『ヨーロッパの飼い猫はチュニジアからやってきた』英伊2つの研究チームが同様の分析を発表
ヨーロッパの飼い猫の起源を研究している2つのチームが、それぞれ「飼い猫の起源はアフリカのチュニジア」「人間の文化や宗教活動に伴い、猫たちが連れてこられた」との分析をまとめました。
2つの研究チームが飼い猫の起源を調査

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飼い猫の起源について研究している専門家たちは、「猫は新石器時代の初期の農民に連れられて、ヨーロッパ全土に広がった可能性が高い」と考えてきました。
これに対して、このたび画期的な2つの研究結果がまとまりました。
1つはイタリアのローマ・トルヴェルガタ大学が中心になって進めた研究、もう1つは英国エクセター大学が主導した調査結果です。どちらも多くの遺伝子情報と考古学的な証拠をもとに分析を重ね、「飼い猫の起源はアフリカのチュニジアである可能性が高い」と結論づけています。
ローマ・トルヴェルガタ大学の研究者らは、ヨーロッパ全域とアナトリア半島にある97ヵ所の考古学遺跡から出土した古代のネコ科動物の標本と、イタリア、ブルガリア、北アフリカの博物館が所蔵する標本についてのゲノム解析を実施しました。
核DNA分析の結果、家畜化された猫がヨーロッパに現れたのは1世紀ごろで、従来の説よりも数千年も遅いことが明らかになりました。
あわせて彼らは、2つの導入波があったことを特定しました。最初の波は紀元前2世紀までに北西アフリカから伊サルデーニャ島にヤマネコが持ち込まれたことで、これが現在の野生猫の誕生につながったといいます。
次の波はローマ帝国時代で、現代の飼い猫と遺伝的に類似したネコ科動物がヨーロッパ全土に持ち込まれました。そのなかで、チュニジアが初期の猫の家畜化に重要な土地であったことが示唆されました。
宗教的理由で崇拝された猫たち

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一方でエクセター大学の共同研究は、これとは少し異なる時代に猫がヨーロッパへやってきたと推測しています。
同チームは206の遺跡から2416点の猫の考古学的骨を分析し、「飼い猫はローマ帝国の拡大がピークを迎える前の紀元前1000年初頭にすでにヨーロッパに出現していた」と結論づけたのです。その後ローマ帝国時代やバイキング時代にも猫たちが連れてこられたといいます。この研究でも、飼い猫の起源はチュニジアである可能性があるとしています。
猫が崇拝されていた古代エジプトでは、猫のミイラ化が進み、宗教活動に伴う移動の際にも猫を連れていったようです。ギリシャ・ローマ時代にも猫は崇拝の対象でした。さらに北欧神話でも、猫は女神と関連が強いとみなされています。こうした信仰により、儀式などのために猫が各地へ持ち込まれて増えていったものと推測されます。
先住ヤマネコとの交配がすすむ

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どちらの研究でも、移ってきた飼い猫がすでに生息していたヤマネコと交配したり争ったりしながら、進化を続けていったことがわかっています。こうしてヨーロッパでは徐々にヤマネコの数が減少していったのです。
両研究とも「ヨーロッパにおける猫の飼育は、かつて考えられていたよりも最近のことであり、しかも文化・宗教的な理由で始まった」という結論は同じです。
つまりヨーロッパの猫は、大陸に移住してきた農民が連れてきたというよりも、人間の文化活動や交易、そして宗教的な理由によって北アフリカから渡ってきた可能性が高いといえるでしょう。
出典:The complex origin story of domestic cats: Research points to Tunisia
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