前の取材で話したことがあった。吉居も米国のBTC(プロ選手のクラブチーム)で何度かトレーニングを積み、世界と戦うことの難しさを肌で理解している。三浦とニューイヤー駅伝で直接対決することになったら?という質問に、吉居は、はっきり答えた。

「三浦君は1区に来るんじゃないかと勝手に思っています。彼が来たらラストで勝負したい気持ちもありますが、どうやって勝つか、どうやったら勝てるかを考えます。駅伝ならトラックより、勝つチャンスは大きくなる。駅伝では負けたくありません。そして将来的には、トラックでも肩を並べるような結果を残したい」

ルーキーでは佐藤も、「トラックより駅伝が得意なので、トラック種目の自己記録では負けていても、駅伝では勝ちたい」と、ニューイヤー駅伝での同学年対決に意欲を見せていた。

トラック代表同士の対決。遠藤は2年半前のリベンジへ

もう1人、三浦との対決で注目したいのが遠藤日向である。5000mで22年オレゴン、23年ブダペストと世界陸上代表入り、23年アジア選手権では優勝した。種目が違うため三浦との直接対決はほとんどないが、お互いに専門種目外の1500mで一度、すさまじい戦いを演じた。22年4月の金栗記念で三浦が3分36秒59で優勝し、遠藤が3分36秒69で2位。当時の日本歴代2位と3位を専門外の選手が出し、中・長距離関係者の間に衝撃が走った。ラスト勝負では日本屈指どころか、日本一を争う2人が激戦を展開した。

ニューイヤー駅伝の遠藤は、高卒入社1年目の18年大会1区で区間賞デビューを果たしている。その後はインターナショナル区間へ出場したり、ケガの影響で出られなかったりすることが多く、ニューイヤー駅伝では活躍できていない。今回は7年ぶりの1区に出場し、2年半ぶりに三浦との真剣勝負となる。

住友電工の渡辺康幸監督は「遠藤に直接聞いたわけではありませんが」と前置きをした上で、「三浦選手にリベンジしたいと考えているはずです」と話した。3000m障害五輪連続入賞の三浦に、アジア選手権5000m優勝の遠藤。2人のラスト勝負だけでも火が出るようなデッドヒートになりそうだが、前述のように吉居もラスト勝負に意欲満々である。

さらに日本選手権5000m2位の森凪也(25、Honda)もラスト勝負を得意とする。23年まで全国クラスの大会で実績がなかった森は、24年5月のゴールデングランプリ(GGP)5000mが転機になったという。「予想以上の力を出せて、ラストで3~4人をかわすことができました。日本選手権もそのくらいで行ける手応えを得られたのです」。遠藤には敗れたが、塩尻和也(28、富士通)、鈴木芽吹(23、トヨタ自動車)、太田智樹(27、同)と、今回のニューイヤー駅伝で注目されている選手たちに先着した。10000m27分38秒25と持ち記録トップの荻久保寛也(27、ひらまつ病院)、3年前の1区区間2位の森山真伍(26、YKK)らも、区間賞争いに加わってくる可能性がある。

25年スポーツ界最初のタイトル(区間賞)争いが、いきなりヒートアップする。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

*写真は左から三浦龍司選手、吉田祐也選手

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